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20、風の丘への帰還
第217話 秘密の通路
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急に黙り込んだブルースに、リリスが明るい声を上げる。
「何をおっしゃいます、ブルース様。
私も術に落ちてミスリルの方に食べられかけました。
あなた方がいなければ、今頃あの森には私の骨が転がっていたことでしょう。
ああ、まったく、まことに油断大敵。こう言う手があるのかと驚くばかりでございます。」
リリスが神妙な顔でキッシュを一口ほおばる。
むぐむぐかんで飲み込み、ブルースに向かってフォークを左右に振った。
「そんな顔しちゃ駄目です、あなた様らしくない。
魔導に抗うのは至難の業です、ご自分を責めてはなりません。
ミラン様はお城にいらっしゃるのですよ、きっと一番最良の手当を受けられているはず、私はそれで安心しています。」
「そう……かね。」
ブルースが苦笑いでガーラントを見る。
ガーラントは何とも思ってない様子で、リリスの仕草ににやりと笑った。
「リリス殿、行儀が悪いと神官殿ににらまれますぞ。」
見ると、ホムラが渋い顔でにらんでいる。
リリスが慌ててフォークを置いて、ぺろっと舌を出した。
「やっぱり、家に帰ると気が抜けます。
それでパドルー様、ラグンベルク様のお話はいかがでしたか?」
「はい、ラグンベルク様は、残念ながら火の巫子の指輪のことはご存じなかったのです。
が、恐らく王がご存じであっても返されることは無かろうと。
なので、探しに行くが良かろうと、これを書いてくださいました。
ただし、これは口外無用、巫子殿のためにのみ使うようにと。」
そう言って、パドルーが懐から一枚の紙を取り出す。
思わず手を出しかけたブルースにたたんだ紙を差し出しかけて、皆を見回し引っ込めた。
「なんだ、もったいぶるな。我らが信用できぬか?水の戦士殿。」
ブルースがあからさまに眉をひそめる。
しかしパドルーは席を立ってリリスの元に行き、改めて彼に差し出した。
「あなた様は王族なれば、元より知って当たり前なのだとお話でした。
かのお方は忍んで取りに行かれるが良かろうと仰いました。
あなたにはその権利があると。」
「馬鹿な!盗みに入れと仰せか?!」
「それこそバレたら死罪だぞ!冗談じゃ無い、そんな危険なことさせられるか!」
皆、驚いて口々にパドルーに声を上げる。
しかし、当のリリスは紙を受け取り開いて見ると、顎に握った手を置き考え始めた。
「まさか……まさか、まさかな事言わんでくれよ。」
引きつった顔でブルースが立ち上がる。
ガーラントは、無言でリリスの言葉を待った。
「行って、みましょう。」
リリスがうなずいて、皿を避け紙をテーブルに広げる。
「ばっ……」
言いかけたブルースに手で制し、リリスが至極真面目な顔を上げた。
「私は、指輪がどこにあるかを確実に知っておきたいのです。
これは良い機会です。指輪の力は酷く弱っていますが、これだけ近くまで行けたらわかると思います。
仮にそこにあるとわかりましても、きっと、宝物庫に入ることは出来ないでしょう。
でも、そこにある事さえわかれば、王に請いやすくなります……と、考えることも出来ましょう。」
「火の巫子が盗人のまねなど、理解できぬ!」
ホムラがたまらず火を吐くように怒鳴った。
リリスは、それも予定の内なのか驚くそぶりも見せない。
肉に添えてあったソースの味がする口元をぺろりとなめ、シャンと背を伸ばした。
「承知しております。今回は、指輪のありかを知るためです。
私も盗人になる気などさらさらございません。
ただ、よくお考え下さい、ホムラ様。
今の王族は、火の神殿再建にはご理解がありません。
まして、火の指輪のありかはご存じが無い、つまり指輪は行方知れずです。
それだけ過去の王家は火の巫子の存在を、なおざりにしたかったのでしょう。
今一番優先することは指輪のありかを探すこと、手に入れるのはそれから手を考えます。
指輪の力は弱っていて、城に入っただけではどこにあるのかまでわかりませんでした。
でも、恐らく宝物庫であろうとセレス様方が仰っておられましたから、まずそこを調べます。
その、すべは問いません。
ずっと考えてきたのです。
なぜ、この数百年という長い時間を秘密だった物が、今すべて解かれてゆくのか。
それは………今が、好機だからなのです。
時が、満ちています。
すべてが動き始めます。
私は予見は出来ませんが、何かが急くのです。早く動けと。」
「しかし……そう簡単に宝物庫に近づくなど……城のどこにあるかも知らぬものを。
捕まれば死罪ではないか。」
ホムラがため息をつき渋い顔で吐き捨てる。
リリスが小さく首を振ってうなずいた。
「承知の上です。ですが、まだ死にたくはありません。
私が死ぬ時は、このアトラーナから火が消える時だと肝に銘じております。
だからこそ、出来るだけの安全策を考えて、ラグンベルク様はこの地図を託されたのだと思います。」
皆が一斉にその紙をのぞき込む。
