冒険者ゴートの一生

ケバブ

文字の大きさ
31 / 60
三章

セカの街の冒険者達2

しおりを挟む
「リーフさん!ゴートです。依頼を受けに来ました」

リーフさんを見つけたので、名前を呼びながらリーフさんに駆け寄る。
農園の中に入ると、雨が降る前の匂いと緑の匂い、土の匂いが感じられ懐かしい気持ちになる。故郷の村で雨が降る前はいつもこの匂いだったな。

「やあゴート君!君が依頼を受けてくれたのか。それなら一安心だ。収穫作業バッチリ頼むよ!」

「任せてください!」

春カブも春芋も村にいた頃たくさん収穫している作物だから、作業内容に問題はないだろう。

作業に入る前に従業員に自己紹介。リーフさんの他にお爺さんが一人、俺より年下であろう子供が三人で、女の子二人男の子一人。今まで何度かこの農園に来たことが有るけれど、基本的に夜番の依頼で来ていたので従業員と本格的に話すのは今日が初めてだったりする。

「九級冒険者のゴートですよろしくお願いします」

「ゴート君か。リーフから話は聞いているよ。良く夜番の依頼を受けてくれているのだろう。ありがとうな。儂はバルフェルド。皆にはバル爺と呼ばれているからそう呼んでくれ。一応こいつらの農業の先生の真似事なんかををしているしがない爺さ」

そう言ってバル爺は自嘲気味に笑っている。リーフさんと三人のうち少し大人っぽい少女は、一瞬寂しいような悲しいような何とも言えない表情を見せた気がするが、初対面の自分が踏み込むべきことではないだろうし今は流しておこう。

「ホナミ孤児院のヒナと言います。いつもリーフがお世話になっております。よろしくお願いします。そしてこの双子がヘイルとファラといいます」

「「よろしくお願いします」」

ヒナさんは凄くもしっかりしていて料理が上手、ヘイル君は顔付きの割に体格が良くて明るく、ファラちゃんは真面目だけどやや内気らしい。というのも自己紹介の合間にリーフさんが補足説明をしてくれたのだ。ヒナさんに怒られてたけど。

リーフさんの農園は、時折孤児院のより小さい子が手伝いに来る程度で基本的にこのメンバーで回しているらしい。

お昼にヒナさんお手製の芋とカブのスープを皆で食べつつ作業に励む。慣れた作業だけあって三十分ほど余裕を持って収穫を終え、少しの間草刈りを進めることができた。

「ゴート君お疲れ様。凄く手慣れていてビックリしたよ」

「少し前まで農園で働いていたようなものですから」

「その他にも一度に運ぶ量とか凄く多かったし、やっぱり冒険者は違うね!」

「ありがとうございます。それをいったらヘイル君も年の割には凄く力持ちですよね。見てて凄かったですよ」

すごい勢いで誉められ、少し照れ臭くなったので話題を変えるのもかねて違う話題を切り出したのだがリーフさんの表情が変わった。何か悩んでいるのかその表情は明るいものではない。

「…ゴート君。もしよかったら少し話を聞いてもらえるかい?」

「俺なんかで良ければいくらでも聞きますよ。あんまり良い答えとかは言えないかもしれませんが…」

「いいや、新人冒険者のゴート君だからこそ聞きたいんだ。実はヘイルが来年から冒険者になると決めたみたいでね。ヘイルがよく考えて決めたことだから僕も尊重して応援したいんだけど、やっぱり心配でね。参考までに現役冒険者の意見を少し聞きたくて」

成る程。それならさっきの表情も納得だ。自分が生業にしておいて言うのもなんだが冒険者という職業は安定から程遠い職業だし、親しい者からすれば心配するのも当然で、リーフさんみたいに優しい人なら尚更だよな。

「俺も何かアドバイス出来るほど冒険者について理解した訳じゃないですけど、ヘイル君の身体能力は高いと思いますよ。勿論それだけで冒険者をやっていける訳では無いですけど」

「そうか…。助言ありがとうね。因みにゴート君は指導や訓練の依頼は受けていいるのかな?もし良かったらヘイルに色々教えて貰いたいんだ」

「俺がですか!?俺も冒険者になったばかりで人に教えられる身では…武器の扱いとかもまだまだですし」

「ヘイルも武器の扱いは組合で学ぶみたいだからそこは大丈夫。ゴート君に教えて貰いたい事は駆け出しの心構えや、普段からやっておいたほうが良いこととかなんだ。ゴート君と知り合ってからそんなにたっている訳じゃないけれど怪我もしていないようだし。それに勝手ながらヘイルはゴート君と近い境遇にあると感じていてね。なおさらヘイルのためになるかと思ってさ」

リーフさんは可能な限りヘイル君の力になってあげたいのだろう。そして少しでもヘイル君に怪我をせずにいて貰いたい。そんな家族を大切に思うリーフさんの想いが伝わってきた。
自分が人に何かを教えるという事に自信はないけれど、少しでも力になれるならやってみるのも良いのかも知れない。

「リーフさん、俺で良ければその依頼受けますよ。どこまで力になれるかはわかりませんけど精一杯頑張ります」

「本当かいゴート君!ヘイルとも相談して改めて依頼を出すよ!」


依頼の完了証明を貰い農園を後にする。
まだ指導の依頼を受けたわけではないのだが、なにか肩にのし掛かるものを感じる。だけどそれは嫌な重さではなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ
ファンタジー
亡祖父母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。 困っている人がいればすぐに駆け付ける。 人が良すぎると周りからはよく怒られていた。 「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」 それは口癖。 最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。 偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。 両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。 優しく手を差し伸べられる存在になりたい。 変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。 目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。 そのはずだった。 不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……? 人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

処理中です...