速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜

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第22話 てめえらに何一つ権利はねえ

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ベンが走るのをやめて、流し始めた。
トラックはそのままどんどん小さく、荒野を走り去っていく。

「やめる?」

「そうだな、さっき落ちた奴捕まえるか」

「うん」

ベンが向きを変えて、逃げる少年に向かった。
追いつくと、刀を直しスライム銃を握る。

「おーい、止まれ~」

声をかけたが、止まるわけない。
左手でポケットからアメ玉を一個取りだし、少年の後頭部に指で撃ち込んだ。

バシッ!「ぎゃっ」

よほど痛かったのか、足が止まり突っ伏した。
後頭部を押さえて、もんどり打って悶絶している。

「ギャッ!ぎゃあぅ!痛い痛いいたあいーーっ」

ドンドンドンドンドンドン!!

撃ったスライム弾が尻に命中し、カプセルが破裂して股に流れて両足のズボンがくっついて固まってしまった。

「あれ?あれ?」

起き上がって足を出そうとしてもビクともしない。
ジタバタしている内に、目の前に来た馬の足に、涙でグチャグチャになった顔で見上げた。

「よう、クソ野郎。キヒヒ、仲間に見捨てられたじゃん、おめでとう!ご機嫌いかが?」

サトミがスライム銃を肩に乗せて、暗い顔でニイッと笑いながら見下ろす。

「くそう、くそうくそうくそう!」

少年が近くの石を取って投げる。
投げても投げても、馬上のサトミには当たらない。

「死ぬか生きるか、今決めろ」

少年はまだサトミと同じ年頃だ。
泣きながら動かない足に身体を返すと、尻にあった銃に気がついた。
慌てて取り出し、サトミに向ける。

「おやおやおや、なんだ、いい物持ってるじゃん」

パン!パンパンパンパンッ!

スッとサトミが左に首を倒し、ベンを左に持って行く。

「クソッ!クソッ!なんで当たらないんだよう!この化け物!」

何度も撃っているうちに、すぐに弾切れになって銃を投げつけた。

「くそう!くそう!くそう!
死にたくない!死にたくない!死にたくない!」

思い切り叫んで絶望の視線を落とし、そして固く閉じる。

死にたくない!!あんな死に方したくない!

「へえ、死にたくないだと?お前は図々しい奴だな。」

「うるさい!うるさい!お前達は父さんを殺したんだ!
僕たちには復讐する権利がある!権利があるんだ!!」

「うるせえ!ギャンギャン吠えるな。
強盗に何の権利があるって?てめえらには何一つ権利はねえ。
現状を見ろ、2秒の間に自分がどうするべきか考えろ。」

サトミの声が、暗く重くなる。
少年は顔を上げると、口をつぐんで身震いした。
違う、見た目チビだけど、ガキじゃ無い。
悪魔にでも魅入られた気持ちで、ガタガタ震えながら手を頭の後ろに組み、地面に伏せた。

「へえ、物わかりいいじゃん、お前の状況判断は正しい。
さっき、あれ母ちゃん?引き倒したのは反応が良かった。褒めてやる。」

ベンから降りて、投げつけてきた銃を拾って腰に差し、男の首根っこ掴んで起こすと膝立ちさせた。
背後からボディチェックしてシャツをズボンから引き抜き、半分脱がせ、頭を抜いて後ろ手で引き裂き縛る。
スライム銃のスライムは、量は少ないのに驚くほどよく固まっている。
一発のカプセルは小さいので、1人の足を止めるには6発全弾必要だ。
しかも、弾の入ったカートリッジは意外とデカい。
臭いは無いけど接着剤みたいだ。
まあ、がに股の男とスカート野郎には使えねえし、使うなら確保後か。

「うーん、やっぱ使えねえや。」

  殺しには使えるけど……エジソン泣くだろ。

男のズボンのベルトを外して引き抜いて、口に猿ぐつわを噛ませた。
舌噛まれると自供が遅れる。
何か情報は欲しい。
ズボンの裾に仕込みは無いか確認し、足先でかかとを抜いて靴を脱がせ裸足にする。
ふと、その後を考えた。

「あれ?下界の奴らは、捕まえたらどうするんだ?
拷問とか自白剤とか、普通は、普通しないんだよなあ。
手っ取り早いのに。」

「むぐーーーっ!ヒイヒイ!」

少年がジタバタする。無駄に怖がらせてしまった。

「あー、悪い。いやいや、俺は一般人だし。だーいじょうぶだってば。
うん、人権って奴?人権は大事だ! ……生ぬるいけど。

  ……生ぬるいよなあ、俺の先輩、ミンチにしといて。
ありゃあひでえ状況だった。うん、足1本砕いとくか。」

「ぐふうううううう!!」

「いやいや、大丈夫だ。俺は下界に降りたんだからそんな事しねえ。
大丈夫だ、安心しろ。」

ニッコリ微笑み、ポンポンと叩かれると、ゾーーッと冷や汗が流れる。
おしっこ漏らしそうになって、ハッと股を締めて堪えた。

「うっ、うっ、うーーっ」

怖い怖い、怖い

少年が身じろぎしてボロボロ涙を流す。
銃口にナイフが刺さった銃を見る。

とんでもない奴に掴まってしまった。
こんな怖い奴が世の中にいるんだ。

「さて、お前らがミンチにしようとした奴のとこに行こうぜ。
蜂の巣かもしれんけど、てめえらでやったこと良く見るんだな。」

とりあえず少年のズボン掴んで、軽々と掴みベンの尻に放り投げる。
落ちそうになって、必死で這い上がった。

「よし、落ちたら逃亡と見なして殺すから。」

ニッコリ笑って告げると、少年がストレスで目の下にクマを作って足をばたつかせ、なんとか鞍のベルトに足を引っかけた。
きっとこいつにとって、自分の命なんて空気より軽い。

「あー、きっと怒られるなー、怖い怖い、先輩怖い。」

ちっとも怖くない様子で自分も乗り込んで、地雷の被害者のところに走った。
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