9 / 56
第9話 ドーナツ食べて、ポストアタッカーになろうよ!
しおりを挟む
「やっほーお待たせ~、中へどうぞ~」
「あー、あんた確か、追いかけっこしてた」
「あれ、遊んでたんじゃ無いから!」
ヒクヒク笑って中から出てきたその女性は、町で強盗追いかけていたあの郵便局の彼女だ。
まさに馬のしっぽのような、見事な赤毛のポニーテール。
局員の制服ではなく、ウエスタンスタイルの私服に見覚えのある腕章。
部屋に入るとその奥の扉を開き、その先にある応接室へ通された。
「どうぞどうぞお座りになってくださ~い。
先日と合わせて、お世話になりました-。
あっ、甘いのはお好き?ちょうど今朝早起きして山ほどドーナツ作ったのよ。
持ってきたの食べます?
だーいじょうぶよ~毒なんか入ってないし。これは御礼。」
「えーと、で、用は何?」
「まあまあまあまあまあ、お座りください、お礼よお礼!」
「なんか~下心が見えるんだけど」
「ホホホホ!あらいやだ。
私の名前はキャミー・ウイスコンよ、サトミ・ブラッドリー。
まあ座って、コーヒー入れるから。あ、コーヒー大丈夫?」
キャミーはカードと金を一緒にテーブルの上に置く。
なんかマズい予感がするので、どうした物か考えたけど、まあ話だけ聞こうか。
つか、ドーナツだろ、ドーナツ。食わなきゃきっと後悔する!
「んー、砂糖とミルクいっぱいある?
仕方ねえ、ワイロにドーナツ食ってやるから勝手に話せ」
「あら、話がわかるじゃない?さ、お好きなだけどうぞ~
お勧めはココア効かせたショコラドーナツよ」
目の前にドサッと置かれたドーナツに、ドッと口の中によだれがあふれる。
俺はまだ子供なんだなあってこう言うとき思うんだけど、何しろ軍でのお菓子不足は深刻で、俺は常に甘みは砂糖をなめるしか無かった。
で、お勧めのショコラドーナッツを頬張る。
サクッとして、あああああ~~~~う、ま~~~い~~~
んああ~~~久しぶりのお菓子だあああああ!!
バクバク食って、もう一個食う。
こう言うの食べるとお母ちゃん思い出すなーー。
今ごろ何してるんだよ、お母ちゃん。
コーヒーのいい香りが漂ってきた。
彼女は丁寧に豆からコーヒーを入れて横に差し出す。
おおおお、すげえ、インスタントじゃ無いじゃん!
ちらと彼女を見ると、ニッコリ満面の笑顔で向かいに座る。
「コーヒー好きなの?」
「うん、白いコーヒーが好き」
「白い?コーヒー??」
カップギリギリまでポーション5個入れて、あふれそうになったのですする。
またポーション3個入れたし、砂糖10さじ入れた。
「え?えええ~、入れすぎじゃない?」
「これが俺のコーヒーなんだよ」
ん~、ポーションは不味いけど仕方ない、我慢する。
すっかり白くなったコーヒーを満足そうにかき回し、一口飲んだ。
「んー、美味~い」
彼女はなんだか呆気にとられてそれを見ている。
「白いコーヒーねえ……
ね、軍にいたの?今、お仕事の当てはあるの?
ね、ね、郵便局で働いてみない?」
身を乗り出して、なんだかキラキラした眼でサトミを見つめる
なんだ、勧誘か……と、マジでいやな顔してドーナツをもう一個と手を伸ばした。
「俺、帰ってきたばっかだし、金はあるし、しばらくのんびりしたいんだよ。
だから全部ノー。」
確かに、サトミの通帳は年齢からは考えられない、生涯遊んでおつりが来るほどの数字の金額が入っている。
それだけ、軍でもヤバイ位置にいたのかもしれない。
まあ、それはそれ、今はとにかく……
「うーんでもさ、まだ15?16?でしょ?その年でリタイヤは早くない?
ね?考えてみてよ!
郵便をお届けしたときのお客様の嬉しそうな顔、ありがとうなんて言われたらあなたの幸せも倍増!
今も郵便物を待ってる人のために、危険を乗り越えお届けする喜び!
さあ、あなたもこの喜び体験しませんか?!」
「ノー、サンキュー。じゃ、ごちそうさま。」
サトミは激甘のコーヒー飲み干して、金とカードを取ってジャケットの内ポケットに入れると部屋を出ようとする。
ノブに手をかけた時、キャミーが声を上げた。
「まあまあまあ!返事は急いでるけど急がなくてもいいから!
ね、あなた激強いでしょ?そう言う人、なかなかシラフでいないのよ。
帰ってくると、だいたいクスリやったり心に病気抱えちゃってるわけ。
でもあなた、自然体じゃない?
自覚無いだろうけど、そう言う人ってめっちゃ貴重なのよ!
ポストアタッカーの扱う郵便は貴重品が多いの。
そして配達業務は不特定多数が相手。
配達は単独行動、自分で危険は回避するしか無い、その上ばったり誰に会うかわからない。
怖いってみんな言うけど、そりゃそうよ。
気持ちはわかる。物騒なところで貴重品持って届けるのって、タダでさえ怖いもの。
ポストアタッカー、今年最悪よ、二人死んでるの。人手不足が深刻なの。
私、窓口要員なのに、配達に回るしか無い。
でも、舐められちゃう。
ね!お願い!お願いします!ポストアタッカーになって!」
振り返ると、キャミーは必死でサトミに手を合わせ頭を下げていた。
「あー、あんた確か、追いかけっこしてた」
「あれ、遊んでたんじゃ無いから!」
ヒクヒク笑って中から出てきたその女性は、町で強盗追いかけていたあの郵便局の彼女だ。
まさに馬のしっぽのような、見事な赤毛のポニーテール。
局員の制服ではなく、ウエスタンスタイルの私服に見覚えのある腕章。
部屋に入るとその奥の扉を開き、その先にある応接室へ通された。
「どうぞどうぞお座りになってくださ~い。
先日と合わせて、お世話になりました-。
あっ、甘いのはお好き?ちょうど今朝早起きして山ほどドーナツ作ったのよ。
持ってきたの食べます?
だーいじょうぶよ~毒なんか入ってないし。これは御礼。」
「えーと、で、用は何?」
「まあまあまあまあまあ、お座りください、お礼よお礼!」
「なんか~下心が見えるんだけど」
「ホホホホ!あらいやだ。
私の名前はキャミー・ウイスコンよ、サトミ・ブラッドリー。
まあ座って、コーヒー入れるから。あ、コーヒー大丈夫?」
キャミーはカードと金を一緒にテーブルの上に置く。
なんかマズい予感がするので、どうした物か考えたけど、まあ話だけ聞こうか。
つか、ドーナツだろ、ドーナツ。食わなきゃきっと後悔する!
「んー、砂糖とミルクいっぱいある?
仕方ねえ、ワイロにドーナツ食ってやるから勝手に話せ」
「あら、話がわかるじゃない?さ、お好きなだけどうぞ~
お勧めはココア効かせたショコラドーナツよ」
目の前にドサッと置かれたドーナツに、ドッと口の中によだれがあふれる。
俺はまだ子供なんだなあってこう言うとき思うんだけど、何しろ軍でのお菓子不足は深刻で、俺は常に甘みは砂糖をなめるしか無かった。
で、お勧めのショコラドーナッツを頬張る。
サクッとして、あああああ~~~~う、ま~~~い~~~
んああ~~~久しぶりのお菓子だあああああ!!
バクバク食って、もう一個食う。
こう言うの食べるとお母ちゃん思い出すなーー。
今ごろ何してるんだよ、お母ちゃん。
コーヒーのいい香りが漂ってきた。
彼女は丁寧に豆からコーヒーを入れて横に差し出す。
おおおお、すげえ、インスタントじゃ無いじゃん!
ちらと彼女を見ると、ニッコリ満面の笑顔で向かいに座る。
「コーヒー好きなの?」
「うん、白いコーヒーが好き」
「白い?コーヒー??」
カップギリギリまでポーション5個入れて、あふれそうになったのですする。
またポーション3個入れたし、砂糖10さじ入れた。
「え?えええ~、入れすぎじゃない?」
「これが俺のコーヒーなんだよ」
ん~、ポーションは不味いけど仕方ない、我慢する。
すっかり白くなったコーヒーを満足そうにかき回し、一口飲んだ。
「んー、美味~い」
彼女はなんだか呆気にとられてそれを見ている。
「白いコーヒーねえ……
ね、軍にいたの?今、お仕事の当てはあるの?
ね、ね、郵便局で働いてみない?」
身を乗り出して、なんだかキラキラした眼でサトミを見つめる
なんだ、勧誘か……と、マジでいやな顔してドーナツをもう一個と手を伸ばした。
「俺、帰ってきたばっかだし、金はあるし、しばらくのんびりしたいんだよ。
だから全部ノー。」
確かに、サトミの通帳は年齢からは考えられない、生涯遊んでおつりが来るほどの数字の金額が入っている。
それだけ、軍でもヤバイ位置にいたのかもしれない。
まあ、それはそれ、今はとにかく……
「うーんでもさ、まだ15?16?でしょ?その年でリタイヤは早くない?
ね?考えてみてよ!
郵便をお届けしたときのお客様の嬉しそうな顔、ありがとうなんて言われたらあなたの幸せも倍増!
今も郵便物を待ってる人のために、危険を乗り越えお届けする喜び!
さあ、あなたもこの喜び体験しませんか?!」
「ノー、サンキュー。じゃ、ごちそうさま。」
サトミは激甘のコーヒー飲み干して、金とカードを取ってジャケットの内ポケットに入れると部屋を出ようとする。
ノブに手をかけた時、キャミーが声を上げた。
「まあまあまあ!返事は急いでるけど急がなくてもいいから!
ね、あなた激強いでしょ?そう言う人、なかなかシラフでいないのよ。
帰ってくると、だいたいクスリやったり心に病気抱えちゃってるわけ。
でもあなた、自然体じゃない?
自覚無いだろうけど、そう言う人ってめっちゃ貴重なのよ!
ポストアタッカーの扱う郵便は貴重品が多いの。
そして配達業務は不特定多数が相手。
配達は単独行動、自分で危険は回避するしか無い、その上ばったり誰に会うかわからない。
怖いってみんな言うけど、そりゃそうよ。
気持ちはわかる。物騒なところで貴重品持って届けるのって、タダでさえ怖いもの。
ポストアタッカー、今年最悪よ、二人死んでるの。人手不足が深刻なの。
私、窓口要員なのに、配達に回るしか無い。
でも、舐められちゃう。
ね!お願い!お願いします!ポストアタッカーになって!」
振り返ると、キャミーは必死でサトミに手を合わせ頭を下げていた。
0
あなたにおすすめの小説
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる