Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

文字の大きさ
28 / 37

ヨルカンタラ

しおりを挟む
 アリスメンディ・アルカンタラ。2022年に日本ハムファイターズ(以下、日ハム)にやってきた助っ人外国人選手だ。
 助っ人外国人選手には珍しく、内外野どこでも熟せるユーティリティ性を兼ね備えた選手だった。

 入団当初は長打力よりも打率を買われて入団した選手だった。(ような気がする。)スイッチヒッターだったし。(スイッチヒッター=相手の投手に合わせて右打と左打ちを使い分ける選手。)
 しかしながら、蓋を開けてみたら真逆で、パンチ力のあるバッティングを武器に存在感を示し始めた。開幕から徐々にホームランを打ち始め、結果的にシーズンが終わる頃には14本ものホームランを放った。そんなホームランの中で、僕には忘れられないホームランがある。

 あれは忘れもしない交流戦のヤクルトスワローズ戦。明治神宮寺球場。僕は会社の後輩に背中を押され、コアラのマーチとの激闘を繰り広げた巨人対楽天戦以来の野球観戦に行くことにしていた。定時で仕事を切り上げ神宮球場へ。
 球場に着くと既に試合は2回表。急いでチケットを確認して、外野席の中段辺りの席に腰を下ろす。スコアボードを観ると既に2-0。慌ててスマートフォンでスコアを確認すると、淺間が2ベースヒットを放ち、その後松本剛が2ランホームランを打ったそうな。心の中で小さくガッツポーズをして、その後の試合を眺めた。

 2回裏。日ハムの先発投手の伊藤がフォアボールでランナーを出し、タイムリーツーベースで1点返される。
 その後はヤクルトに逆転され、追加点で離され。松本剛のタイムリーで差を縮めたものの、再度離され、9回表の時点で2点差で負けていた。さて、ここからがアルカンタラ劇場である。
 ヤクルトはクローザーとして絶対的地位を築いていたマクガフがマウンドへ。若干諦めムードも漂い始めたレフトスタンド。まず、その澱んだムードに光を当てたのが万波だった。ソロホームランを放つ。そして、ネクストバッターはアルカンタラ。諦めムードを切り裂くような二者連続ホームラン。一気に同点に。
 その後の打者は凡退したものの、9回裏のヤクルトの攻撃を石川直が0に抑えた。申告敬遠を上手く使いながら。そして、10回表。この試合の決着が付く。
 清宮がフォアボールで出塁し、代走に中島が送られる。何なく盗塁を成功させ、続く松本剛もヒットで繋ぐ。ノーアウト1、3塁。
 ここでヤクルト投手の木澤がワイルドピッチ。勝ち越しに成功する。そして、万波がタイムリーツーベースでもう1点追加。勝負もついたかと安堵感を抱き始めたそんな時だった。
 アルカンタラの二打席連続ホームラン(ツーランホームラン)。ヤクルトの息の根を止めた。
 10回裏にルーキーの北山が1点取られたものの、ヤクルトの反撃もそこまで。最終スコア6-9で日ハムが勝利を収めた。

 個人的にこの日1番の衝撃はアルカンタラだった。二打席連続ホームラン。インパクトが強かろう。MVPをあげたい。
 前々から何となく気付いていたのだけれど、アルカンタラはナイターゲームの終盤に滅法強かった。勝手に「ヨル(夜)カンタラ」と呼んでいたくらい。試合終盤に打席に立つと、期待感が凄かった。
 2023年を以て、日ハムを退団したヨルカンタラ。今はオアハカ・ウォーリアーズというチームに居るらしい。今でもヨルカンタラなのだろうか。実に気になるところだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...