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伯爵邸の夜(sideアルフォンス)
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そのまま骨董屋には寄らずに伯爵邸へと俺は帰った。
着くなり、イルマに命じる。
「俺の私室の控えの間にベッドを運べ」
壮年の執事、イルマはため息を吐く。
「どこからどう見ても暴漢に襲われた直後の女性をそんなところに連れ込むのはさすがに一言申し上げますよ」
「そんなことは分かっている。だからこそ、だ。この屋敷には男しかいない。一番、男を感じさせない容姿をしているのが俺なんだから仕方ないだろう。まあ下心は否定しないが」
おや?とイルマが片眉を上げる。
「一番危険な男が貴方なんですが。そろそろ落ち着いていただけるならこのイルマ、重畳です」
「分かった分かった。お前のその話は長い上に聞き飽きた」
「承りました。しばらくお待ち下さい」
そして、イルマは指示を出しに行く。
俺は、準備が出来るまで玄関ホールのソファーに座る。
抱えている少女を見つめる。
うん。美しい。これはいい拾い物をした。俺の唯一の花となるかどうかはこれからだがな。
部屋は暖かい。上着を脱がせようかと思うが、あまりに頼りない服装だったことを思い出す。どういう経緯でこの少女がこんな格好で野垂れ死にしかけたいたのか。
馬丁のクリスを呼ぶように控えていた下男に伝える。
「はぁい、お呼びですかね、ご主人様」
間もなくクリスが現れた。
「え?なんすか?今度は女の子拾ってきたんですか?男ならともかく珍しい。家の中に連れ込むとはなかなか。お、綺麗な子じゃん。さすが!お目が高い!!」
「うるさい」
クリスは数年前、貧民街で俺の財布を摺ろうとしたところをとっ捕まえた。あの街では顔も広く情報通だったはずだ。
「この少女について調べてほしい」
「また無理難題を。情報量が少なすぎて…って、それ、パジャマですか?え?…」
「なんだ?」
「あっさり分かるかもしれませんよ」
俺は目線で続きを促す。
「そのパジャマ、恐らく更生院の物ですから」
そこで、昼間聞いた噂を思い出す。更生院から脱獄した者が出たという話。あそこから商人街の裏路地までの距離。無理はあるが不可能ではない。
「相当な拾い物しましたねえ」
クリスは呟く。
では、逃げ出した途中で暴漢に襲われたのか。しかし。
「クリス、調査内容を変える」
「はい」
「更生院の出所者から聞き取りだ。どういう環境にいたか。噂話でも何でもいい。拾ってこい」
「拝命致しました」
クリスは栗色の髪に栗色の瞳という平民にありがちな色合いだがなかなか整った顔の色男だ。そして圧倒的な会話術をもってして欲しい情報を拾い上げる。これでなかなか優秀な男なのだ。
クリスが去ると、イルマがやって来て部屋の準備が整ったことを告げる。
そのまま少女を連れて私室に入る。召使用の控えの間にはきっちりベッドが用意されて清潔なシーツと布団が整えられていた。
少女を横たえる。治癒魔法を使ったのだ。明日の朝には目覚めるだろう。さて、目が覚めた時に俺がそばにいたら驚くだろうが放っておくわけにもいくまい。家にまで女の面倒ごとを持ち込みたくないと男しか置いていないこの屋敷だが少々不便だなと初めて思った。
目を瞑り、規則的に胸を上下させる少女。上着を脱がせ、嫌な思い出があるだろうが、着替えさせることはやめておいた。
着くなり、イルマに命じる。
「俺の私室の控えの間にベッドを運べ」
壮年の執事、イルマはため息を吐く。
「どこからどう見ても暴漢に襲われた直後の女性をそんなところに連れ込むのはさすがに一言申し上げますよ」
「そんなことは分かっている。だからこそ、だ。この屋敷には男しかいない。一番、男を感じさせない容姿をしているのが俺なんだから仕方ないだろう。まあ下心は否定しないが」
おや?とイルマが片眉を上げる。
「一番危険な男が貴方なんですが。そろそろ落ち着いていただけるならこのイルマ、重畳です」
「分かった分かった。お前のその話は長い上に聞き飽きた」
「承りました。しばらくお待ち下さい」
そして、イルマは指示を出しに行く。
俺は、準備が出来るまで玄関ホールのソファーに座る。
抱えている少女を見つめる。
うん。美しい。これはいい拾い物をした。俺の唯一の花となるかどうかはこれからだがな。
部屋は暖かい。上着を脱がせようかと思うが、あまりに頼りない服装だったことを思い出す。どういう経緯でこの少女がこんな格好で野垂れ死にしかけたいたのか。
馬丁のクリスを呼ぶように控えていた下男に伝える。
「はぁい、お呼びですかね、ご主人様」
間もなくクリスが現れた。
「え?なんすか?今度は女の子拾ってきたんですか?男ならともかく珍しい。家の中に連れ込むとはなかなか。お、綺麗な子じゃん。さすが!お目が高い!!」
「うるさい」
クリスは数年前、貧民街で俺の財布を摺ろうとしたところをとっ捕まえた。あの街では顔も広く情報通だったはずだ。
「この少女について調べてほしい」
「また無理難題を。情報量が少なすぎて…って、それ、パジャマですか?え?…」
「なんだ?」
「あっさり分かるかもしれませんよ」
俺は目線で続きを促す。
「そのパジャマ、恐らく更生院の物ですから」
そこで、昼間聞いた噂を思い出す。更生院から脱獄した者が出たという話。あそこから商人街の裏路地までの距離。無理はあるが不可能ではない。
「相当な拾い物しましたねえ」
クリスは呟く。
では、逃げ出した途中で暴漢に襲われたのか。しかし。
「クリス、調査内容を変える」
「はい」
「更生院の出所者から聞き取りだ。どういう環境にいたか。噂話でも何でもいい。拾ってこい」
「拝命致しました」
クリスは栗色の髪に栗色の瞳という平民にありがちな色合いだがなかなか整った顔の色男だ。そして圧倒的な会話術をもってして欲しい情報を拾い上げる。これでなかなか優秀な男なのだ。
クリスが去ると、イルマがやって来て部屋の準備が整ったことを告げる。
そのまま少女を連れて私室に入る。召使用の控えの間にはきっちりベッドが用意されて清潔なシーツと布団が整えられていた。
少女を横たえる。治癒魔法を使ったのだ。明日の朝には目覚めるだろう。さて、目が覚めた時に俺がそばにいたら驚くだろうが放っておくわけにもいくまい。家にまで女の面倒ごとを持ち込みたくないと男しか置いていないこの屋敷だが少々不便だなと初めて思った。
目を瞑り、規則的に胸を上下させる少女。上着を脱がせ、嫌な思い出があるだろうが、着替えさせることはやめておいた。
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