魔法伯爵と私

狩野真奈美

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冬の夜道5(sideアルフォンス)

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その日、城で俺は噂を聞いた。どうやら更生院から脱走者が出たらしいと。王都の貧民街には白い塀で囲われた更生院がある。罪を犯した少年少女を更生させるための施設だが、創設以来、初めての脱走者である。確かあそこは今あの豚野郎が院長だったなあと思い起こす。この失態はなかなか小気味良い。現国王陛下には弟がいたが、その弟を国王にするべく奔走していた男である。この国では長男が後継であるのが一般的であるし、国王の世継ぎに関しては王室典範にもしっかりと長男が王太子と書かれているのに。担がれた弟もだいぶ馬鹿だったが。
まあ俺には関係ない。ただ欲に塗れた豚野郎は俺が半妖精であることを大声で蔑んでいたのでちょっとした私怨ではある。
元々俺は半妖精で、魔力は人間よりも大きいので宮廷魔術師を拝命していた。先の大戦で戦果をあげたらあれよあれよと伯爵である。大量に殺しただけで褒められても特に嬉しくないが、断れる話でもないので受けた。つくづく人間はめんどくさいと半分人間だが思う。伯爵になって領地経営から他の貴族との付き合いなど何かと面倒事が増えただけだなと思う。叙勲された当代限りの伯爵でこれだ。代々続く公爵家の当主である友人を思うとご愁傷様である。
そんなこんなで更生院の院長に追いやられた豚野郎の失態に失笑した程度で俺はその話には特に興味もなかった。
久方ぶりに訪れた城内で、現宮廷魔術師たちに指導を行った。夕暮れを過ぎて家路に着こうと城を出た。そういえばそろそろあの骨董屋に顔を出すかと馬車の行き先を貴族街の自宅から商人街の裏路地に変更したことにより事態は一変する。
馬車を走らせていると道の端に白いパジャマの少女が倒れていた。この寒い夜に一晩ここで過ごしたら死ぬ。人命救助すべきか捨て置くべきか。迷ったが少女の気配がどうも人間であるが何か混ざっている。とりあえず、拾っておくかと俺は馬車を停めさせ、近寄った。
これはなかなか死にかけているな。
「おい、死ぬのか?」
声をかけた。
うつ伏せに倒れているのを顔を確認するため抱き上げた。
強い意志で目を広げている。
紫の瞳の視線の先は定かではないが、俺の腕に広がる長い黒髪。
ほう、まだまだ幼いがかなり美しいな。将来が楽しみだとロリコンの気はないが思う。
「生きたいか?楽になりたいか?」
明らかに訳ありだ。本人の意志は確認しておこうと思う。
少女の答えは
「イキ…タイ」
そう呟くと目を瞑り、涙を一筋零した。
美しいなと思った。美しいものは好きだ。
「アルフォンス様、拾われるのですか?」
御者をしていた執事のイルマが尋ねてくる。
「ああ」
とりあえず、治癒魔法を少女にかけた。
消えかかった炎はこれで再び燃え始めることだろう。
上着を脱ぎ、少女にかける。
そして抱き上げるとそのまま馬車に乗せる。
まあ今更厄介ごとが一つや二つ増えたところで俺にとっては変わらんしな。



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