15 / 60
一章
外伝 農園のおやっさんは元冒険者
しおりを挟む
俺の名前はギース。元四級の中級冒険者で今は農園を経営していて、皆からはおやっさんと呼ばれている。冒険者を辞めて農園を経営している理由は、とある依頼で油断から生死をさ迷う大怪我をしてしまったからだ。幸運な事に手足に障害は残らず、目立った後遺症といえば多少視力が落ち、目が霞むようになったこと位だった。そういった経緯もあって冒険者時代の蓄えを使って農園を始め今ではそれなりの規模の農園に成長した。
ただ園長が元冒険者だからか従業員も元チンピラや何かしら問題を抱えた奴が多くなったのには少し困ったが、
心の何処かで冒険者に未練があったのかもしれない。農園の経営が軌道に乗り、人手が足らなくなることが増えてきたこともあって、冒険者見習い用の依頼を出すようになった。
それからは色んな若い冒険者を見てきた。働きっぷりも様々で、一生懸命働く奴もいれば農作業なんてとてを抜く奴もいた。どちらにせよ俺は一依頼人、そいつらと深く関わる事なんてないと思っていた。ゴートに会うまでは。
そもそも初めて会った時から印象的な奴だった。冒険者には見えない格好。元農奴という経歴。働き始めればベテランさながらの手つきと人一倍の力と体力。思わず農園にスカウトしたくらいだ。
その後もゴートは結構な頻度でうちの依頼を受けてくれた。大抵の冒険者は薬草の採取とか外に出る依頼をやりたがるもんなんだが。
ただゴートと仲良くなるにつれ同時に違和感も感じていた。話すときに微笑んではいるものの思い切り笑っている所を見たことがない。一見社交的に見えるから最初は気が付かなかったがゴートは心の何処かで凄く固く分厚い壁を張っているような気がするんだ。
勿論他人がでしゃばる問題じゃないのはわかってる。わかってたんだがな。装備の相談を受けた事、あれが決定打だった。もう従業員と同じで仲間にしか思えなくなっていた。まあだからどうしたって話ではあるけどよ。
そんな最中ゴートが昇級の報告にやって来た。俺らに報告してくれたことが嬉しくて柄にもなくはしゃいじまったがな。従業員の奴らも自分の事のように喜んでたな。
宴会当日一切の問題なく進んでいた。ゴートもうまそうに飯食ってる。見ていて気持ちの良い食いっぷりだ。徐にホッブがゴートの皿に肉を馬鹿みたいに盛り始めた。そして向かいのモリーに怒られてる。あの夫婦も今でこそ立ち直っているが昔子供を無くし荒れていた。あいつらの子供が生きてればゴート位か。重ねている訳では無いだろうが無性に世話を焼きたくなったのだろう。そんなことを思っているとふと周囲が静かになっているのに気付いた。ゴートだ。ゴートが腹を抱えて思い切り笑っている。こんなに感情を表に出すゴートは初めてだ。何がきっかけなのかはわからないが確かにゴートは心の底から笑っていた。
腹を抱えて思い切り笑う。そんな当たり前の事をするゴートに無性にうれしくなった。
もしかしたらこの農園の奴等は自分の失ったなにかをゴートに重ねてるのかもしれないな。青春の時間であったり、子供の成長であったり。かくいう俺も冒険者としての何かを託してるのかもしれん。それはゴートが純真で一生懸命だからなんだろうな。ただその重ねている想いがゴートの負担になっちゃいけねえ。
だからこそ、これからも同じ街の仲間として楽しくやっていこうかね。
ただ園長が元冒険者だからか従業員も元チンピラや何かしら問題を抱えた奴が多くなったのには少し困ったが、
心の何処かで冒険者に未練があったのかもしれない。農園の経営が軌道に乗り、人手が足らなくなることが増えてきたこともあって、冒険者見習い用の依頼を出すようになった。
それからは色んな若い冒険者を見てきた。働きっぷりも様々で、一生懸命働く奴もいれば農作業なんてとてを抜く奴もいた。どちらにせよ俺は一依頼人、そいつらと深く関わる事なんてないと思っていた。ゴートに会うまでは。
そもそも初めて会った時から印象的な奴だった。冒険者には見えない格好。元農奴という経歴。働き始めればベテランさながらの手つきと人一倍の力と体力。思わず農園にスカウトしたくらいだ。
その後もゴートは結構な頻度でうちの依頼を受けてくれた。大抵の冒険者は薬草の採取とか外に出る依頼をやりたがるもんなんだが。
ただゴートと仲良くなるにつれ同時に違和感も感じていた。話すときに微笑んではいるものの思い切り笑っている所を見たことがない。一見社交的に見えるから最初は気が付かなかったがゴートは心の何処かで凄く固く分厚い壁を張っているような気がするんだ。
勿論他人がでしゃばる問題じゃないのはわかってる。わかってたんだがな。装備の相談を受けた事、あれが決定打だった。もう従業員と同じで仲間にしか思えなくなっていた。まあだからどうしたって話ではあるけどよ。
そんな最中ゴートが昇級の報告にやって来た。俺らに報告してくれたことが嬉しくて柄にもなくはしゃいじまったがな。従業員の奴らも自分の事のように喜んでたな。
宴会当日一切の問題なく進んでいた。ゴートもうまそうに飯食ってる。見ていて気持ちの良い食いっぷりだ。徐にホッブがゴートの皿に肉を馬鹿みたいに盛り始めた。そして向かいのモリーに怒られてる。あの夫婦も今でこそ立ち直っているが昔子供を無くし荒れていた。あいつらの子供が生きてればゴート位か。重ねている訳では無いだろうが無性に世話を焼きたくなったのだろう。そんなことを思っているとふと周囲が静かになっているのに気付いた。ゴートだ。ゴートが腹を抱えて思い切り笑っている。こんなに感情を表に出すゴートは初めてだ。何がきっかけなのかはわからないが確かにゴートは心の底から笑っていた。
腹を抱えて思い切り笑う。そんな当たり前の事をするゴートに無性にうれしくなった。
もしかしたらこの農園の奴等は自分の失ったなにかをゴートに重ねてるのかもしれないな。青春の時間であったり、子供の成長であったり。かくいう俺も冒険者としての何かを託してるのかもしれん。それはゴートが純真で一生懸命だからなんだろうな。ただその重ねている想いがゴートの負担になっちゃいけねえ。
だからこそ、これからも同じ街の仲間として楽しくやっていこうかね。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる