上 下
5 / 8

他人の話は聞き流したい

しおりを挟む
おおっと、いけない。ついうっかり聞き流していたけれど、ローランド様は懇切丁寧に私の行った嫌がらせを宣うてくれている。初っ端の名前呼びかけられた辺りから聞いてない。つまりは全部聞いてない。なんかほら、他人の話を聞き流しがちというか。興味ないと態度に出ちゃうとかいう公爵令嬢にあるまじきタイプの女なんでね。中身が私なので地位とかは考慮しないでほしいですね。

「よって、私、ローランド・ブランダルは、カレン・ユーリアスとの婚約を破棄する!!!」

とローランド様は宣言した。別に私としてはどうでもいいんだけど、断罪シーンだもんね。一応、メインシーンだもんね。令和になってすぐに発売された割に古めかしいゲームだった。好意的に、めちゃくちゃ好意的に評価すれば様式美みたいな。
でもゲームに出てきたカレン・ユーリアスと私は何かが違うのだろうし、私の今までの人生とこれからの人生を面白おかしくしたいし。
何はともあれ、

公爵令嬢だからって!
カーテシーして引っ込むと思うなよ!!

「おい、そこの第一王子。あんたさーホント馬鹿なわけ?頭の中に白い綿でも詰まってんの?それともすっからかんなの?スイカみたいに叩いてやろうか?たなおちですかー?って。
誰のおかげで第二王子と均衡の取れた派閥築いてられると思ってんの?
ねえ?本気で頭悪いの?頭悪くて死んじゃうの?それはそれはご愁傷様でした」

不敬罪もいいとこだな。まあいいよ。第一王子の一応整ったご尊顔が真っ赤になって口ぱくぱくしてるし。面白い。
会場の王族の席の近くでは私の父親が頭を抱えている。あの人本当に真面目だし義理堅いしな。切腹とかしそうなタイプだよね。まあでもこれくらいの不敬、このような公式の場で一応公爵令嬢の私に文句ぶーたれて婚約破棄を勝手に宣言したんだから、帳消しになるでしょう。おとん、頑張って!君なら出来る!帳消しにしてね!
まあ今回の後始末はおとんよりも喜んで働きそうなやつを一人知ってるけど。
さて、次はピンク頭か。
びっくり顔でこっち見てるけど、第一王子は前哨戦。本番はお前なんだよ。
しおりを挟む

処理中です...