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番長
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シュッ、バスッ。シュッ、バスッ。
白球がグラブに収まる度、痛みとともに心地良さを感じていた。
「お前、西岡剛に似てんな。」
「ん?誰だ?」
「ロッテのショートや。」
僕と彼の関係はそんな会話から始まった。
クラスで1番背が高かった彼は、いつの間にか皆から「番長」と呼ばれ、クラスの中心的人物になっていた。東京生まれで東京育ち。なのに何故か関西弁。なかなか愉快なヤツだった。
いざ話してみたらイカツイ図体とは違い、優しくて面倒見が良くて、温かい心の持ち主だった。その面倒見の良さから、クラスの隅で孤立していた僕を見て、彼のコミュニティに招き入れてくれたのだと思う。それが先程の会話だ。
話してみたらなんてことはない。彼のコミュニティに居た人間の半数が野球好きだった。更にその内の半数が野球部だった。
「え。どこファンなの?」
「ソ、ソフトバンク?」
とりあえずそう答えておいた。ちなみに僕以外は皆んな阪神ファンだった。
高校に入って初めての校外学習。僕たちは横浜に行くことになった。クラスでなんとなく班分けして横浜で自由行動。横浜ベイスターズファンが居ればハマスタにでも行くんだろうが、先程も書いた通り僕以外の野球好きは皆阪神ファンである。ハマスタへは行かず、山下公園に直行した。そして山下公園に着くや否や、鞄からあるモノを取り出す。グラブとボールだ。
僕の通っていた高校は、指定の鞄が無かった。各自好きな鞄で登校していた。僕はよく分からない海外の写真が描かれた300円で買ったトートバッグで通学していたのだが、野球好きの人間は大体大きなエナメルバッグを使っていた。教科書と一緒にグラブやボールも入れられるように。番長も藤木君も真上君も。その他の人達も。なので、当たり前のように鞄からグラブとボールは出てくる。
ズカズカと芝生のあるところを進んで行き、少し開けたところでそれなりの間隔に広がりキャッチボールを。
今考えれば非常識極まりないのだが、僕らはそこでキャッチボールをした。同じように山下公園に来た同級生達に白い目で見られながらも、気にすることなくキャッチボールをした。横浜という地で、山下公園でキャッチボールをすることに意味があったんじゃないかと思う。なんとなく。なんとなく。
その後は高校卒業まで、昼休みの気が向いた時にキャッチボールをしたりした。
僕の高校時代は非常にあっさりしたもので、想い出も大して残らなかったのだが、彼や周りの仲間たちと話した野球の話、一緒にしたキャッチボールは、今も大切な思い出として僕の中に残っている。
白球がグラブに収まる度、痛みとともに心地良さを感じていた。
「お前、西岡剛に似てんな。」
「ん?誰だ?」
「ロッテのショートや。」
僕と彼の関係はそんな会話から始まった。
クラスで1番背が高かった彼は、いつの間にか皆から「番長」と呼ばれ、クラスの中心的人物になっていた。東京生まれで東京育ち。なのに何故か関西弁。なかなか愉快なヤツだった。
いざ話してみたらイカツイ図体とは違い、優しくて面倒見が良くて、温かい心の持ち主だった。その面倒見の良さから、クラスの隅で孤立していた僕を見て、彼のコミュニティに招き入れてくれたのだと思う。それが先程の会話だ。
話してみたらなんてことはない。彼のコミュニティに居た人間の半数が野球好きだった。更にその内の半数が野球部だった。
「え。どこファンなの?」
「ソ、ソフトバンク?」
とりあえずそう答えておいた。ちなみに僕以外は皆んな阪神ファンだった。
高校に入って初めての校外学習。僕たちは横浜に行くことになった。クラスでなんとなく班分けして横浜で自由行動。横浜ベイスターズファンが居ればハマスタにでも行くんだろうが、先程も書いた通り僕以外の野球好きは皆阪神ファンである。ハマスタへは行かず、山下公園に直行した。そして山下公園に着くや否や、鞄からあるモノを取り出す。グラブとボールだ。
僕の通っていた高校は、指定の鞄が無かった。各自好きな鞄で登校していた。僕はよく分からない海外の写真が描かれた300円で買ったトートバッグで通学していたのだが、野球好きの人間は大体大きなエナメルバッグを使っていた。教科書と一緒にグラブやボールも入れられるように。番長も藤木君も真上君も。その他の人達も。なので、当たり前のように鞄からグラブとボールは出てくる。
ズカズカと芝生のあるところを進んで行き、少し開けたところでそれなりの間隔に広がりキャッチボールを。
今考えれば非常識極まりないのだが、僕らはそこでキャッチボールをした。同じように山下公園に来た同級生達に白い目で見られながらも、気にすることなくキャッチボールをした。横浜という地で、山下公園でキャッチボールをすることに意味があったんじゃないかと思う。なんとなく。なんとなく。
その後は高校卒業まで、昼休みの気が向いた時にキャッチボールをしたりした。
僕の高校時代は非常にあっさりしたもので、想い出も大して残らなかったのだが、彼や周りの仲間たちと話した野球の話、一緒にしたキャッチボールは、今も大切な思い出として僕の中に残っている。
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