23 / 37
番長
しおりを挟む
シュッ、バスッ。シュッ、バスッ。
白球がグラブに収まる度、痛みとともに心地良さを感じていた。
「お前、西岡剛に似てんな。」
「ん?誰だ?」
「ロッテのショートや。」
僕と彼の関係はそんな会話から始まった。
クラスで1番背が高かった彼は、いつの間にか皆から「番長」と呼ばれ、クラスの中心的人物になっていた。東京生まれで東京育ち。なのに何故か関西弁。なかなか愉快なヤツだった。
いざ話してみたらイカツイ図体とは違い、優しくて面倒見が良くて、温かい心の持ち主だった。その面倒見の良さから、クラスの隅で孤立していた僕を見て、彼のコミュニティに招き入れてくれたのだと思う。それが先程の会話だ。
話してみたらなんてことはない。彼のコミュニティに居た人間の半数が野球好きだった。更にその内の半数が野球部だった。
「え。どこファンなの?」
「ソ、ソフトバンク?」
とりあえずそう答えておいた。ちなみに僕以外は皆んな阪神ファンだった。
高校に入って初めての校外学習。僕たちは横浜に行くことになった。クラスでなんとなく班分けして横浜で自由行動。横浜ベイスターズファンが居ればハマスタにでも行くんだろうが、先程も書いた通り僕以外の野球好きは皆阪神ファンである。ハマスタへは行かず、山下公園に直行した。そして山下公園に着くや否や、鞄からあるモノを取り出す。グラブとボールだ。
僕の通っていた高校は、指定の鞄が無かった。各自好きな鞄で登校していた。僕はよく分からない海外の写真が描かれた300円で買ったトートバッグで通学していたのだが、野球好きの人間は大体大きなエナメルバッグを使っていた。教科書と一緒にグラブやボールも入れられるように。番長も藤木君も真上君も。その他の人達も。なので、当たり前のように鞄からグラブとボールは出てくる。
ズカズカと芝生のあるところを進んで行き、少し開けたところでそれなりの間隔に広がりキャッチボールを。
今考えれば非常識極まりないのだが、僕らはそこでキャッチボールをした。同じように山下公園に来た同級生達に白い目で見られながらも、気にすることなくキャッチボールをした。横浜という地で、山下公園でキャッチボールをすることに意味があったんじゃないかと思う。なんとなく。なんとなく。
その後は高校卒業まで、昼休みの気が向いた時にキャッチボールをしたりした。
僕の高校時代は非常にあっさりしたもので、想い出も大して残らなかったのだが、彼や周りの仲間たちと話した野球の話、一緒にしたキャッチボールは、今も大切な思い出として僕の中に残っている。
白球がグラブに収まる度、痛みとともに心地良さを感じていた。
「お前、西岡剛に似てんな。」
「ん?誰だ?」
「ロッテのショートや。」
僕と彼の関係はそんな会話から始まった。
クラスで1番背が高かった彼は、いつの間にか皆から「番長」と呼ばれ、クラスの中心的人物になっていた。東京生まれで東京育ち。なのに何故か関西弁。なかなか愉快なヤツだった。
いざ話してみたらイカツイ図体とは違い、優しくて面倒見が良くて、温かい心の持ち主だった。その面倒見の良さから、クラスの隅で孤立していた僕を見て、彼のコミュニティに招き入れてくれたのだと思う。それが先程の会話だ。
話してみたらなんてことはない。彼のコミュニティに居た人間の半数が野球好きだった。更にその内の半数が野球部だった。
「え。どこファンなの?」
「ソ、ソフトバンク?」
とりあえずそう答えておいた。ちなみに僕以外は皆んな阪神ファンだった。
高校に入って初めての校外学習。僕たちは横浜に行くことになった。クラスでなんとなく班分けして横浜で自由行動。横浜ベイスターズファンが居ればハマスタにでも行くんだろうが、先程も書いた通り僕以外の野球好きは皆阪神ファンである。ハマスタへは行かず、山下公園に直行した。そして山下公園に着くや否や、鞄からあるモノを取り出す。グラブとボールだ。
僕の通っていた高校は、指定の鞄が無かった。各自好きな鞄で登校していた。僕はよく分からない海外の写真が描かれた300円で買ったトートバッグで通学していたのだが、野球好きの人間は大体大きなエナメルバッグを使っていた。教科書と一緒にグラブやボールも入れられるように。番長も藤木君も真上君も。その他の人達も。なので、当たり前のように鞄からグラブとボールは出てくる。
ズカズカと芝生のあるところを進んで行き、少し開けたところでそれなりの間隔に広がりキャッチボールを。
今考えれば非常識極まりないのだが、僕らはそこでキャッチボールをした。同じように山下公園に来た同級生達に白い目で見られながらも、気にすることなくキャッチボールをした。横浜という地で、山下公園でキャッチボールをすることに意味があったんじゃないかと思う。なんとなく。なんとなく。
その後は高校卒業まで、昼休みの気が向いた時にキャッチボールをしたりした。
僕の高校時代は非常にあっさりしたもので、想い出も大して残らなかったのだが、彼や周りの仲間たちと話した野球の話、一緒にしたキャッチボールは、今も大切な思い出として僕の中に残っている。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる