赤い髪のリリス 戦いの風

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26、水の国の悪霊憑き

第295話 水の精霊の国へ

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リリスがくるりと一行を見回し、そしてゴウカを指さす。

「ゴウカ様、どうかご同行願います。」

「は、承知致しました」

頭を下げるゴウカの横から、グレンが胸に手を当て前に出た。納得できないのだろう。

「どうか、私をお連れ下さい。いざとなったら戦えますし、飛ぶ事もで来ます。」

自分が巫子から離れる事が、何より恐ろしい。
また巫子を失ってしまわないだろうか、ゴウカを一人で闘わせる事になってしまわないだろうかと、グレンは唇を噛んだ。

「いいえ、精霊界にいるのは魔物に毒された少年なのです。
果たして、その魔物の意思が精霊界まで届くでしょうか?
私は届いていないと思います。
それよりも、魔物の毒が水をけがさないかが心配です。
ならば、封じの術の使い手のゴウカ様が適任でございましょう。

それに、こちらの地の巫子様がご同行下さいます。」

「しかし…… 」

グレンの肩を、ミランが叩く。

「あなたが心配なのはわかりますが、地の巫子様のお付きの方も同じなのです。
さあ、我らは地上で出来る事を致しましょう。」

「地上で出来る事など…… 」

「あら、きっとあるわよ? 」

シャラナが、グレンに耳打ちする。
コッソリと、リリスに聞こえないように。
そして、ニッと笑って離れた。

「ね? だからどうか、地上でこの香炉を、ララをお守り下さいな。」

「うむ、わかった。承知した。では、我が巫子よ、無事を祈ります。」

リリスが、シャラナとグレンの顔を見る。
グレンに、そうっと耳打ちした。

「何を仰ったのですか? 私にも教えて下さいませんか? 」

「あら、ダメダメ、秘密よ。
ね? さあ、あなたは自分のやる事だけを考えなさいな。
集中して! 何が待っているかわからないのよ! 」

シャラナが、ミュー馬から杖を取ってトントンと地を突く。

「ララ、後は任せた! 」

「はっ! どうぞ、ご無事で! 」

「私を誰だと思って?! ご無事で当たり前よ!

さっ! 皆様、参りますわよ!
ララ、香炉の蓋を取りなさい、蛍石は並べたわね。
私には壺を。」

あの、砂金と水龍の角の粉の入った壺を、ララが蓋を取ってサッとシャラナに渡す。

「皆様よろしくて? 向こうへ行ったら守る事。
水を飲んではならない、食べ物を食べてはならない。
無意識に、付いたものを舐めるくらいはいいわ、要は意識の問題よ。」

「食べるとどうなるのですか? 」

シャラナがリリスに顔を近づけ、魔女のようにニイッと笑った。

「石になるって言われてるわ。ふふ、石になる時はカッコ良くポーズ付けたいわね。」

くいっと、腰を決めて杖を天に掲げてポーズを付けて見せる。

「なるほど、石に。それは不便ですね。」

リリスが微妙な顔をすると、シャラナが思わぬ返事に笑い飛ばす。
そしてララが敷物の上に作った祭壇に向かった。

壺の中を手に取り、祭壇の中央から川にサラサラと線を引くようにまき、そして手にある残りを川面にパッとまいた。
壺を傍らに置き、その砂金の線の端を祭壇の前でとんと杖で突く。

ララがそのタイミングで、香炉の蓋を取って行く。
いつの間にか風が止んで、辺りは香の香りが立ちこめ、ふうっとシャラナがその煙を息で吹いた。
煙が渦巻き、水面へとその渦が水紋のように続いて行く。

「行きますわ」

シャラナがうなずき、杖を前に差し出して目を閉じる。
大きく深呼吸して息を整え、目を見開いた。

「我が友、水の精霊よ聞け。

我が前に道は無し、我が後方に人の世あり。
水の王シールーンよ、我は汝の統べる国への道を乞う。
汝、契約の元に我が前に道を作れ。

イル、ギル、キル、ザ・レーン!

我が名は水の魔導師シャラナ、我が名の下に、開け! 精霊の道! 」

シャラナが杖を小川に差し出し、その先端で水面を叩く。

ザザザザザザザッ!!

水面の波紋が流れを無視して大きく広がり、それは浅い小さな小川のはずなのに、大きく大きく波紋は小川の大きさを無視して広がり、そしてそこには水で出来た地下へと下る階段が現れた。

「さ! 行きましょう。
我らが行った後この階段は一旦閉じるけど、ちゃんと戻ってくるから心配いらないわ。
騎士の方々! その祭壇を守ってね。」

「承知した、心配ご無用。」

一番そばにいたガーラントが大きくうなずき、腰の剣に手を置く。

「では! 巫子殿、無事を祈る! 」

「はい! 」

リリスが騎士たち、皆に手を上げ、グレンににっこり笑う。
シャラナが先に水の階段に足を進め、イネスがリリスの手を引いて後に続く。
サファイアが彼に一礼し、横でグレンも頭を下げた。

「お待ちしております。我が巫子。」

「はい! 行ってきます! 」

ゴウカがグレンにうなずき、リリスの後に続く。
彼らの姿が階段に消えると、その穴は小川の水の流れにかき消され、もとの川へと戻っていった。
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