258 / 303
24、黒い悪霊からの逃亡
第256話 小姓の少年の受難
しおりを挟む
3人の兵が、胸に手を当て頭を下げる。
絞り出すような声が、彼らから漏れた。
「 こ……、ここに、我が、君 」
「 我らこそ、あなたの騎士 」
ニイッと王子がほくそ笑む。
そして剣を床にドンと付いた。
「我は力を欲し、強き者を欲す。
汝の血を持って証とせよ!」
顔に血を付けた兵たちが、腰の剣で手を切り、血のしたる手を王子に差し出す。
落ちる血を惜しむように、王子の身体から黒いもやが現れ、その血を舐めとっていった。
「ククク……
良い、これで良い。いまだ力なき者よ、汝の身体は我が身体。
汝の見るもの我が見、汝が知る事我が知る。
我が手足となって、力となる者を増やせ
我が眷族となりし者には、永劫の栄光を与えようぞ! 」
王子の声に反応し、3人がビクンと身を起こした。
驚くほどにしっかりした声が返ってくる。
「ありがたき幸せ!この身朽ちるまで、何なりと、いかなる仰せにも従いましょう!」
「ならば行け!
まずはその働きを我に示せ!
森に侵入した不埒者を追え!
そして我の為に、罪人の墓に侵入せし者の首をはねよ!」
「はっ!」
ただの一般の兵だった者が、その一瞬で彼の為に命を賭ける騎士へと変貌した。
兵が走り去り、王子の目が一部始終を見ていた小姓の少年に移る。
「ひっ!」
ガクガクと震えて動けない彼ににじり寄り、手を伸ばすと少年はギュッと目を閉じた。
つうっと人差し指で額から頬を撫で、顎に指を置く。
上に持ち上げ、顔を上げさせると、そのまま包み込むようにそっと頬を撫でた。
「何を見た?」
「み、見ておりません!なにも!」
「そうか」
少年が、壁伝いに次第に下がり、そして王子が追い詰める。
やがて部屋の片隅まで来た時、暗い王子の顔が少年に覆い被さってきた。
「お前、私に隠れて花売りのようなことをしているな?下卑た輩よ。」
「あ、…あ、……あれは、妹への仕送りを……」
「黙れ、汚らわしい!口の軽そうな唇よ。
だが、なんと若く初々しく、はつらつとした生気。
汝は我のエサにしてやろう。」
「誤解です!お許しを!お許し………むぐぅ」
王子が少年の口に、噛みつくように口づけた。
最初戸惑っていた少年が、必死に抗い、そして手足から力が抜けて次第に目がうつろになる。
やがて、ふと気がついて王子が唇を放し、口の中から薄くもやを吐くと少年の口に吹き込み、傍らに放ってクックッと笑った。
「うう…うぐぁ…ひぅぐぁああああ」
少年が、首をかきむしりバタバタもがく。
「ククク…お前の中は我が力で満たされ、お前の血は我が血となろう。
私と汝は糸でつながり、常にお前とは力のやりとりが出来るというもの。光栄に思え。」
「た…た…助け……うぐ……ぐぅが、あ、あ、………」
涙を流し、ガタガタ身体を震わせもがき苦しむ。
やがてがくりと少年の顔から生気が消えて、だらりと開けた口から黒いもやがあふれた。
ベロリと王子が唇をなめる。
多少吸い取った少年の生気は、思った以上に新鮮でみずみずしい。
「お前は器量も良く、皆気を許して近づくというもの。
我はコマをなくして難儀している。だが、これからどんどん力を集めねばならぬ。
魔力の代わりになるものなど、簡単よ。周りを見回せば生きた者などウジャウジャといる。
我の力は生者の生気が一番良い。
お前は生き餌よ、我の為に生きの良い生気を集めよ。
お前の手足は我の手足、お前の命は我のもの。
お前には暇を出す。城下に下りて、毎夜一人分の生気を送れ。
若い男を惑わし、直接すべて吸い取るのだ。
いや……それでも足らぬ。足らぬ……」
王子が割れた花瓶のかけらを指さす。
少年が、這うようにして、ハンカチに破片を集め王子に差し出した。
王子は一つの破片で腕を切り、破片にポタポタと黒い血を落とす。
破片は一つ一つが呪いの文字を浮かべ、そして普通のかけらに戻った。
「この、我が血の付いたかけらを城下の町を囲うように置くのだ。
配置は私が指示を出す。見つけられぬ所を選べ。
ククク……生者など我がエサでしか無い。
なに心配はいらぬ、少しずつ、少しずつわからぬように吸い取って行く。
行け、それと別に貴様の吸い取る生気が足らぬ時は指示を出す。
花売りがしたければ、ボロになるまでするがいい。
我が小姓で有りながら、城内で身を売って小銭を稼ぐとは不埒ものが、恥を知れ。
行け!2度と顔も見たくない。」
少年が、血に濡れたかけらを恭しく包み、懐にしまう。
「……承知…いた…しま……た……」
ズルズルと重い身体を引きずるように立ち上がり、そして人形のようにぎこちない様子で王子に向けて胸に手を当てお辞儀した。
「この身体、すり切れるまで御身の為に。」
そのまま身を引いて部屋を出る。
顔を上げると、その表情の無い顔に、ポロポロと涙がこぼれていた。
絞り出すような声が、彼らから漏れた。
「 こ……、ここに、我が、君 」
「 我らこそ、あなたの騎士 」
ニイッと王子がほくそ笑む。
そして剣を床にドンと付いた。
「我は力を欲し、強き者を欲す。
汝の血を持って証とせよ!」
顔に血を付けた兵たちが、腰の剣で手を切り、血のしたる手を王子に差し出す。
落ちる血を惜しむように、王子の身体から黒いもやが現れ、その血を舐めとっていった。
「ククク……
良い、これで良い。いまだ力なき者よ、汝の身体は我が身体。
汝の見るもの我が見、汝が知る事我が知る。
我が手足となって、力となる者を増やせ
我が眷族となりし者には、永劫の栄光を与えようぞ! 」
王子の声に反応し、3人がビクンと身を起こした。
驚くほどにしっかりした声が返ってくる。
「ありがたき幸せ!この身朽ちるまで、何なりと、いかなる仰せにも従いましょう!」
「ならば行け!
