冒険者ゴートの一生

ケバブ

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四章

旅立ちの下級冒険者1

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「ゴートさん、昇級おめでとうございます。今日から七級冒険者です」

「ありがとうございます。これからも頑張ります」

渡された冒険者カードを見ると『ゴート 七級冒険者』と記されており、自分が七級冒険者に昇級したことを実感させてくれる。

受付で報酬を受け取った後、帰る途中で何時ものバーガー屋で夕食。今日は昇級祝いに豪勢に注文だ。

「おっちゃん、何時もより豪華なの二つと飲み物頂戴!」

機嫌良く注文し代金を支払う。

「いらっしゃい!お、ゴート良いことでもあったのか?」

「ついさっき七級に昇級したんだ!これで胸を張って冒険者ですって名乗れるよ」

「やったじゃねえか!確かに七級ともなればもう新人とは呼べねえな」

おっちゃんは調理を進めつつも感慨深そうに話す。

「今まで意識してなかったが、ゴートがこの店に来るようになってから、もう三年以上経つんだもんな。そりゃ冒険者として成長もすれば、ガタイも良くなる訳だ」

「体が大きくなったのはおっちゃんのバーガーの力も大きいけどね」

「嬉しい事言ってくれるじゃねえか、褒めたってなにもでやしねえぞ」

三年。そう、時が経つのは早いもので魔狼の一件から三年の月日が経っていた。

とはいったものの、俺に劇的な変化があったかというとそんなことはない。変わった点と言えば武器や防具が少し良いものになっていたり、投擲用ナイフやテント、光の魔道具といった冒険者にとって有用なものを買い揃えた程度だろう。

無論鍛練は続けており、ある程度実践も踏んでいるため三年前と比べたらかなり強くなっている自負は有るが、生活そのものに大きな変化は無かった。

それにしても口調こそぶっきらぼうなおっちゃんだけど表情は明るい。照れてるのかもしれない。

それに俺もお世辞で言った訳じゃなく本当にそう思っているのだ。この街に来てからというもの、依頼がある日は毎回ここのバーガーを食べていたし、休みの日も大抵三食の内一食はお世話になっていた。

そのおかげが身長は百八十センチを超し、今も少しずつ伸びていたりする。

「お待ち!ゆっくり味わって食うんだぞ」

「わかってるって。頂きます!」

肉と野菜がたっぷりのバーガーを一口。口に広がる肉の旨味と野菜の甘さ。生野菜特有の食感も相まってかなり旨い。

「ご馳走さまでした。また来るよ、おっちゃん!」

「おうさ、ありがとよ」

お腹もふくれた所で一度部屋に戻り装備の手入れを済ませてから共同浴場にて汗を流す。

依頼をこなし、おっちゃんの所で飯を食べ、共同浴場で汗を流し、明日に備えて眠る。冒険者として三年間続けてきた俺の日常。

不足の無い安定した毎日。ただ生活していくだけであればこのまま現状維持で問題ない。元々村を出た理由も、こんな安定した生活が欲しかったからだ。

しかし今は少し違う。

俺は良くも悪くも我と欲が強くなった。

人であったり物であったり強さであったり。そして何より色々な景色を見てみたくなったのだ。

きっとそれは、このセカの街に住み始めて、様々な人との交流が始まって、アークさんをはじめとする先輩冒険者の姿を見て俺の何かが変わったのだろう。

七級冒険者への昇級。これは良い機会なのかもしれない。幸か不幸か守るべき家庭も無いのだから冒険してみるのも良いだろう。

「明日色んな人に話を聞いてみるのも良いかもしれないな…」

俺は誰に言うわけでもなく、決心を固めるかのようにポツリと呟いた。


こうして俺は冒険者生活四年目にしてセカの街を飛び出し見聞を広めるための旅に出ることに決めた。
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