赤い髪のリリス 戦いの風

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24、黒い悪霊からの逃亡

第256話 小姓の少年の受難

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3人の兵が、胸に手を当て頭を下げる。
絞り出すような声が、彼らから漏れた。

「 こ……、ここに、我が、きみ 」

「 我らこそ、あなたの騎士 」

ニイッと王子がほくそ笑む。
そして剣を床にドンと付いた。

「我は力を欲し、強き者を欲す。
汝の血を持って証とせよ!」

顔に血を付けた兵たちが、腰の剣で手を切り、血のしたる手を王子に差し出す。
落ちる血を惜しむように、王子の身体から黒いもやが現れ、その血を舐めとっていった。

「ククク……
良い、これで良い。いまだ力なき者よ、汝の身体は我が身体。
汝の見るもの我が見、汝が知る事我が知る。

我が手足となって、力となる者を増やせ
我が眷族となりし者には、永劫の栄光を与えようぞ! 」

王子の声に反応し、3人がビクンと身を起こした。
驚くほどにしっかりした声が返ってくる。

「ありがたき幸せ!この身朽ちるまで、何なりと、いかなる仰せにも従いましょう!」

「ならば行け!
まずはその働きを我に示せ!
森に侵入した不埒者を追え!
そして我の為に、罪人の墓に侵入せし者の首をはねよ!」

「はっ!」

ただの一般の兵だった者が、その一瞬で彼の為に命を賭ける騎士へと変貌した。
兵が走り去り、王子の目が一部始終を見ていた小姓の少年に移る。

「ひっ!」

ガクガクと震えて動けない彼ににじり寄り、手を伸ばすと少年はギュッと目を閉じた。
つうっと人差し指で額から頬を撫で、顎に指を置く。
上に持ち上げ、顔を上げさせると、そのまま包み込むようにそっと頬を撫でた。

「何を見た?」

「み、見ておりません!なにも!」

「そうか」

少年が、壁伝いに次第に下がり、そして王子が追い詰める。
やがて部屋の片隅まで来た時、暗い王子の顔が少年に覆い被さってきた。

「お前、私に隠れて花売りのようなことをしているな?下卑た輩よ。」

「あ、…あ、……あれは、妹への仕送りを……」

「黙れ、汚らわしい!口の軽そうな唇よ。
だが、なんと若く初々しく、はつらつとした生気。
汝は我のエサにしてやろう。」

「誤解です!お許しを!お許し………むぐぅ」

王子が少年の口に、噛みつくように口づけた。
最初戸惑っていた少年が、必死に抗い、そして手足から力が抜けて次第に目がうつろになる。

やがて、ふと気がついて王子が唇を放し、口の中から薄くもやを吐くと少年の口に吹き込み、傍らに放ってクックッと笑った。

「うう…うぐぁ…ひぅぐぁああああ」

少年が、首をかきむしりバタバタもがく。

「ククク…お前の中は我が力で満たされ、お前の血は我が血となろう。
私と汝は糸でつながり、常にお前とは力のやりとりが出来るというもの。光栄に思え。」

「た…た…助け……うぐ……ぐぅが、あ、あ、………」

涙を流し、ガタガタ身体を震わせもがき苦しむ。
やがてがくりと少年の顔から生気が消えて、だらりと開けた口から黒いもやがあふれた。
ベロリと王子が唇をなめる。
多少吸い取った少年の生気は、思った以上に新鮮でみずみずしい。

「お前は器量も良く、皆気を許して近づくというもの。
我はコマをなくして難儀している。だが、これからどんどん力を集めねばならぬ。
魔力の代わりになるものなど、簡単よ。周りを見回せば生きた者などウジャウジャといる。
我の力は生者の生気が一番良い。

お前は生き餌よ、我の為に生きの良い生気を集めよ。
お前の手足は我の手足、お前の命は我のもの。

お前には暇を出す。城下に下りて、毎夜一人分の生気を送れ。
若い男を惑わし、直接すべて吸い取るのだ。

いや……それでも足らぬ。足らぬ……」

王子が割れた花瓶のかけらを指さす。
少年が、這うようにして、ハンカチに破片を集め王子に差し出した。

王子は一つの破片で腕を切り、破片にポタポタと黒い血を落とす。
破片は一つ一つが呪いの文字を浮かべ、そして普通のかけらに戻った。

「この、我が血の付いたかけらを城下の町を囲うように置くのだ。
配置は私が指示を出す。見つけられぬ所を選べ。

ククク……生者など我がエサでしか無い。
なに心配はいらぬ、少しずつ、少しずつわからぬように吸い取って行く。

行け、それと別に貴様の吸い取る生気が足らぬ時は指示を出す。
花売りがしたければ、ボロになるまでするがいい。
我が小姓で有りながら、城内で身を売って小銭を稼ぐとは不埒ものが、恥を知れ。

行け!2度と顔も見たくない。」

少年が、血に濡れたかけらを恭しく包み、懐にしまう。

「……承知…いた…しま……た……」

ズルズルと重い身体を引きずるように立ち上がり、そして人形のようにぎこちない様子で王子に向けて胸に手を当てお辞儀した。

「この身体、すり切れるまで御身の為に。」

そのまま身を引いて部屋を出る。
顔を上げると、その表情の無い顔に、ポロポロと涙がこぼれていた。
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