赤い髪のリリス 戦いの風

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4、宰相の息子

27、夢見のお告げ

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結局その日、アイは日が傾くまでレスラカーンの元でゴロゴロして過ごし、惜しまれながら彼の部屋をあとにした。

「キアンやめて、彼の部屋に行こうかニャ」

でも、そうすると現代に帰るときが彼を悲しませてしまう。

「悩んじゃうニャー」

ため息付きながら、キアンの部屋を目指す。

「ン?あれは……?」

すると途中、物陰からそうっと小さな女の子が忍び足で庭をうろついていた。
背には大きな布に何かをくるみ、それをたすきに身体に縛り付けている。
何ともこっけいな泥棒のようだ。

あれはリリスと一緒にいたフェリア。
見回りの兵が来るたびに、コソコソ隠れてやり過ごしていた。

「ここを出るつもりかニャ?そりゃあ無理だニャア」

何となく高いところから高みの見物。
やがてノシノシと大きな男がやってきて、彼女の服を掴み捕まえた。

「お父ちゃま!」

「まったく、何度言えばわかるのだ。これでは家に帰すこともできん。」

「わしもリーリのとこに行く!
リーリはきっと危ない目におうておる、わしがおらねばリーリはいっぱい力を使えぬ!
なんでお父ちゃまはわからぬのだ!」

お父ちゃま?フェリアの父親と言うことは、あのザレル?

ザレルはまた回ってきた兵の目を避け、廊下の縁までズルズル引っ張って来てフェリアの服を離した。
フェリアは泣き声で、足をバタバタさせ駄々をこねている。
ザレルもすっかり参った様子で、大きなため息をついた。

「リリスはお前がおらんでも立派にやっている。
お前の力は確かに、精霊の力を増幅させリリスの助けになる物だ。しかしそれは微々たる物……わずかな物だ。
お前は自分の力を過信している。」

「なんでじゃ、なんでお父ちゃまは……えうっく、ひっく……お父ちゃまの言うこと、良くわからぬ。」

「はあ~」



アイがザレルの抜けた顔に吹き出す。
あの狂獣ザレルが、ワガママ娘に振り回されるなんて……面白い。

ザレルは大きく首を振り、彼女を抱っこして歩き始めた。
結局部屋に帰って、良く言い聞かせるしかないのだろう。
アイは大きくあくびをして、またキアンの部屋へと向かっていった。



キアンの部屋には、どうも来客中のようだ。
兵を横目に中へはいると、ローブを着た偉そうな老人が部下を連れてキアンを説教しているようだった。
その部下も杖を持っているところを見ると、まるで魔法使いだ。
リリスと同じ、魔導師だろうか。城には専属がいるのかなと部屋の中を見回した。

そう言えば、リリスは杖を持っていない。
今度会った時に聞いてみよう。

「……が迫っております。どうかこれまで以上にお心を引き締められますよう。」

「それは、父上の崩御が近いと言うことか?」

「いいえ、単にそれが近いのか、ご存命中に王の座をお譲りになられるのかわかりません。
先々代の王は病に倒れられたのを機に、先代に王の座をお譲りになり離宮にちっ居されたと聞きます。
その時も激しい隣国との争いの中、王座の空白を避けられたとか。前例があるのです。」

「わかっている……」

「くれぐれもこの事は他言無用に願います。」

「わかった、これは僕の心に留め置くとする。もう良い、下がれ。」

暗い顔でうなずくキアンを渋い顔で見ながら、老人が部屋を出る。
アイがキアンの膝に乗ると、キアンが大きくため息をついた。

「あの爺さん誰?」

「ああ、あれは夢見の魔導師だ。これから起こることの夢を見ては、それを伝えに来る。
戴冠の夢を見たそうだ。でもそれが僕だったかはわからないと。
ちっとも当てにならない、ただ心を乱しに来る厄介者さ。」

「王子、塔の長に何というお言葉を。」

ゼブラが眉をひそめ叱る。

「フン、余計な世話なのだよ。」

キアンは首を振り、舌を打ってそっぽを向いた。
何となく、キアンには以前のような自信が見られない。不安ばかりが見て取れる。
なんともわかりやすい奴だ。

「戴冠式ニャー……キニャンは王様になりたくニャいの?」

「……いや…………そうだな……そうなのかな……」

それが近づくには、まだ早いのだろう。
彼はまだ15才、国を背負うには未熟すぎる。

「お父さん、ビョーキ?」

「ああ、父も母も今年の冬からずっとお加減が悪い。
一体何が悪いのか原因がわからない。だから余計縁起の悪い物を避けたいんだろう。
リリスにも風当たりが厳しくて気の毒に思う。
本当は、ザレルもリリスを呼び寄せたくはなかったと思う。
僕がしっかりしていれば、あんな不穏なうわさなど払拭できたんだ。」

「ふうん」

ヨーコがぺろぺろと身繕いを始める。

「キニャンもわかってるじゃん。」

「僕だって成長してる、馬鹿にするなよ。」

「じゃあ、がんばらないとね。王子様。」

「言われなくともがんばっている。」

「ニャは」

アイがシッポでぺしりと彼の腹を叩き、キアンがアイの頭を撫でる。

「レスラカーンより落ちるけど、まあキニャンも格好良くなったニャ。」

「レスラ?お前レスラの所に行っていたのか。あいつは猫好きだからな、遊んでやってくれ。」

それは彼に言う言葉で、反対なんだろうけど。
キアンはレスラカーンをまるで老人のような、何も出来ない子供のような風に見ているフシがある。

「彼はもっと、何でもやりたいんだと思うけどニャ。」

一緒にいるとわかる、彼は胸に秘めた活気のある若々しさを必死で押さえて、自分で水を抜いた草になろうとしている。
目が見えないだけなのに、この世界ではそれで終わりなんだろうか。
アイは夜になると、またレスラカーンが気になって部屋を抜け出し、城内の散歩に出かけた。
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