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26、水の国の悪霊憑き
第293話 魔導師シャラナと弟子のララ
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シャラナがミュー馬に乗ってやって来たのは、リリスたちが着いてそれほど時間が過ぎていない頃だった。
2頭のミュー馬で、弟子の少女と共にたいそうな荷物を積んでいる。
2人とも言われなければ魔導師とはわからないような、男物に似た動きやすいズボンと、襟に緑のリボンが付いた上着のグレーの乗馬服に身を包み、シャラナは栗色の髪を結い上げてツバの狭い帽子をかぶっている。
元気でキレのある話し方に、やる気満々に見えた。
「お呼び頂き光栄ですわ!地の巫子殿。
私はシャラナ、こちらは弟子のララ。
お見知りおき下さいませ。」
「よろしくたのむ。」
シャラナがイネスに腰を落として優雅にお辞儀する。
イネスが差し出す手を取り、うやうやしく額に当てた。
イネスに挨拶を済ませると、リリスたちにも頭を下げる。
やや緊張した面持ちのリリスと目が合うと、にっこり微笑んだ。
可愛い子、赤い髪の…… きっと長は会いたかったでしょうね。
あなたが巫子であった事を一番喜んだのは、きっとルークだわ。
「あ、あの、お久しゅうござる…… 」
ミリアムが、モジモジしながら前に出てきた。
「おや?そちらはエンシスアル家のミリアム様ではございませんこと?
お久しゅうございますわ、セリアス様には城へ上がる時、随分とお力添えいただき感謝しております。」
シャラナがにっこり微笑むと、ミリアムが真っ赤な顔になる。
口ごもって言いにくそうにうつむいた。
「そ、その、セリアスが、あの…… 」
「存じております、お気遣い無くミリアム様、存じておりますわ。
で?! なぜですの?
なぜこのような事態になる前に、なぜ私にお話しが無かったのかしら?!
できましたら!! この私に、最初からご相談頂きたく存じます! 」
ミリアムを冷たく叱咤するように言い放つシャラナに、彼がすごすごと小さく身を縮める。
見知っているからこそ頼って欲しかったのに、近しい精霊に聞くと、よりによって以前塔にいた魔導師に頼むとか、本当に、ムカッときた。
「さ! 道を開いて、早く連れ戻さないと!
普通の人間が精霊の国に行ったら、一体どうなるかわかりませんことよ! 」
うなだれる彼にフンッと息を吐き、くるりと小川に向かう。
切り替えの早さに、皆唖然とする。
シャラナは美しい女性だが、その辺の男より勇ましい女魔導師だった。
「はい! 師よ、準備致します! 」
弟子のララが、一礼して馬から荷物を降ろしにかかる。
リリスが手伝おうとすると、サッと横からグレンが手を差し伸べた。
「巫子よ、ここは私が。」
「じゃあ、頼みます」
「あら、ごめんなさい。まあ! 布越しで前は見えるの? じゃあ、頼んでもいいのかしら。」
「心配ご無用だ、我が巫子がお手を出されるならば、それは我らの仕事。
汝らは我が巫子に礼を欠いておられるが、それを巫子が受け入れるのであれば致し方ない。」
ララが、フッと微笑み彼に道具の入った少し重い麻袋を頼む。
自分は敷物を解いて、川の畔に持っていき広げると、シャラナが方角を見て、指さす方向に印となる石を置いた。
身を起こしてグレンがそばに来ると、彼に微笑んで敷物の中央に指を指す。
「あ、それはそちらに。割れ物がありますのでそっとお願いします。」
「承知した」
グレンが腰を落とすと、ララがそっと声を潜めた。
「あなたはそちらのお付きの方ですね。
礼など、我が師は欠いておりません。
我が師は、あなた方に一礼する時は、常にあなたの大切な方に向けて頭を下げられておられました。
我らは王族の元の塔に属するもの。
正式に認められなければ、師はあなたの巫子を巫子と呼ぶ事は出来ないのです。」
ララの言葉に、グレンが割れ物の入った袋を大切に降ろし彼女を見る。
シャラナより少し年下の彼女は随分短い髪で、頬から首に双頭のヘビの入れ墨が覗いていた。
「承知、心遣い感謝する。」
「うふふ、大丈夫ですよ。あなたの巫子は、ひときわ輝いて見えます。
修行半端な私にも、そう見えるのですから間違いありません。」
グレンの顔の前垂れが、ふわりと動く。
きっと彼は笑ったのだと、ララが嬉しそうにキュッと肩をすぼめる。
「当然だ。我が巫子は火の巫子、万物を照らし人々を導く赤の巫子である。
本来汝らなどは、姿を見る事さえ出来ぬ尊い御方。」
「ちょっ! ちょっと、グレン様! 何おっしゃっておられるのですか!
恥ずかしいではありませんか!
