296 / 303
26、水の国の悪霊憑き
第294話 ララの祭壇作り
しおりを挟む
リリスがララに、グレンの無礼をわびて小さく首を傾げる。
「こちらは…… 祭壇を作られるのですか?」
「ええ、さすがよくおわかりですね。えっと、リリス様。
祭壇を作るということは、水の精霊に礼を尽くし、こちら側に精霊の国の延長した世界を作る事です。
これが無いとあるでは、術の成功率が格段に変わります。」
「わかります! でも風様では祭壇作る事がないので、とても珍しいです。
リリスとお呼び下さい、ララ様。お手伝いさせて下さいね。
あっ! 私の姿は大丈夫でしょうか? 気持ち悪いなら、布をかぶります! 」
「あはは! 可愛い方、魔導師に言う言葉じゃありません。
私だってほら、顔にヘビの入れ墨あるでしょう?
これも人によっては嫌われます。
大丈夫ですよ、人はあなたが思った以上に寛容です。」
「うふふ、良かった! 」
にっこり微笑むリリスに、つい可愛いと言ってしまう。
麻袋から道具を出しながら、ララはちょっと嬉しくてキュッと肩をすぼめた。
「わあ、沢山使うのですね。燭台、覆いを付けるのですか? 変わってますね。」
「火が消えないように、工夫です。これをここにはめてかぶせます。ロウソクは短いものを。」
彼は早速、ララが並べる香炉やロウソク、何か不思議な美しい鉱石の位置決めに、ワクワクと身を乗り出した。
「リリス様、ロウソクに火打ち石で火を付けて下さい。
火が付いたら、香炉にこれとこれを、左右交互に入れて火を願います。
術まではフタをして、穴が空いているので消えませんから。」
「香木は何ですか? 」
「右が精霊の国にある雷玉の実の種をすりつぶしたもの、左が聖域に生えている水蜜の木の根を削ったものです。雷玉の方はかなり強い香りなのであまり吸われませんように。」
「わかりました。それにしても、凄いのですね。至る所の材料を集めておられる。尊敬します。」
ゴウカが後ろから火打ち石を使ってリリスが持つ燭台のロウソクに火を付ける。
まだ覆いを付けていないのになぜか、風が吹いても火が揺るがない。
クスクス笑いながら、リリスが香炉に火を入れて行った。
「さすが火の神官様です。」
「ありがとうございます。お役に立てて何よりでございます。」
リリスは甘い水蜜の香りをかぎながら、火にも祭壇がある事を思い出す。
黄泉で先々代のヴァルケンが、たった一度地面に絵を描いて、その後正解するまで回答してはメチャクチャ怒られたのを思い出す。
ぶるっと、身体が一瞬震えた。
「え、えーと、これは? 何が入っているのですか? この壺、中を見ても構いませんか? 」
リリスが少女が並べる品に強い興味を示して、ひときわ美しい布に入った壺を手に取り横からひっそり聞いてくる。
弟子の少女は嫌気がさす事も無く、リリスの問いに答えていた。
「こぼさないようにどうぞ。それは砂金と水龍の角の粉を混ぜたものです。
この中でも一番高価なものです。」
「あ、なるほど、道を作る柱と見ました。」
「正解です! さすが風殿の一番弟子。」
「あれ? 私をご存じなのですか? 」
「有名ですよ、赤い髪の闘う魔導師殿。
あなたが赤い髪で無ければ、弟子になりたい者は星の数ほどいる事でしょう。
だが、あなたはその髪の色だからこそ、強くなるしかなかったのだと私は思います。」
リリスが驚いて、少女の顔を見る。
自分の事をわかってくれる人の存在は、もしかしたら自分が知らないだけかと思った。
「リリ、邪魔になるから離れよ。」
イネスが親しそうな2人の様子に、ちょっと妬ける。
だが、少女は顔も上げずに作業をしながらきっぱりと言い放った。
「いえ! きっちり必要なものばかり聞かれるので、忘れが無いか再確認となるので助かります。」
少女は男のようなサバサバした答え方で、イネスはあきらめると身を起こしてそっぽを向く。
そして、まるで取られまいとするかのように、ぐっとリリスの上着の裾を掴んだ。
「よしっ! 師よ、準備できました! 」
