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ワールドペガサス
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僕にとって藤木君は大切な友達の1人だ。
番長を中心としたコミュニティ。その中の1人が藤木君だった。彼も野球好き(野球部)で、今は西武ファンだけど、当時は阪神ファン(だったはず)。優しくて良いヤツだった。
2月9日。うちの親父の誕生日。その1ヶ月ほど前だっただろうか。誕生日プレゼントを何にしようかなかなか決まらずに居た時に、声を掛けてくれたのも藤木君だった。
「どした?」
「もうすぐ親父の誕生日なんだけどさ、誕生日プレゼントがなかなか決まらなくてさ。」
「そういうことか。」
「いつも何あげてる?」
「何あげてたっけなぁ。」
参考にしようと話を振ってみたものの、ゼロ回答。その代わりに、貴重なアイデアをくれた。
「そういえばさ、お父さん野球好きなんだよね?」
藤木くんも松坂vsイチローを現地で見ていた一人。その話で盛り上がっていたこともあり、父が野球好きなのを覚えてくれていた。
「グラブは?」
「あー。その手があったか。」
「俺行きつけのスポーツショップあるから、一緒に行ってあげるよ。」
「ありがとう。」
ね。優しいのよ。
後日。スポーツショップの最寄り駅の飯田橋駅で待ち合わせた僕らは、のんびり歩きながら目的地を目指した。もう道筋などは覚えていないが、確か坂か何かを登っている途中にあった気がする。藤木君は僕の1~2歩先を歩き、急に立ち止まったかと思うと振り返って看板を指差した。
「ここだよ。」
「おー。ここか。」
お店に入ると、当たり前だが野球用品が所狭しと並んでいた。
「スポーツショップとか久々に来たよ。」
「マジか。」
「あと、野球専門店は初めてかも。」
「え、マジか。」
そのまま軟式グラブコーナーへ。メーカー別にズラっと並んだグラブを一つ一つ見ていく。隣で藤木君も、なんだったら買うんじゃないかくらいの勢いで一つ一つ真剣に見ている。その姿がなんかちょっと面白かった。MIZUNOにZETTにSSKに。一通り眺めたところで一つのグラブが目に留まる。
「ワールドペガサス。オールラウンダーモデル。」
ワールドペガサスというメーカーのオールラウンダー用の黒いグラブ。手にとって眺めていると、藤木君もやってきた。
「決まった?」
「ワールドペガサスにしようかな。」
そう言って藤木君にグラブを見せる。
「マジか。なんか珍しいね。」
「うちの従兄弟がワールドペガサス使っててさ、お下がりをもらって一時期使ってたんだけど、使いやすかったイメージあってさ。あと単純にロゴが好き。」
「マジか。いいね。」
この辺りでなんとなく分かるかもしれないが、藤木君の口癖は「マジか。」だった。
お会計を済ませて外へ。
帰り道、グラブの入った袋を大切に抱えて帰った。冷たく吹き抜ける真冬の風も、無事プレゼントを買えた安堵感・満足感からか、不思議と心地良く感じた。誕生日プレゼントにグラブをあげたら、父はどんな顔をするだろうか。喜んでくれるだろうか。
この時僕は大事なことを忘れていた。還暦目前の人間にグラブをプレゼントしても、もう使うことはないということを。
番長を中心としたコミュニティ。その中の1人が藤木君だった。彼も野球好き(野球部)で、今は西武ファンだけど、当時は阪神ファン(だったはず)。優しくて良いヤツだった。
2月9日。うちの親父の誕生日。その1ヶ月ほど前だっただろうか。誕生日プレゼントを何にしようかなかなか決まらずに居た時に、声を掛けてくれたのも藤木君だった。
「どした?」
「もうすぐ親父の誕生日なんだけどさ、誕生日プレゼントがなかなか決まらなくてさ。」
「そういうことか。」
「いつも何あげてる?」
「何あげてたっけなぁ。」
参考にしようと話を振ってみたものの、ゼロ回答。その代わりに、貴重なアイデアをくれた。
「そういえばさ、お父さん野球好きなんだよね?」
藤木くんも松坂vsイチローを現地で見ていた一人。その話で盛り上がっていたこともあり、父が野球好きなのを覚えてくれていた。
「グラブは?」
「あー。その手があったか。」
「俺行きつけのスポーツショップあるから、一緒に行ってあげるよ。」
「ありがとう。」
ね。優しいのよ。
後日。スポーツショップの最寄り駅の飯田橋駅で待ち合わせた僕らは、のんびり歩きながら目的地を目指した。もう道筋などは覚えていないが、確か坂か何かを登っている途中にあった気がする。藤木君は僕の1~2歩先を歩き、急に立ち止まったかと思うと振り返って看板を指差した。
「ここだよ。」
「おー。ここか。」
お店に入ると、当たり前だが野球用品が所狭しと並んでいた。
「スポーツショップとか久々に来たよ。」
「マジか。」
「あと、野球専門店は初めてかも。」
「え、マジか。」
そのまま軟式グラブコーナーへ。メーカー別にズラっと並んだグラブを一つ一つ見ていく。隣で藤木君も、なんだったら買うんじゃないかくらいの勢いで一つ一つ真剣に見ている。その姿がなんかちょっと面白かった。MIZUNOにZETTにSSKに。一通り眺めたところで一つのグラブが目に留まる。
「ワールドペガサス。オールラウンダーモデル。」
ワールドペガサスというメーカーのオールラウンダー用の黒いグラブ。手にとって眺めていると、藤木君もやってきた。
「決まった?」
「ワールドペガサスにしようかな。」
そう言って藤木君にグラブを見せる。
「マジか。なんか珍しいね。」
「うちの従兄弟がワールドペガサス使っててさ、お下がりをもらって一時期使ってたんだけど、使いやすかったイメージあってさ。あと単純にロゴが好き。」
「マジか。いいね。」
この辺りでなんとなく分かるかもしれないが、藤木君の口癖は「マジか。」だった。
お会計を済ませて外へ。
帰り道、グラブの入った袋を大切に抱えて帰った。冷たく吹き抜ける真冬の風も、無事プレゼントを買えた安堵感・満足感からか、不思議と心地良く感じた。誕生日プレゼントにグラブをあげたら、父はどんな顔をするだろうか。喜んでくれるだろうか。
この時僕は大事なことを忘れていた。還暦目前の人間にグラブをプレゼントしても、もう使うことはないということを。
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