240 / 303
23、魔導師たちの密かな攻防
第238話 魔導師たちの隠し部屋
しおりを挟む
その部屋は、青い、青い、透明の水の色が満たし、まるで水中にいるような錯覚を覚えた。
天井近くの小さな窓が閉じられた石造りの半地下の部屋は、ろうそくの明かりもかすむほどに部屋の中央にある水盤が青い輝きを放っている。
普段は物置きなのか、部屋の隅には沢山の本が積まれ、椅子や諸々が数々積まれてやや乱雑ささえ覚える。
それが、この魔導師の塔を急ごしらえで体裁を整えたと言うすべてを物語っていた。
輝く水盤をのぞき込み、魔導師3人が無言で集中している。
スッと滑るように、半透明のアデルの姿が水盤を覗く。
地下通路が、水の中に次々と場所を変え写っている。
3人は、突然姿が消えたリリスたちをひたすら探していた。
自分たちの管理する庭で、突然知り合いが消えたのと同義語だろう。
驚き、何が起きたのかわからぬまま彼らは探すしか無かった。
それは、リリスたちがちょうど地龍の腹に入った時であったのだが、庭に地龍がいることさえも気がつかなかった彼らの落ち度でもあるだろう。
驚き、焦りながら、ただただ必死に探していた。
アデルが目を細め、水盤に透明の手をかざす。
水盤はかすかに揺らぎ、スッと輝きを消した。
いささかトランス状態であった水の魔導師のシャラナが、術をいきなり強制的に解かれて後ろへゆらりと倒れかかる。
ハッと我を取り戻したルークが、慌てて彼女を支えた。
「あ……ああ……ごめんなさい。大丈夫よ。」
「大丈夫か?疲れただろう、少し休もう。え??アデル様?え?どうしてこちらへ?」
透明のアデルがひょいと肩を上げて首を振り、かんぬきをかけたドアを指さす。
「了解、了解」
ニードが肩を杖でトントン叩きながら、かんぬきを開けドアを開いた。
「なんだ、このお付きが一緒じゃ、鍵も意味ねえわ……」
うなだれるアデルの後ろに、オパールが控えている。
オパールは、あからさまに不愉快な様子のニードに目もくれず、元に戻ったアデルが顔を上げると一瞬で横をすり抜け、ニードが邪魔だとばかりにドアを押し開いて中からアデルを導いた。
「やあ、ごきげんよう魔導師の塔の諸君。
シャラナ殿は初対面かな、僕は…… 」
「存じております、地の3の巫子アデル様。
お会いできて光栄ですわ。」
額の汗をふき、ため息交じりにシャラナが低い声で小さな少年巫子を見下ろす。
いきなり乱入してきた巫子に、皆不機嫌な様子で息を整える。
アデルは楽しそうな様子で、クスクス笑って水盤をのぞき込んだ。
「探してるのかい?火の巫子を。」
「さあ、火の巫子かどうかは存じませんがね。
侵入者がいきなり消えたので探しているだけですよ。」
ルークがうそぶいて髪をかき上げる。
アデルはテーブルにもたれ、わかっているように大きくうなずいて、皆を見上げた。
「まあそうだろうと思ってね、こうして来たわけだよ。
彼らは僕が預かってる。
ちょっとやっかいな物が動き出したのでね。
大事なお方だ。
火の巫子としては、人としてもお力も、これまでの赤の巫子の中でも群を抜いていらっしゃる。
すべてが揃えば、悪霊の企みなどかすんでしまうだろう。
でも、今は欠けているものが多すぎる。
お守りせねば、僕としても困るのだよ。」
「預かって?どういう事かお話願えますかね?」
ニードが酷く不機嫌だ。
彼はのんびりマイペースに見えるが、ここ最近は王子の連れている魔導師が勝手に術を使って結界に干渉するのでピリピリしていた。
その上言うなれば地の魔導師である自分が、地の巫子の術を感知できなかったなどと、ルークの手前冗談ではないと思ったからだ。
しかし、それさえも見透かしたように、アデルが彼に微笑みかける。
ニードが気持ちを逆なでされて、思わず杖をドンと床に付いた。
「よい、ニードよ、お前の結界は完璧にはほど遠いが破ってはおらぬ。
お前達が厳しい戒律を守る魔導師なればこそ、我はほんの少し語ろう。
この下には昔から地龍が座している。
彼らを預かっているというのは、その地龍が守っていると言うことだ。
魔導を使ったのではない。」
ニードがその言葉に、愕然と杖を倒しそうになった。
「地龍??!!地龍だって??いつから?
