魔法伯爵と私

狩野真奈美

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焦り(side院長ゲーデル)

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ゲーデルは焦っていた。まさか逃げられるとは思ってもみなかった。更生院の白い塀の中でゲーデルは王様だったのだ。まさかその白い塀にこんな小さな穴があったからといって。
最初は優雅な貴族社会から蹴落とされ、こんな閑職に追いやられたと絶望した。しかし、すぐに考えは変わったのだ。そう、この更生院の中でならゲーデルは絶対的権力を握っているのだ。最初に手を出した少女はどんな容姿だったかも思い出せない。数多の少女の首を絞め、苦しむ顔を見て快感を得た。しかし、その行為が今ゲーデルの首をじわじわと絞めつつある。
更生院の初の脱獄者。情報を握り潰そうかと思ったが、まずいことを知っている彼女を捕らえる方を優先した。渋い顔をした宰相に頭を下げて衛兵を借りた。すぐに捕まえられると思った。捕まえたら衛兵に強姦させてやろう。美しい少女だからちょっと奴らを唆すだけでいい。そして彼女がこの更生院のまずいことを訴えても、それが衛兵の口封じになる。初物を頂けないのは残念だが仕方あるまい。そのあとはいつものように飼い慣らせばいい。
しかし、彼女は捕まらない。貧民街を出たという目撃情報を聞いた時、ゲーデルは初めて焦りを感じた。
貧民街ならどこかで犯されて捨て置かれている可能性があったのに。
どこに逃げたのか。
まもなく国からの監査が入るらしい。更生院の職員たちにも国の寄越す運営費から横領したお金を回すことでゲーデルの好き放題してきたのだ。職員たちが監査員に口を割らないように、お前たちも共犯だと脅しつけなければならない。
もう少女が逃げ出して4日目だというのに、衛兵も無能なものだ。親指の爪を噛みながらゲーデルは衛兵への不満と更生院の王様という地位を脅かされる焦りを感じていた。
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