赤い髪のリリス 戦いの風

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25、青の巫子の目覚め

第272話 巫子の後ろ盾

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その場にいた皆が一斉に、名を継いでメイスからマリナ・ルーに名の変わった彼に頭を下げる。
その場にいた光栄に、言葉も出ない。
いつまでも頭を上げることが出来ないでいると、魔導師グロスが声を上げて場が緩んだ。

「何という光栄。新しき火の巫子、ご誕生をお喜び申し上げる。」

グロスが杖を左手に、右手を胸に当てて、レナファンと共にあらためてお辞儀する。
息をのんでいたルシリアが、大きく息をついて片足を引きお辞儀した。

「今日の良き日に、美しいご誕生の瞬間、堪能させて頂きましたわ。
あなたは確かに尊き御方。ね?兄様?」

ガルシアが、感嘆の息を吐く。

「これは……なんと言ったらいいのだろうな。
素晴らしいものを見せて頂いた。
そなたのその変貌の様子は、確かに生まれ変わったと言って頷ける。
このガルシア、火の巫子の後ろ盾に立とう。
貴方は何を望むのか?」

ガルシアの前に立ち、マリナが一つお辞儀する。
そして、可憐な唇を動かした。


「  私は………    赤の巫子、リリスの元へ    」


その声が、二重になって空気を揺らす。
その場の人たちが胸を押さえ、息が詰まるように心を揺り動かされる。

「  おお、これは   」

グロスが眩しいまぶものでも遮るさえぎように、杖を額に当てて手を震わせた。

「神殿の無いことが、これほど悔やまれることがありましょうか。
火の巫子がこれほど尊きものとは……火の神殿については、すべての記録は焼き払われたと聞き及んでおります。
あなた様を初めて目にして、その理由がわかるような気がします。」

ガルシアが、その横で軽く頭を振ってパンッと頬を叩いた。

「なんという、そなたの力か。
一体どのくらい修行した?」

マリナが唇に、指を立てて考える。

「何十年でしょう、何百年かも知れません。
忘れるほどに長い年月を黄泉で過ごして参りました。
てっきり、こちらの身体はおじいさんだと思っておりましたが。うふふ…」

ペロリと舌を出す。
愛らしい仕草は、おじいさんにはどうにも見えないが、彼はそれほど修行を積んだのだ。

「は!やれやれ、リリスはたいした物だと思ったがな。
お主もなかなかの者だ。
大義である!

さて!」

振り向くと、部屋はドアまでみっちりと、兵や騎士や下働きまで来て埋まっている。
やれやれ、暇人ばかりだな。
呆れたように肩をひょいと上げ首を振り、彼らに手を上げた。

「しっかり見たか、お前たち!
この子は巫子だ、間違いない。
過去は忘れろ、この子は生まれ変わった!」


「「「   おお!!!   」」」


一同が、拳を上げて返事を返す。
ガルシアが、制して言葉を続けた。

「よーし、ここで一仕事ひとしごとだ!
このガルシア!火の巫子の後ろ盾になると決めた。
決めたからには動かねばなるまい!

我が領民たちよ!

火の巫子が姿を現したと触れ回れ!
特に、国中を歩く商人、旅人、国境の警備まで全部だ。
王家が喜んで火の神殿を作ると触れ回れ!

良いか!!

王家は、喜んで!神殿を作るのだ!

それ!仕事に戻れ!
兵は交代して今見たことを町中に語って聞かせろ!!

行け!!」


「「「  ハッ!! 承知!!  」」」


バタバタバタ!!

その場にいた者達が、一斉に頭を下げて部屋を出る。
その人々の顔は、巫子の誕生に触れて心からの感動に包まれ、そして沸き立つ心を抑えるように拳を握りしめる。
口々に、感動が収まる前に、声を上げる。
なじみの無い巫子の名前は、その誕生を見た人たちの感動が後押しして大きく広がり、そして街道を広がって山を越えていく。
アトラーナという小さな国で、そのスピードはみるみる増して、国中が沸き立つのにさほど日数はかからなかった。



メイスが腕輪を付けた瞬間、本城の王子の隣の部屋で、リュシーの髪をくしですいていたフェイクが微笑み、顔を上げた。
薄いカーテンから日の光がこぼれ、テーブルのガラスの水差しが輝く。

「良き、 日だ」

フェイクののつぶやきに、リュシーがニッコリ笑う。

「なあに?」

「とても良いことがあったのだ。生きる力だ。
欲し、欲される存在というものを、 ああ 久しく忘れていた。

黄泉の……よ、感謝する。

汝を祝福しよう。我が愛する巫子よ。」

フェイクの胸に、熱い物がこみ上げようとする。
今はそれを押さえ、心を抑えるようにふうっと息を吐いた。
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