Baseball Side Story

榊 海獺(さかき らっこ)

文字の大きさ
13 / 37

プロ野球チップス

しおりを挟む
 プロ野球チップス。それは野球少年にとって宝物のような物だった。

 ご存知の方も沢山いらっしゃるだろうが、プロ野球チップスというのはその名の通り日本プロ野球のポテトチップスで、ポテトチップスを買うとプロ野球選手のカードが1枚付いてくるというものだ。値段も当時100円を切るくらいだったように思えるので(当時60円くらいか? 違ってたら申し訳ない。)、小学生にも手に取りやすいものだった。
 といっても、毎回そんな同じポテトチップスばかり食べていたら飽きてしまう。でもこれまた有難いことに、ポテトチップスは父の酒のつまみにもなるというハイブリッド性を持ち合わせていた。(物は言いようだな。おい。笑)

 我が家の近所にコンビニがあったこともあり、学校から帰宅後買いに行ったり、父に付いて行ってお酒と一緒に買ってもらったりしていた。
 そんなこんなで買い集めていたある日、父が仕事帰りにカードゲーム用のファイルを買ってきてくれた。
「これ買ってきたから、入れてみ。」
「うん。」
 実際に入れてみると、重ねて輪ゴムで束ねていたのとは違い、実に綺麗に保管することが出来た。
 こうなってくるとこだわり出すのが男の性である。最初はランダムにファイリングしていたのだが、12球団毎に分けてファイリング。丁度1ページに9枚入るファイルだったので、各チーム打順やポジションを考えながらファイリングしていた。横浜ベイスターズであれば1番ショート石井琢朗、2番センター波留敏夫、3番レフト鈴木尚典、、、みたいな。監督にでもなったかのような気分だった。

 ただ、プロ野球チップスのあるシリーズから僕を悩ます問題に出くわす。
「レジェンド選手登場!」
 当時インターネットの普及がほとんどしていなかった時代。過去の選手達のことなど調べようがない。とりあえず、実際に当たってから考えることにし、、、当たった。いきなり長嶋茂雄が当たった。そして、すぐその後に王貞治も。さぁ困った。
 とりあえず、何となく成績とポジションは書いてあったので、それを参考とすることにした。あとは打順(スタメンか。)をどうするのか。
 まずは長嶋茂雄から考える。当時三塁手は元木大介。まぁ元木よりは長嶋だろう。ということで、元木はあっさりと控えに回された。
 次に王貞治。ここは実に悩みどころである。なんてたって当時一塁手は清原和博。球界を代表するスター選手である。(自分で書いてて元木が可哀想になってきた。笑) 
 悩みに悩んだ結果。王貞治に。最終的な理由は、キラ(レア)カードだから。という何ともまぁ小学生らしい理由だった。
 その他に集めると景品に交換出来るラッキーカードなんてのもあったのだが、小学生にとっては完全にハズレ枠だった。1枚分損した感がもの凄かった。

 つい最近近所のスーパーで買い物をしていたら、プロ野球チップスを見付けたので買ってみた。今はもう100円くらいだったので、物価高の波はここまで来たのかと多少のショックを感じながら帰宅。風呂上がりに発泡酒片手にプロ野球チップス開けてみる。
「あれ。カード2枚付いてんじゃん。」
 物価高の煽りを受けているんじゃなくて、仕様変更だったのか? そんなことを考えながらポテトチップスを齧った。ビールに合うな。つまみにしてた父の気持ちが良く分かった。これが大人になるということなのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...