間違えた勇者 ~本当に好きなのはお前だけって言葉、信じられる?~

春野こもも

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四、ハーレムパーティ

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 まあ、こうなってしまったものは仕方がない。私は持参した調合の道具を使って、道中で薬草を採取しながらパーティの回復薬を作ることにした。
 久しぶりに見たアランは美貌と色気にさらに磨きがかかっていた。白金の髪は背中まで伸びて後ろで一括りにしている。今では私よりも随分身長が高くなった。いつの間に鍛えていたのか、細身ながらもしっかりと筋肉がついている。
 そして磨きがかかったといえば……

「ねえ、アラン。また一緒に遊びましょうよ~」
「ちょっと、エメリーヌ! その汚い胸をアランに擦りつけるのやめてくんない?」
「なによぉ、オティリー? やきもちぃ? みっともなぁい」
「二人とも仲良くできないなら、もう遊ばないよ?」
「「はぁ~い」」

 アランのハーレムに拍車がかかっていた。エメリーヌさんは聖女、オティリーさんは弓術士だ。そしてもう一人、格闘士のカロルさんという女性も控えている。皆アランに好意を寄せている。相変わらずだ。
 それにしても、なぜ王都くんだりまで来てこんな光景を目にしなければならないのか。アランはやたらとべたべたしてくるし、気分が悪い。
 旅の道中の森で、突然アランに腕を引っ張られて、パーティから少し離れた場所へと連れていかれた。

「ローズ、俺、怒ってるんだけど?」
「え、何?」

 アランの美しい目が吊り上がっている。

「俺に黙って王都へ行くなんてさ」
「ヴェロニクに言っておけばそのうち伝わるかと思って」
「それはないんじゃない!? 俺は恋人だよ?」
「それは……」
「ローズさん」

 アランに答えようと口を開いたときだった。突然後ろから声をかけられたので振り返ると、そこにいたのは魔道士のレアンドルさんだった。
 アランを除けば、レアンドルさんはこのパーティでただ一人の男性だ。このハーレム環境の中において、まともに会話できる唯一の心のオアシスだ。
 レアンドルさんは黒髪をぼさぼさのまま無造作に伸ばしていて、顔も前髪で隠れてよく見えない。年齢不詳だけど声の感じでは若そうだ。話しているだけで聡明な人だと分かる。

「魔力回復薬の調合について相談したいんですが」
「あ、今行きます。アラン、またあとで」

 旅の移動中、レアンドルさんはときどき私の調合を手伝ってくれているのだ。あからさまに不機嫌な表情を浮かべたアランを残して、早々にその場を立ち去った。
 拠点へ戻ったあとにレアンドルさんと話したところ、どうやらアランに詰め寄られて困っていた私を助けてくれたらしい。

「余計なお世話でしたか?」
「いえ、助かりました。ありがとうございました」
「彼は……」
「え?」
「……いえ、何か困ったことがあったらいつでも相談してください」

 そう言ってレアンドルさんは長い前髪の隙間からニコリと笑った。その瞳はとても綺麗な金色だった。
 それからというもの道中ではレアンドルさんと話すことが多くなった。レアンドルさんと話すと、必ずといっていいほどアランがこちらを見ている。
 女の子のメンバーは、レアンドルさんのことを地味でもさい男と厭って近付こうともしない。とても優しくて聡明な人なのになんだか悔しい。
 レアンドルさんはいろんなことをよく知っていて、努力家で、真面目で、魔法の腕も立つ凄い人なのに。そうぼやくと、レアンドルさんは笑って答える。

「私は容姿のみに惹かれて男性に言い寄る女性があまり好きではありません。だから今の状況が楽なのです」
「そうだったんですか。じゃあ、レアンドルさんはどんな女性が好きなんですか?」

 質問した瞬間に失言したと思った。これじゃまるでレアンドルさんにアプローチしてるみたいじゃないか。

「そうですね……。話していて心が安らぐような女性が好きです。その、ローズさんみたいな……」

 レアンドルさんはもごもごと口籠って真っ赤になって俯いてしまった。幼いころからアランばかりを見ていた私には、そんなレアンドルさんが新鮮で、とても可愛く見えた。そして多少なりとも好意を持ってもらえているようで嬉しい。
 そしてそんな私たちをアランが遠くから見ていたこと、そして血が出るほどに唇を噛み締めていたことに私は気付かなかった。
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