そこには、有事の時に城の中から外へと脱出する時の通路。
財を持ち出し人知れず逃げる為の、王族だけに伝わる秘密の通路の地図だった。
「何をおっしゃいます、ブルース様。
私も術に落ちてミスリルの方に食べられかけました。
あなた方がいなければ、今頃あの森には私の骨が転がっていたことでしょう。
ああ、まったく、まことに油断大敵。こう言う手があるのかと驚くばかりでございます。」
リリスが神妙な顔でキッシュを一口ほおばる。
むぐむぐかんで飲み込み、ブルースに向かってフォークを左右に振った。
「そんな顔しちゃ駄目です、あなた様らしくない。
魔導に抗うのは至難の業です、ご自分を責めてはなりません。
ミラン様はお城にいらっしゃるのですよ、きっと一番最良の手当を受けられているはず、私はそれで安心しています。」
「そう……かね。」
ブルースが苦笑いでガーラントを見る。
ガーラントは何とも思ってない様子で、リリスの仕草ににやりと笑った。
「リリス殿、行儀が悪いと神官殿ににらまれますぞ。」
見ると、ホムラが渋い顔でにらんでいる。
リリスが慌ててフォークを置いて、ぺろっと舌を出した。
「やっぱり、家に帰ると気が抜けます。
それでパドルー様、ラグンベルク様のお話はいかがでしたか?」
「はい、ラグンベルク様は、残念ながら火の巫子の指輪のことはご存じなかったのです。
が、恐らく王がご存じであっても返されることは無かろうと。
なので、探しに行くが良かろうと、これを書いてくださいました。
ただし、これは口外無用、巫子殿のためにのみ使うようにと。」
そう言って、パドルーが懐から一枚の紙を取り出す。
思わず手を出しかけたブルースにたたんだ紙を差し出しかけて、皆を見回し引っ込めた。
「なんだ、もったいぶるな。我らが信用できぬか?水の戦士殿。」
ブルースがあからさまに眉をひそめる。
しかしパドルーは席を立ってリリスの元に行き、改めて彼に差し出した。
「あなた様は王族なれば、元より知って当たり前なのだとお話でした。
かのお方は忍んで取りに行かれるが良かろうと仰いました。
あなたにはその権利があると。」
「馬鹿な!盗みに入れと仰せか?!」
「それこそバレたら死罪だぞ!冗談じゃ無い、そんな危険なことさせられるか!」
皆、驚いて口々にパドルーに声を上げる。
しかし、当のリリスは紙を受け取り開いて見ると、顎に握った手を置き考え始めた。
「まさか……まさか、まさかな事言わんでくれよ。」
引きつった顔でブルースが立ち上がる。
ガーラントは、無言でリリスの言葉を待った。
「行って、みましょう。」
リリスがうなずいて、皿を避け紙をテーブルに広げる。
「ばっ……」
言いかけたブルースに手で制し、リリスが至極真面目な顔を上げた。
「私は、指輪がどこにあるかを確実に知っておきたいのです。
これは良い機会です。指輪の力は酷く弱っていますが、これだけ近くまで行けたらわかると思います。
仮にそこにあるとわかりましても、きっと、宝物庫に入ることは出来ないでしょう。
でも、そこにある事さえわかれば、王に請いやすくなります……と、考えることも出来ましょう。」
「火の巫子が盗人のまねなど、理解できぬ!」
ホムラがたまらず火を吐くように怒鳴った。
リリスは、それも予定の内なのか驚くそぶりも見せない。
肉に添えてあったソースの味がする口元をぺろりとなめ、シャンと背を伸ばした。
「承知しております。今回は、指輪のありかを知るためです。
私も盗人になる気などさらさらございません。
ただ、よくお考え下さい、ホムラ様。
今の王族は、火の神殿再建にはご理解がありません。
まして、火の指輪のありかはご存じが無い、つまり指輪は行方知れずです。
それだけ過去の王家は火の巫子の存在を、なおざりにしたかったのでしょう。
今一番優先することは指輪のありかを探すこと、手に入れるのはそれから手を考えます。
指輪の力は弱っていて、城に入っただけではどこにあるのかまでわかりませんでした。
でも、恐らく宝物庫であろうとセレス様方が仰っておられましたから、まずそこを調べます。
その、すべは問いません。
ずっと考えてきたのです。
なぜ、この数百年という長い時間を秘密だった物が、今すべて解かれてゆくのか。
それは………今が、好機だからなのです。
時が、満ちています。
すべてが動き始めます。
私は予見は出来ませんが、何かが急くのです。早く動けと。」
「しかし……そう簡単に宝物庫に近づくなど……城のどこにあるかも知らぬものを。
捕まれば死罪ではないか。」
ホムラがため息をつき渋い顔で吐き捨てる。
リリスが小さく首を振ってうなずいた。
「承知の上です。ですが、まだ死にたくはありません。
私が死ぬ時は、このアトラーナから火が消える時だと肝に銘じております。
だからこそ、出来るだけの安全策を考えて、ラグンベルク様はこの地図を託されたのだと思います。」
皆が一斉にその紙をのぞき込む。
そこには、有事の時に城の中から外へと脱出する時の通路。
財を持ち出し人知れず逃げる為の、王族だけに伝わる秘密の通路の地図だった。
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