シャラナが、水の流れと方角を星の位置から推察していると、弟子に声をかけられサッと歩いてくる。
彼女の準備した麻布の上の配置を見ると、踊るようにパンパンと顔の横で手を叩いた。
「上出来よ、ララ! さすがわが弟子。
さて! 道を開いて、精霊界に行けるのは3人まで! どなた? 」
「シャラナ様、向こうでのお時間はいかほど頂けるのでしょうか? 」
リリスが彼女に問うと、シャラナが帽子を取ってマジマジと顔をのぞき込む。
んー、やっぱり可愛い子。
地の巫子とはまた違った、可愛らしくて美しい子だわ。
「香炉に香を足して管理すれば、道は開きやすいわ。
ここにはララが残って、香を管理します。
精霊界とこちらとは時間の流れが違うの。この香をたいている限り、場が紐付けられて一時的に時間のズレが抑えられる。
向こうには、私と巫子殿お二人、それであと…… 」
「「 私が 」」
サファイアと、グレンが手を上げた。
イネスとリリスが顔を合わせて目を丸くする。
二人でプッと笑うと、イネスが一歩引いてリリスに頭を下げた。
「今宵は火の巫子殿の側近にお譲り致そう。
貴方の手並みを拝見する。」
「それは…… 私にどこまで出来るのかわかりませんが…… 」
「サポートはするよ、リリ。俺はその為に行く。」
リリスがうなずいて目を閉じ、唇に指の背を当てて考える。
心を落ち着け、息を整える。
頭を整理する。
精霊の国に行ってやる事は……
まずは、毒を吐く少年をどうするか、だ。
その、毒の原因が何か、私にわかるだろうか?
それが、地下にいた悪霊が原因としたら……
リリスがパチリと目を開けた。
「こちらは…… 祭壇を作られるのですか?」
「ええ、さすがよくおわかりですね。えっと、リリス様。
祭壇を作るということは、水の精霊に礼を尽くし、こちら側に精霊の国の延長した世界を作る事です。
これが無いとあるでは、術の成功率が格段に変わります。」
「わかります! でも風様では祭壇作る事がないので、とても珍しいです。
リリスとお呼び下さい、ララ様。お手伝いさせて下さいね。
あっ! 私の姿は大丈夫でしょうか? 気持ち悪いなら、布をかぶります! 」
「あはは! 可愛い方、魔導師に言う言葉じゃありません。
私だってほら、顔にヘビの入れ墨あるでしょう?
これも人によっては嫌われます。
大丈夫ですよ、人はあなたが思った以上に寛容です。」
「うふふ、良かった! 」
にっこり微笑むリリスに、つい可愛いと言ってしまう。
麻袋から道具を出しながら、ララはちょっと嬉しくてキュッと肩をすぼめた。
「わあ、沢山使うのですね。燭台、覆いを付けるのですか? 変わってますね。」
「火が消えないように、工夫です。これをここにはめてかぶせます。ロウソクは短いものを。」
彼は早速、ララが並べる香炉やロウソク、何か不思議な美しい鉱石の位置決めに、ワクワクと身を乗り出した。
「リリス様、ロウソクに火打ち石で火を付けて下さい。
火が付いたら、香炉にこれとこれを、左右交互に入れて火を願います。
術まではフタをして、穴が空いているので消えませんから。」
「香木は何ですか? 」
「右が精霊の国にある雷玉の実の種をすりつぶしたもの、左が聖域に生えている水蜜の木の根を削ったものです。雷玉の方はかなり強い香りなのであまり吸われませんように。」
「わかりました。それにしても、凄いのですね。至る所の材料を集めておられる。尊敬します。」
ゴウカが後ろから火打ち石を使ってリリスが持つ燭台のロウソクに火を付ける。
まだ覆いを付けていないのになぜか、風が吹いても火が揺るがない。
クスクス笑いながら、リリスが香炉に火を入れて行った。
「さすが火の神官様です。」
「ありがとうございます。お役に立てて何よりでございます。」
リリスは甘い水蜜の香りをかぎながら、火にも祭壇がある事を思い出す。
黄泉で先々代のヴァルケンが、たった一度地面に絵を描いて、その後正解するまで回答してはメチャクチャ怒られたのを思い出す。
ぶるっと、身体が一瞬震えた。
