Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

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シーズン中限定の恋

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 数年前、当時流行り始めていたマッチングアプリなるものに手を出したことがあった。
 最初は半信半疑。まだ見ぬ出逢いに期待した一方で「こんなんで出逢えたら苦労しないよ。」とも思っていた。

 最初こそ沢山の足跡が付き、人気者にでもなった気分だったのだけれど、3日もしたら静寂が訪れた。そんな中、1週間と少しが経過した頃に1人の女性とマッチングした。キッカケは「日本ハムファイターズ(以降、日ハム)のファン」であること。
 話していて分かったのは、シーズン中の遠征だけでなく、キャンプにも付いていくくらいの大分ディープなファンだった。シーズン前はキャンプの動画を送ってくれたりもしていた。
 まあそんな多忙な人とあって実際に会うことはなかなか叶わなかったのだが、毎日のようにLINEで日ハムトークを繰り広げていたので、会ったことはないのにすぐ側に居るような不思議な感覚だった。
 彼女との関係はシーズンの終了と共に、一旦終わりを告げる。(ドラフト会議の日は話したりしてたか。) そして、春季キャンプ前にまた連絡が再開する。

 そんな関係も数年が経過し、遂に会える日がやってきた。
「今度飲みにでも行きませんか? シーズンも終わったし今シーズンを振り返りながら。」
 そんな口説き文句で誘い出した12月半ばの新宿。西口で待ち合わせて炉端焼き店へ。マッチングアプリで写真を見たことはあったが、実際の彼女は写真の何倍も、何十倍も可愛かった。隣を歩いているだけで少し、いや、かなり緊張した。
 お店に着いても話は日ハムの話題ばかり。まぁ当たり前か。お酒も進んで、お互い上機嫌で会話も進む進む。
 散々飲んで話して気の済んだ僕達は、お店を後にすると、その日はそのまま解散した。僕は彼女との続きがあるものだと思っていたし、彼女との続きが見たかった。毎年のように日ハムの話題で盛り上がり、一緒に試合を観に行ったりして。なんだか楽しそうだなぁと素直に思っていた。
 しかしながら、それが叶うことはなかった。

 翌シーズン。毎年楽しみにしていた彼女とのLINEは終わりを告げた。片道切符のまま返信が返ってくることは無くなった。
「もしかしたら、彼女には恋人が出来たのかもしれないな。」
 そんなことを思いつつ、シーズン中はほぼ毎日していたLINEが途絶えてしまったことの寂しさを感じていた。

 僕は今でも日ハムの試合を観る度に、彼女を思い出す。今でも元気に観戦してるのだろうか。どうか幸せであれ。
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