Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

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今日も会社で18時

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 バッティングセンターの無料券を手に入れた僕は、毎日父の仕事終わりに会社の前で待ち合わせ、バッティングセンターに通った。
「18時に会社まで来てくれ。」
 父はそんなことを言っていたのだが、今思うと定時に帰れすぎじゃないか。その口実もあったのだろうか。今となっては定かではない。
 井口モデルのバットを抱え父の会社へ。落ち合ったらトボトボと歩きながらバッティングセンターへ。道中何かを話していた気もするが、それが何だったのかはもう覚えていない。
 バッティングセンターは父の会社から歩いて15分くらいのところにあった。地元では有名な商業施設の別館にあり、ゲームセンターの2階。入口の自動ドアを潜って、階段を駆け上がる。道中のウォーキングといい、階段といい丁度いいウォーミングアップだ。

 店内にはバッティングブースの他、ピッチング(ストラックアウト)のブースもあった。その他にもエアホッケーや細かなゲームが所狭しと並べられていた。そして、受付の横の壁にはホワイトボードがあり、そこにネームマグネットが貼られていた。
「ホームラン打つとな、あそこに名前が張り出されるんだよ。」
「ホームラン?」
「そう。ホームラン。あとで行けばわかるけど、ホームランの的があってそこにボールを当てるとあそこに名前が載るんだよ。」
 そう言われてホワイトボードを見てみると、知った名前がちらほら。同じチームの先輩と同級生達だった。
「あの上の数字は?」
「ホームラン数だな。」
 知り合いの中でのトップは、同じチームでキャッチャーをしている先輩で4本だった。上回ればチーム内ホームランランキングトップ。5本打つくらい楽勝だろう。そんな軽い気持ちで考えていた。

 いざバットを取り出してバッターボックスへ。
「あそこに赤い的があるだろ。あれに当たればホームランだ。」
 父がバッティングセンターの屋根より少し低い所にある的を指差して言った。
「あれに当てればいいのね。」
 僕の通っていたバッティングセンターはピッチングマシーンの前にディスプレイがあり、有名な選手の投球映像と共にボールが投げられる仕様だった。まるで本当に対戦しているかのように。また、球速や変化球の有無、コース選択も出来た。僕は対戦相手に松坂大輔を指名(選択)した。球速は手始めに1番遅い70km。
 記念すべき1球目。バスッ。ど真ん中ストレート。
「ふぅ。」
「お前な。バッティングセンターで見送るな馬鹿がどこに居るんだ。」
「いや、ほら初球は様子を見ないと。」
「70kmのど真ん中ストレートしか来ないから。」
 2球目。
「よし。構えるまでのルーティンを。」
 バスッ。
「危なっ。」
「お前な。さっさと構えろ。」
「いや、ほら城島(健司)はこれやるじゃん。」
「試合ではな。」
 1ゲーム12球しかないのに、もう2球を無駄にしてしまった。
 3球目。漸くスウィング。カシュッという音を立て、ボールは勢いそのまま後方へ。バスッ。
 結局この日はボールが前に飛ぶことは無かった。明日またリベンジだ。

 こうして、僕と父のバッティングセンター通いは始まった。ここから数ヶ月後。僕はホームランランキングがチームトップになる。信じられない話だが実話である。



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