赤い髪のリリス 戦いの風

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25、青の巫子の目覚め

第278話 ミランとの再会

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コーン……

ブルースが、セフィーリアの館の庭で、薪割りをして額の汗を拭う。
人間が増えただけ、湯を沸かす頻度が増えて薪の数がどんどん減って行く。
薪を慌てて注文して届けてもらったものの、届いた途端にリリスがヨシと袖をまくった。

薪割りはザレルの仕事だったので、ここは自分がと病み上がりのリリスが斧を持って、おもむろに割り始める。
何をするのかと遠目に見ていた騎士や神官たちが、驚いて駆け寄ると斧を取り上げた。

「え、だって割らないと燃えにくいですし。」

「そう言う問題ではない、どうして貴方は頼み方を知らんのか?!」

「はあ、でも、割らないとですね…」

「男手は余るほどある。何故割れと一言くださらない?」

「大丈夫です!これは私の仕事ですし!」

大丈夫じゃない、薪割りする巫子様なんて聞いたことが無い。

どんなに座っていて下さいと言っても、気がつけば廊下を掃除しているし、目を離せば水汲みを始める。
見ている彼らが焦るほどに、人に頼むという選択肢がない。

そのたびに神官たちがガンガン吠えまくり、はいはいとリリスが椅子に座る。
しかし、次の瞬間目を離せばもういない。
なんでも自分でやったが早いと言う、フットワークの良さが巫子様らしくない。

人に頼むことを知らない困った巫子だ。
笑い転げるイネスを横目に、まあ、彼は薪割りだけは下手くそなので非常に助かる。
騎士二人が交代で薪を割り、割った薪を束ねて置き場に運ぶ。

「まったく、なんでも自分でやっちまう困った巫子さんだな。え?ガーラントよ。」

「ああ、そろそろ交代しよう。疲れただろう。」

「は?え?!俺がなんで?誰が疲れたって?」

眉をひそめて大げさに声を上げるブルースに、ガーラントが先ほど割った薪を合わせてみせる。
真っ二つではあるが、かなり中心を外れて大小はなはだしい。

「見ろ、木の中心からどんどん外れている。今の貴様は巫子殿といい勝負だ。」

「うぬううう、これはわざとだ!疲れてなどおらぬ!」

「こんな下手くそな薪を残しては騎士の名折れ、騎士長に恥ずかしくて顔向け出来ん。」

「なにいっ!」


「ぷうっ、くくくく、相変わらずですねえ、二人とも。」


背後で笑う声がして、小道から庭へミュー馬を引いて青年が入ってきた。

「お久しゅうございます。やっと合流できました。」

ブルースが、その姿に呆然と立ち尽くす。
斧をその場に落とし、知らず彼の元へと歩み始めた。
声も無くブルースは駆け出すと、ニコニコ朗らかに笑う青年に大きく手を広げ、ギュッと抱きしめる。

「良かった、良かった、良かった……」

何度も背を叩いて、両肩を握り、身体を離してまた、体中バンバン叩く。
自分のせいでケガを負った青年のことが、一時たりとも頭を離れなかった。
自分のせいで剣を置くことになってしまったら、自分のせいで、そう自分を責めて、懸命に彼の分まで頑張ってきたけれど…… ああ……

ボロボロ涙が流れて青年の顔がぼやけてよく見えない。
青年が、ぺこりと一つお辞儀した。

「ブルース殿、私がいない間、私の分まで頑張って頂いてありがとうございました。」

「ミラン…… すまない、すまなかった。本当に、本当に、良かった……」

「ふふふ、ご心配おかけしました。
ほら、この通り、また万全の状態で働けます!
ガーラント殿、長らく留守にして申し訳ありませんでした。」

ブルースが流れる涙をふいて、一緒にガーラントのところへ向かう。
ガーラントと話す青年の横顔に、体中のつっかえが一つボロボロと剥がれ落ちて行くのを感じ、ああと息をついた。
落とした斧を拾ってふと気がつく。
そして、そうだ!と叫び、拳を上げた。

「巫子殿に知らせてくる!きっとビックリするぞ!」

「え?あっ、ブルース殿!斧、斧持ったまま!」

その声も聞こえないようで、ブルースはうれしさのあまり母屋へと駆けだした。



リリスから、青の巫子が現世に生まれたことを聞いて、火の神官たちは息を呑んで顔を見合わせた。

「お守りに参じねば」

「しかし、誰が行く?我ら3人で二手に分かれるのは…… 」

「火打ち石が認めたエリン殿がいる、誰が残るが最良か… 」

うなずき合い、直後3人でしばらく話し合いを始め、リリスは意外とビックリしないんだなあと、ちょっと肩すかしを食らったような気がする。
長椅子にイネスがいたのでお茶を持っていくと、彼はもそもそ果物かじりながら、頬杖ついてくさっていた。

「火の巫子には二人いるって、ほんとなんだな。」

彼の不機嫌な訳はすぐわかる。
何故か、自分の施した癒やしの術が、今のリリスには半分も効かなかったのだ。
ところが、マリナと会ったと言ったリリスは、その一瞬で元気になってしまった。
ショックだ。こんなにショックなことはない。

「チチチ…… ピピピピ!!イネスは焼いてるのよねー 」

「焼いてるって、どういう事ですか?」

不思議そうなリリスに、イネスの頭に座ったまま小鳥のヨーコが笑う。
彼女はリリスがレナントから旅立ったあとから、ずっとイネスについている。
それがここへ来て再会を喜んだ後も変わらないので、イネスが煩わしそうに左右に首を振ってヨーコ鳥にぼやいた。

「なんでもない! リリは知らなくていいんだ。
だいたいお前は何でリリに行かないんだ? あんなにリリ、リリって言ってたじゃないか。」

「ピピッ、だって、リリスに会うの久しぶりじゃない? あのきれいな顔見ていたいのよ。
それに、あの怖そうなおじさんたちが、巫子を足蹴にするなって怒るの。」

「俺だって巫子だ、お前はだいたい何で俺の頭ばかりに止まるんだ。」

「ピピピピ!」

バタバタ、羽根をばたつかせて明るく鳴いた。

まあ、どうでもいいや。

諦め気味のイネスは、何故かリリスを見ようとしない。
視線を避けるのがあからさまで、リリスがあれあれ? っと、彼の顔の前に顔を出す。

「どうしたんです? 何故見てくださらないんです? リリスは寂しいです。」

イネスが右を向くと右に来て、左を向くと左に座る。
その様が可愛くて、リリスもクスクス笑いながら、自分もようやくお茶を飲んで一息ついた。
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