そんな力の大きいものがいて、俺たちがわからないわけないだろう?!馬鹿なことを……」
「あれは本体でありながら、すでに概念化しているものにすぎない。
力はまた別の存在が持っている。
だからお前たちが気づかぬでも、何らおかしいことは無い。
元々お前たちは勘違いしている。
本当に力を持つ者は内に秘めるものだ、他者に気づかれるようでは詰めが甘い。
弱々しい振りをして、猫をかぶっても力は隠すのが本物だ。」
自信たっぷりにほくそ笑むアデルに、ニードとルークが呆れて顔を見合わせた。
魔導師3人が、口をあんぐりと開けて、そして脱力する。
通常、神気の集まる場所にいると言われている地龍がまさか足下にいるなど、それこそ考えたことも無かった。
天井近くの小さな窓が閉じられた石造りの半地下の部屋は、ろうそくの明かりもかすむほどに部屋の中央にある水盤が青い輝きを放っている。
普段は物置きなのか、部屋の隅には沢山の本が積まれ、椅子や諸々が数々積まれてやや乱雑ささえ覚える。
それが、この魔導師の塔を急ごしらえで体裁を整えたと言うすべてを物語っていた。
輝く水盤をのぞき込み、魔導師3人が無言で集中している。
スッと滑るように、半透明のアデルの姿が水盤を覗く。
地下通路が、水の中に次々と場所を変え写っている。
3人は、突然姿が消えたリリスたちをひたすら探していた。
自分たちの管理する庭で、突然知り合いが消えたのと同義語だろう。
驚き、何が起きたのかわからぬまま彼らは探すしか無かった。
それは、リリスたちがちょうど地龍の腹に入った時であったのだが、庭に地龍がいることさえも気がつかなかった彼らの落ち度でもあるだろう。
驚き、焦りながら、ただただ必死に探していた。
アデルが目を細め、水盤に透明の手をかざす。
水盤はかすかに揺らぎ、スッと輝きを消した。
いささかトランス状態であった水の魔導師のシャラナが、術をいきなり強制的に解かれて後ろへゆらりと倒れかかる。
ハッと我を取り戻したルークが、慌てて彼女を支えた。
「あ……ああ……ごめんなさい。大丈夫よ。」
「大丈夫か?疲れただろう、少し休もう。え??アデル様?え?どうしてこちらへ?」
透明のアデルがひょいと肩を上げて首を振り、かんぬきをかけたドアを指さす。
「了解、了解」
ニードが肩を杖でトントン叩きながら、かんぬきを開けドアを開いた。
「なんだ、このお付きが一緒じゃ、鍵も意味ねえわ……」
うなだれるアデルの後ろに、オパールが控えている。
オパールは、あからさまに不愉快な様子のニードに目もくれず、元に戻ったアデルが顔を上げると一瞬で横をすり抜け、ニードが邪魔だとばかりにドアを押し開いて中からアデルを導いた。
「やあ、ごきげんよう魔導師の塔の諸君。
シャラナ殿は初対面かな、僕は…… 」
「存じております、地の3の巫子アデル様。
お会いできて光栄ですわ。」
額の汗をふき、ため息交じりにシャラナが低い声で小さな少年巫子を見下ろす。
いきなり乱入してきた巫子に、皆不機嫌な様子で息を整える。
アデルは楽しそうな様子で、クスクス笑って水盤をのぞき込んだ。
「探してるのかい?火の巫子を。」
「さあ、火の巫子かどうかは存じませんがね。
侵入者がいきなり消えたので探しているだけですよ。」
ルークがうそぶいて髪をかき上げる。
アデルはテーブルにもたれ、わかっているように大きくうなずいて、皆を見上げた。
「まあそうだろうと思ってね、こうして来たわけだよ。
彼らは僕が預かってる。
ちょっとやっかいな物が動き出したのでね。
大事なお方だ。
火の巫子としては、人としてもお力も、これまでの赤の巫子の中でも群を抜いていらっしゃる。
すべてが揃えば、悪霊の企みなどかすんでしまうだろう。
でも、今は欠けているものが多すぎる。
お守りせねば、僕としても困るのだよ。」
「預かって?どういう事かお話願えますかね?」
ニードが酷く不機嫌だ。
彼はのんびりマイペースに見えるが、ここ最近は王子の連れている魔導師が勝手に術を使って結界に干渉するのでピリピリしていた。
その上言うなれば地の魔導師である自分が、地の巫子の術を感知できなかったなどと、ルークの手前冗談ではないと思ったからだ。
しかし、それさえも見透かしたように、アデルが彼に微笑みかける。
ニードが気持ちを逆なでされて、思わず杖をドンと床に付いた。
「よい、ニードよ、お前の結界は完璧にはほど遠いが破ってはおらぬ。
お前達が厳しい戒律を守る魔導師なればこそ、我はほんの少し語ろう。
この下には昔から地龍が座している。
彼らを預かっているというのは、その地龍が守っていると言うことだ。
魔導を使ったのではない。」
ニードがその言葉に、愕然と杖を倒しそうになった。
「地龍??!!地龍だって??いつから?
そんな力の大きいものがいて、俺たちがわからないわけないだろう?!馬鹿なことを……」
「あれは本体でありながら、すでに概念化しているものにすぎない。
力はまた別の存在が持っている。
だからお前たちが気づかぬでも、何らおかしいことは無い。
元々お前たちは勘違いしている。
本当に力を持つ者は内に秘めるものだ、他者に気づかれるようでは詰めが甘い。
弱々しい振りをして、猫をかぶっても力は隠すのが本物だ。」
自信たっぷりにほくそ笑むアデルに、ニードとルークが呆れて顔を見合わせた。
魔導師3人が、口をあんぐりと開けて、そして脱力する。
通常、神気の集まる場所にいると言われている地龍がまさか足下にいるなど、それこそ考えたことも無かった。
0
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる