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冬の夜道3
しおりを挟むあ、この人、頭おかしい。そう思った。ロリコンな上に首を絞めながら致したいというその性癖。怖すぎる。そういえば、この孤児院は16歳で卒業する時に路銀がもらえる。その額が個人によって大幅に違うらしいことは聞いていた。無用のトラブルを避けるため、この孤児院は基本的に私語を慎むように指導されている。しかし、午前中の学問の時間だけは上の者が下の者に教える。先生の数が足りないのだろう。その場で、娯楽のない生活なので院内の些細な噂話くらいなら生じるものだ。院に貢献した者に与えられる多めの路銀。貢献とはまさか、この院長に抱かれること。10歳のアリスが卒業するまで6年、気持ち悪いおっさんに首を絞められながら抱かれる。
アリスが冷静なのもここまでだった。
「やはり、大きなおっぱいだねえ。10歳なのにねえ。ああ、ピンクの可愛い飾りだ」
触れられそうになったところで、絶叫し、身をよじる。
「いやぁぁぁ!!」
院長はニヤつく。
「叫んでも誰も来ないよぉ。せっかくだからもっと叫んでいいよぉ」
気持ち悪い。本気で気持ち悪い。汗ばんだ太い指が迫ってくる。脳裏に浮かんだのは父だった男と絡み合う女たち。甲高い声をあげていたあの女たち。アリスは全力で暴れた。院長はアリスが風邪のため弱々しい抵抗しか出来ないと思っていたのだろう。しかし、アリスは記憶にある嫌悪感で制御が外れていた。そのまま院長を殺す気で加減なく蹴飛ばし、力が緩んだところでベッドから転がるように走り出した。
「痛いなあ。しかし、この白い塀の中で逃げ回ったところでたかが知れてるというのに」
恰幅の良い体でのそのそと部屋を出たアリスの後を追う院長。アリスは全力で走る。
ここで、アリスの運が良かったのは事実だ。なかなかに最低最悪な人生だが、少しマシと言えばマシなのだ。悪運がいいと言えばそれまでだが。
そう、アリスは知っていた。孤児院から出られる場所を。たまたま見つけていたのだ。白い塀が少しだけ壊れているところを。王都には興味があったが、抜け出したところで何もできない。だからそのまま見て見ぬ振りをした白い塀の隙間。来年の成長した11歳のアリスなら通ることは出来なかっただろう。だがしかし、10歳のアリスなら通れる。そしてそこは病人用の隔離部屋からは程近い。部屋から出ると幸いにも一階なので窓を抜け、外に出る。そして最早、後先考えずにアリスはその隙間から抜け出した。
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