グレン様下がって! あとは私がお手伝いします! 」
シャラナが何をするかに興味があって見ていたリリスが、グレンの声を聞いて慌ててグレンの背中に飛びついた。
上着を掴んでグイグイ後ろに引くと、グレンが長い爪でリリスを傷つけないように、そっと彼の手を下からすくうように手に取り、大切に両手でうやうやしく額に当てる。
「我が巫子、ご無礼お許しを」
「もう! グレン様はおとなしく願います! 」
ぷいぷいしながら、リリスがグレンの手をギュッと握ってため息をつく。
リリスはとにかく、今は魔導師の精霊界の道を開く術へと意識が向いている。
彼は魔導において、道を究める探究心の塊なのだった。
2頭のミュー馬で、弟子の少女と共にたいそうな荷物を積んでいる。
2人とも言われなければ魔導師とはわからないような、男物に似た動きやすいズボンと、襟に緑のリボンが付いた上着のグレーの乗馬服に身を包み、シャラナは栗色の髪を結い上げてツバの狭い帽子をかぶっている。
元気でキレのある話し方に、やる気満々に見えた。
「お呼び頂き光栄ですわ!地の巫子殿。
私はシャラナ、こちらは弟子のララ。
お見知りおき下さいませ。」
「よろしくたのむ。」
シャラナがイネスに腰を落として優雅にお辞儀する。
イネスが差し出す手を取り、うやうやしく額に当てた。
イネスに挨拶を済ませると、リリスたちにも頭を下げる。
やや緊張した面持ちのリリスと目が合うと、にっこり微笑んだ。
可愛い子、赤い髪の…… きっと長は会いたかったでしょうね。
あなたが巫子であった事を一番喜んだのは、きっとルークだわ。
「あ、あの、お久しゅうござる…… 」
ミリアムが、モジモジしながら前に出てきた。
「おや?そちらはエンシスアル家のミリアム様ではございませんこと?
お久しゅうございますわ、セリアス様には城へ上がる時、随分とお力添えいただき感謝しております。」
シャラナがにっこり微笑むと、ミリアムが真っ赤な顔になる。
口ごもって言いにくそうにうつむいた。
「そ、その、セリアスが、あの…… 」
「存じております、お気遣い無くミリアム様、存じておりますわ。
で?! なぜですの?
なぜこのような事態になる前に、なぜ私にお話しが無かったのかしら?!
できましたら!! この私に、最初からご相談頂きたく存じます! 」
ミリアムを冷たく叱咤するように言い放つシャラナに、彼がすごすごと小さく身を縮める。
見知っているからこそ頼って欲しかったのに、近しい精霊に聞くと、よりによって以前塔にいた魔導師に頼むとか、本当に、ムカッときた。
「さ! 道を開いて、早く連れ戻さないと!
普通の人間が精霊の国に行ったら、一体どうなるかわかりませんことよ! 」
うなだれる彼にフンッと息を吐き、くるりと小川に向かう。
切り替えの早さに、皆唖然とする。
シャラナは美しい女性だが、その辺の男より勇ましい女魔導師だった。
「はい! 師よ、準備致します! 」
弟子のララが、一礼して馬から荷物を降ろしにかかる。
リリスが手伝おうとすると、サッと横からグレンが手を差し伸べた。
「巫子よ、ここは私が。」
「じゃあ、頼みます」
「あら、ごめんなさい。まあ! 布越しで前は見えるの? じゃあ、頼んでもいいのかしら。」
「心配ご無用だ、我が巫子がお手を出されるならば、それは我らの仕事。
汝らは我が巫子に礼を欠いておられるが、それを巫子が受け入れるのであれば致し方ない。」
ララが、フッと微笑み彼に道具の入った少し重い麻袋を頼む。
自分は敷物を解いて、川の畔に持っていき広げると、シャラナが方角を見て、指さす方向に印となる石を置いた。
身を起こしてグレンがそばに来ると、彼に微笑んで敷物の中央に指を指す。
「あ、それはそちらに。割れ物がありますのでそっとお願いします。」
「承知した」
グレンが腰を落とすと、ララがそっと声を潜めた。
「あなたはそちらのお付きの方ですね。
礼など、我が師は欠いておりません。
我が師は、あなた方に一礼する時は、常にあなたの大切な方に向けて頭を下げられておられました。
我らは王族の元の塔に属するもの。
正式に認められなければ、師はあなたの巫子を巫子と呼ぶ事は出来ないのです。」
ララの言葉に、グレンが割れ物の入った袋を大切に降ろし彼女を見る。
シャラナより少し年下の彼女は随分短い髪で、頬から首に双頭のヘビの入れ墨が覗いていた。
「承知、心遣い感謝する。」
「うふふ、大丈夫ですよ。あなたの巫子は、ひときわ輝いて見えます。
修行半端な私にも、そう見えるのですから間違いありません。」
グレンの顔の前垂れが、ふわりと動く。
きっと彼は笑ったのだと、ララが嬉しそうにキュッと肩をすぼめる。
「当然だ。我が巫子は火の巫子、万物を照らし人々を導く赤の巫子である。
本来汝らなどは、姿を見る事さえ出来ぬ尊い御方。」
「ちょっ! ちょっと、グレン様! 何おっしゃっておられるのですか!
恥ずかしいではありませんか!
グレン様下がって! あとは私がお手伝いします! 」
シャラナが何をするかに興味があって見ていたリリスが、グレンの声を聞いて慌ててグレンの背中に飛びついた。
上着を掴んでグイグイ後ろに引くと、グレンが長い爪でリリスを傷つけないように、そっと彼の手を下からすくうように手に取り、大切に両手でうやうやしく額に当てる。
「我が巫子、ご無礼お許しを」
「もう! グレン様はおとなしく願います! 」
ぷいぷいしながら、リリスがグレンの手をギュッと握ってため息をつく。
リリスはとにかく、今は魔導師の精霊界の道を開く術へと意識が向いている。
彼は魔導において、道を究める探究心の塊なのだった。
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