まずはその働きを我に示せ!
森に侵入した不埒者を追え!
そして我の為に、罪人の墓に侵入せし者の首をはねよ!」
「はっ!」
ただの一般の兵だった者が、その一瞬で彼の為に命を賭ける騎士へと変貌した。
兵が走り去り、王子の目が一部始終を見ていた小姓の少年に移る。
「ひっ!」
ガクガクと震えて動けない彼ににじり寄り、手を伸ばすと少年はギュッと目を閉じた。
つうっと人差し指で額から頬を撫で、顎に指を置く。
上に持ち上げ、顔を上げさせると、そのまま包み込むようにそっと頬を撫でた。
「何を見た?」
「み、見ておりません!なにも!」
「そうか」
少年が、壁伝いに次第に下がり、そして王子が追い詰める。
やがて部屋の片隅まで来た時、暗い王子の顔が少年に覆い被さってきた。
「お前、私に隠れて花売りのようなことをしているな?下卑た輩よ。」
「あ、…あ、……あれは、妹への仕送りを……」
「黙れ、汚らわしい!口の軽そうな唇よ。
だが、なんと若く初々しく、はつらつとした生気。
汝は我のエサにしてやろう。」
「誤解です!お許しを!お許し………むぐぅ」
王子が少年の口に、噛みつくように口づけた。
最初戸惑っていた少年が、必死に抗い、そして手足から力が抜けて次第に目がうつろになる。
やがて、ふと気がついて王子が唇を放し、口の中から薄くもやを吐くと少年の口に吹き込み、傍らに放ってクックッと笑った。
「うう…うぐぁ…ひぅぐぁああああ」
少年が、首をかきむしりバタバタもがく。
「ククク…お前の中は我が力で満たされ、お前の血は我が血となろう。
私と汝は糸でつながり、常にお前とは力のやりとりが出来るというもの。光栄に思え。」
「た…た…助け……うぐ……ぐぅが、あ、あ、………」
涙を流し、ガタガタ身体を震わせもがき苦しむ。
やがてがくりと少年の顔から生気が消えて、だらりと開けた口から黒いもやがあふれた。
ベロリと王子が唇をなめる。
多少吸い取った少年の生気は、思った以上に新鮮でみずみずしい。
「お前は器量も良く、皆気を許して近づくというもの。
我はコマをなくして難儀している。だが、これからどんどん力を集めねばならぬ。
魔力の代わりになるものなど、簡単よ。周りを見回せば生きた者などウジャウジャといる。
我の力は生者の生気が一番良い。
お前は生き餌よ、我の為に生きの良い生気を集めよ。
お前の手足は我の手足、お前の命は我のもの。
お前には暇を出す。城下に下りて、毎夜一人分の生気を送れ。
若い男を惑わし、直接すべて吸い取るのだ。
いや……それでも足らぬ。足らぬ……」
王子が割れた花瓶のかけらを指さす。
少年が、這うようにして、ハンカチに破片を集め王子に差し出した。
王子は一つの破片で腕を切り、破片にポタポタと黒い血を落とす。
破片は一つ一つが呪いの文字を浮かべ、そして普通のかけらに戻った。
「この、我が血の付いたかけらを城下の町を囲うように置くのだ。
配置は私が指示を出す。見つけられぬ所を選べ。
ククク……生者など我がエサでしか無い。
なに心配はいらぬ、少しずつ、少しずつわからぬように吸い取って行く。
行け、それと別に貴様の吸い取る生気が足らぬ時は指示を出す。
花売りがしたければ、ボロになるまでするがいい。
我が小姓で有りながら、城内で身を売って小銭を稼ぐとは不埒ものが、恥を知れ。
行け!2度と顔も見たくない。」
少年が、血に濡れたかけらを恭しく包み、懐にしまう。
「……承知…いた…しま……た……」
ズルズルと重い身体を引きずるように立ち上がり、そして人形のようにぎこちない様子で王子に向けて胸に手を当てお辞儀した。
「この身体、すり切れるまで御身の為に。」
そのまま身を引いて部屋を出る。
顔を上げると、その表情の無い顔に、ポロポロと涙がこぼれていた。
0
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる