魔法伯爵と私

狩野真奈美

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冬の夜道4

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4年ぶりに、外に出た。しかしアリスに土地勘はない。追手が怖くて力尽きるまで走り抜けた。白い継ぎ接ぎだらけのパジャマで前はボタンが飛んで開いている。どうやらここは王都とはいえ、郊外のようだ。しかも治安もあまりよろしくない場所らしい。好奇の視線は感じる。孤児院からの脱走であることを察して、笑いながら口笛を吹く者もいた。とにかく、闇雲にアリスは走り、そして、最後に倒れた。
せめて安全な場所までと思ったが、安全な場所などどこかも分からない。産まれてからつい先程まで、一番安全だったのは孤児院だったのだ。
時刻は分からないが、日は落ちた。
外は寒い。
人通りの少ない裏路地の石畳の上で荒い息をしてぶっ倒れている。
先程までの治安のよろしくなさそうな街は地面は土だった。アリスの生まれた町も地面は土だった。そうか、馴染みのない石畳の上で死ぬのか、私。なかなか滑稽なことを死ぬ前に思ったな。
目を瞑ればきっともう開けられない。それが分かっていた。
悪運尽きたなあ。
でもなんか、死ぬ前に爪痕残せたよね私。達成感すらある。
すごいすごい。よく10歳まで生き延びまし「おい、死ぬのか?」
その時、深い穏やかな男の声がした。
あーもう、ほっといてくれよ。最期くらい一人で穏やかに迎えさせてくれよ。もう目線ひとつくれてやる気力もない。
うつ伏せになっているアリスをその男が仰向けにし、そっと抱き上げた。
うっわ、天使っているんだ。お迎えだお迎え。綺麗だなあ。白金色の髪を首筋にかかる程度に伸ばし、深い青い瞳が不思議な力を持つ男だった。白い肌に形の整った唇。そして神が生み出した造形美のような顔立ち。
天使は問う。
「生きたいか?楽になりたいか?」
うーんなんかもう楽になりたい気もする。本当に疲れた。結構がんばったよね、私。
そして、私は最後の力を振り絞って答えた。
「イキ…タイ」
うっわ、すっごい声かすれてる。って、え?私、生きたかったの?嘘だ。だってろくなことなかったじゃん。今までしがみついててろくなことなかった。あ、だめだ…し、ぬ
そして私は意識を手放した。
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