「え、えーと、これは? 何が入っているのですか? この壺、中を見ても構いませんか? 」
リリスが少女が並べる品に強い興味を示して、ひときわ美しい布に入った壺を手に取り横からひっそり聞いてくる。
弟子の少女は嫌気がさす事も無く、リリスの問いに答えていた。
「こぼさないようにどうぞ。それは砂金と水龍の角の粉を混ぜたものです。
この中でも一番高価なものです。」
「あ、なるほど、道を作る柱と見ました。」
「正解です! さすが風殿の一番弟子。」
「あれ? 私をご存じなのですか? 」
「有名ですよ、赤い髪の闘う魔導師殿。
あなたが赤い髪で無ければ、弟子になりたい者は星の数ほどいる事でしょう。
だが、あなたはその髪の色だからこそ、強くなるしかなかったのだと私は思います。」
リリスが驚いて、少女の顔を見る。
自分の事をわかってくれる人の存在は、もしかしたら自分が知らないだけかと思った。
「リリ、邪魔になるから離れよ。」
イネスが親しそうな2人の様子に、ちょっと妬ける。
だが、少女は顔も上げずに作業をしながらきっぱりと言い放った。
「いえ! きっちり必要なものばかり聞かれるので、忘れが無いか再確認となるので助かります。」
少女は男のようなサバサバした答え方で、イネスはあきらめると身を起こしてそっぽを向く。
そして、まるで取られまいとするかのように、ぐっとリリスの上着の裾を掴んだ。
「よしっ! 師よ、準備できました! 」
シャラナが、水の流れと方角を星の位置から推察していると、弟子に声をかけられサッと歩いてくる。
彼女の準備した麻布の上の配置を見ると、踊るようにパンパンと顔の横で手を叩いた。
「上出来よ、ララ! さすがわが弟子。
さて! 道を開いて、精霊界に行けるのは3人まで! どなた? 」
「シャラナ様、向こうでのお時間はいかほど頂けるのでしょうか? 」
リリスが彼女に問うと、シャラナが帽子を取ってマジマジと顔をのぞき込む。
んー、やっぱり可愛い子。
地の巫子とはまた違った、可愛らしくて美しい子だわ。
「香炉に香を足して管理すれば、道は開きやすいわ。
ここにはララが残って、香を管理します。
精霊界とこちらとは時間の流れが違うの。この香をたいている限り、場が紐付けられて一時的に時間のズレが抑えられる。
向こうには、私と巫子殿お二人、それであと…… 」
「「 私が 」」
サファイアと、グレンが手を上げた。
イネスとリリスが顔を合わせて目を丸くする。
二人でプッと笑うと、イネスが一歩引いてリリスに頭を下げた。
「今宵は火の巫子殿の側近にお譲り致そう。
貴方の手並みを拝見する。」
「それは…… 私にどこまで出来るのかわかりませんが…… 」
「サポートはするよ、リリ。俺はその為に行く。」
リリスがうなずいて目を閉じ、唇に指の背を当てて考える。
心を落ち着け、息を整える。
頭を整理する。
精霊の国に行ってやる事は……
まずは、毒を吐く少年をどうするか、だ。
その、毒の原因が何か、私にわかるだろうか?
それが、地下にいた悪霊が原因としたら……
リリスがパチリと目を開けた。
0
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
買われた彼を解放しろと言うのなら返品します【完】
綾崎オトイ
恋愛
彼を解放してあげてください!お金で縛り付けるなんて最低です!
そう、いきなり目の前の少女に叫ばれたルーナ。
婚約者がこの婚約に不満を感じているのは知っていた。
ルーナにはお金はあるが、婚約者への愛は無い。
その名前だけで黄金と同価値と言われるほどのルーナの家との繋がりを切ってでも愛を選びたいと言うのなら、別に構わなかった。
彼をお金で買ったというのは、まあ事実と言えるだろう。だからルーナは買ってあげた婚約者を返品することにした。
※勢いだけでざまぁが書きたかっただけの話
ざまぁ要素薄め、恋愛要素も薄め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる