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10、隣国からの使者
76、城内、喧噪
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青い空の下、回りの喧噪をよそに白いおかっぱ頭の少年の姿が城から庭へと歩いて行く。
その姿をちらと見た者は、普通の人よりも飛び抜けてその白い肌と髪に目を奪われながら、ユリの刺繍が付いた服を見るまでも無く恭しく手を合わせた。
「ふあああ……」
イネスが昼食も済んで、庭で散策しながら大きなあくびをして空を仰ぐ。
「空はキレイなのに、地面にいる者の騒々しいものよ。」
屋敷の一角に、使者を迎える準備も慌ただしく、兵達も話し合いや伝達にと走り回っている。
普段、客人の多いこの城でも魔物におびえる今、またその魔物を送り込んでいるのではないかと疑惑のある隣国から、使者が来るとあって緊張感が更に増しピリピリしていた。
何が戦の引き金になるか知れない。
何事もなく帰って貰わねばと、気が重いのだろう。
不安にため息をついている若い兵もいて、隊長に尻を叩かれていた。
「何とも騒々しい。
相手も戦にはしたく無かろうて……無駄に怖がっても仕方なかろう。」
つぶやいてため息をつく。
「イネス様」
彼のそば付きサファイアが、突然横から拳で突きを出す。
イネスが手の平でそれを受け止めジロリと睨んだ。
「何をする、無礼者。」
「イネス様が、少々緩んでいらっしゃるかと思いまして。このような所にいらしてよろしいのですか?」
「俺は百合の戦士だ馬鹿者。あまりふざけたことをすると手打ちにするぞ。
他は忙しいだろうが、俺は特にやることも無し。
使者が来たら兄様の所へ行けばいいだろう?」
と、言ってまたあくびが出る。
「イネス」
聞き覚えのある、きつい声に思わずあくびを飲み込んだ。
「うっ、こ……れは兄様。なにか?」
「先ほどからあくびが3回、どうもたるんでおるな。」
数えたのか……兄様も陰険
「いえ、これは緊張から来る物で。
あれ?兄様、正装をなさったのでございますか?」
まだ軽装でうろうろしていたイネスが、兄巫子セレスの姿に舌を出した。
地の巫子の服は、白装束が基本だ。
軽装の動きやすい服と違い、正装となると銀糸の派手な刺繍の入った長いローブやドレスのようなシフォンの上下。
ドレスは丈の長いチュニックをベルトで止め、下は長いシフォンの巻きスカート。
しかし、ちゃんと下履きもある。
それに装飾品も多く、飾り剣を片側一本。
装飾や剣の数は巫子によって変わり、イネスは剣舞をすることがあるので両側に2本となる。
軽装を長くしていると、この重ね着の正装は非常に動きにくく感じてしまう。
イネスは嫌って、滅多に正装しない。
「私も正装した方がいいんでしょうか?」
「当たり前だ。公が礼を尽くすと仰った以上、我らも共に礼を尽くすのが定石。
公に恥をかかせるな、さっさと着替えて来るように。」
「は、はい!」
慌てて駆け出す彼に、サファイアがクスクス笑いながらついて行く。
「お前が確認しないから、怒られたじゃないか!」
半泣きでイネスが怒って叫んだ。
「申し訳ありません。」
だから、申し上げたじゃないですか。
サファイアはため息混じりでつぶやきながら、まだまだ子供だなと主の後ろ姿を見ながら苦笑した。
バタバタと着替え、まだ使者が付いてないと聞いて間に合ったと息をつく。
ドアの外もバタバタ忙しそうで落ち着かない。
暇をもてあますイネスが、見るからにひ弱な飾り剣を抜いて眉をひそめた。
「飾り剣をやめ、本剣にする。神事じゃないけどいいだろう?」
「頭にカッカと来やすいあなた様が、本剣で何をなさいます。
神事もないのに本剣を携えて、巫子が人を切っては人心を失います。
飾り剣で十分でございましょう。」
「ちっ」
顔をそらし、小さく舌打ちした。
別に自分が騒ぎを起こす気はない。
飾り剣はやたら派手なだけで、格好悪くて嫌いなだけだ。
先日木の下で剣舞したときはちゃんと本剣使ったのに、神事を離れるときは飾り剣とか神殿の決まり事には辟易する。
チュッチチチ
声に振り向くと、少し開けた窓から、小鳥がのぞき込んで笑うように小さく鳴いていた。
「あれ?こいつリリにベッタリくっついてる鳥だ。」
目があって、飛び立とうとする鳥にイネスが素早く手元の服を投げる。
ピイーーーーッ
バタバタ、バタバタ
鳥は服の中で暴れながら、床に落ちてしまった。
イネスはひどく面白そうに、窓を閉めて鳥を捕まえる。
両足を片手で掴み、目の前にぶら下げてニイッと笑った。
「お前、ヴァシュラム様の匂いがプンプンしてるぞ。
一体誰だ?しゃべってみろ。」
顔の前でブンブン揺らす。
鳥に姿を変えているヨーコは、ひどく後悔しながら目を回した。
ピッピピッ!ピピッ
「やめてよ馬鹿っ!チュッ!」
「ほら、正体現したぞ。」
サファイアに差し出してみせる。
サファイアは脱いだ服を片付けながら、チラと鳥のヨーコを見た。
「何か訳があってリリス殿に付いていらっしゃるのでしょう。
別に、よろしいではありませんか。離して差し上げたらいかがです?」
冷めた言い方に、イネスがムッとする。
せっかく面白そうなのに、大人過ぎて面白くない。
「フン、こいつ女だぞ。考えてみろ、リリの着替えから風呂やトイレまでついて行ってるんだ。問題じゃないか。」
「そんなところまで付いていかないわよ!失礼ね!」
ヨーコがバタバタ羽をさせてイネスの指にかみつく。
「いたっ!この無礼者、焼いて食べるぞ!」
手の平で掴んで、ギュウッと締め上げる。
ヨーコはたまらず悲鳴を上げた。
「あんた巫子でしょ!なんて乱暴者なの?離してよ!」
「ふん」
手を離すと、慌てて飛び立ちサファイアの肩に留まる。
イネスがまたムッとして、ダンと足を踏みならした。
その姿をちらと見た者は、普通の人よりも飛び抜けてその白い肌と髪に目を奪われながら、ユリの刺繍が付いた服を見るまでも無く恭しく手を合わせた。
「ふあああ……」
イネスが昼食も済んで、庭で散策しながら大きなあくびをして空を仰ぐ。
「空はキレイなのに、地面にいる者の騒々しいものよ。」
屋敷の一角に、使者を迎える準備も慌ただしく、兵達も話し合いや伝達にと走り回っている。
普段、客人の多いこの城でも魔物におびえる今、またその魔物を送り込んでいるのではないかと疑惑のある隣国から、使者が来るとあって緊張感が更に増しピリピリしていた。
何が戦の引き金になるか知れない。
何事もなく帰って貰わねばと、気が重いのだろう。
不安にため息をついている若い兵もいて、隊長に尻を叩かれていた。
「何とも騒々しい。
相手も戦にはしたく無かろうて……無駄に怖がっても仕方なかろう。」
つぶやいてため息をつく。
「イネス様」
彼のそば付きサファイアが、突然横から拳で突きを出す。
イネスが手の平でそれを受け止めジロリと睨んだ。
「何をする、無礼者。」
「イネス様が、少々緩んでいらっしゃるかと思いまして。このような所にいらしてよろしいのですか?」
「俺は百合の戦士だ馬鹿者。あまりふざけたことをすると手打ちにするぞ。
他は忙しいだろうが、俺は特にやることも無し。
使者が来たら兄様の所へ行けばいいだろう?」
と、言ってまたあくびが出る。
「イネス」
聞き覚えのある、きつい声に思わずあくびを飲み込んだ。
「うっ、こ……れは兄様。なにか?」
「先ほどからあくびが3回、どうもたるんでおるな。」
数えたのか……兄様も陰険
「いえ、これは緊張から来る物で。
あれ?兄様、正装をなさったのでございますか?」
まだ軽装でうろうろしていたイネスが、兄巫子セレスの姿に舌を出した。
地の巫子の服は、白装束が基本だ。
軽装の動きやすい服と違い、正装となると銀糸の派手な刺繍の入った長いローブやドレスのようなシフォンの上下。
ドレスは丈の長いチュニックをベルトで止め、下は長いシフォンの巻きスカート。
しかし、ちゃんと下履きもある。
それに装飾品も多く、飾り剣を片側一本。
装飾や剣の数は巫子によって変わり、イネスは剣舞をすることがあるので両側に2本となる。
軽装を長くしていると、この重ね着の正装は非常に動きにくく感じてしまう。
イネスは嫌って、滅多に正装しない。
「私も正装した方がいいんでしょうか?」
「当たり前だ。公が礼を尽くすと仰った以上、我らも共に礼を尽くすのが定石。
公に恥をかかせるな、さっさと着替えて来るように。」
「は、はい!」
慌てて駆け出す彼に、サファイアがクスクス笑いながらついて行く。
「お前が確認しないから、怒られたじゃないか!」
半泣きでイネスが怒って叫んだ。
「申し訳ありません。」
だから、申し上げたじゃないですか。
サファイアはため息混じりでつぶやきながら、まだまだ子供だなと主の後ろ姿を見ながら苦笑した。
バタバタと着替え、まだ使者が付いてないと聞いて間に合ったと息をつく。
ドアの外もバタバタ忙しそうで落ち着かない。
暇をもてあますイネスが、見るからにひ弱な飾り剣を抜いて眉をひそめた。
「飾り剣をやめ、本剣にする。神事じゃないけどいいだろう?」
「頭にカッカと来やすいあなた様が、本剣で何をなさいます。
神事もないのに本剣を携えて、巫子が人を切っては人心を失います。
飾り剣で十分でございましょう。」
「ちっ」
顔をそらし、小さく舌打ちした。
別に自分が騒ぎを起こす気はない。
飾り剣はやたら派手なだけで、格好悪くて嫌いなだけだ。
先日木の下で剣舞したときはちゃんと本剣使ったのに、神事を離れるときは飾り剣とか神殿の決まり事には辟易する。
チュッチチチ
声に振り向くと、少し開けた窓から、小鳥がのぞき込んで笑うように小さく鳴いていた。
「あれ?こいつリリにベッタリくっついてる鳥だ。」
目があって、飛び立とうとする鳥にイネスが素早く手元の服を投げる。
ピイーーーーッ
バタバタ、バタバタ
鳥は服の中で暴れながら、床に落ちてしまった。
イネスはひどく面白そうに、窓を閉めて鳥を捕まえる。
両足を片手で掴み、目の前にぶら下げてニイッと笑った。
「お前、ヴァシュラム様の匂いがプンプンしてるぞ。
一体誰だ?しゃべってみろ。」
顔の前でブンブン揺らす。
鳥に姿を変えているヨーコは、ひどく後悔しながら目を回した。
ピッピピッ!ピピッ
「やめてよ馬鹿っ!チュッ!」
「ほら、正体現したぞ。」
サファイアに差し出してみせる。
サファイアは脱いだ服を片付けながら、チラと鳥のヨーコを見た。
「何か訳があってリリス殿に付いていらっしゃるのでしょう。
別に、よろしいではありませんか。離して差し上げたらいかがです?」
冷めた言い方に、イネスがムッとする。
せっかく面白そうなのに、大人過ぎて面白くない。
「フン、こいつ女だぞ。考えてみろ、リリの着替えから風呂やトイレまでついて行ってるんだ。問題じゃないか。」
「そんなところまで付いていかないわよ!失礼ね!」
ヨーコがバタバタ羽をさせてイネスの指にかみつく。
「いたっ!この無礼者、焼いて食べるぞ!」
手の平で掴んで、ギュウッと締め上げる。
ヨーコはたまらず悲鳴を上げた。
「あんた巫子でしょ!なんて乱暴者なの?離してよ!」
「ふん」
手を離すと、慌てて飛び立ちサファイアの肩に留まる。
イネスがまたムッとして、ダンと足を踏みならした。
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