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四章
旅立ちの下級冒険者2
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受付のクリスさんに見送られながら駆け出し荘を出る。今日も良い天気だ。
朝食を何時ものようにおっちゃんの所で食べてから、黒鉄へ向かう。
「こんにちは。ケニーさんいますか」
「いらっしゃい。すまないがケニーは留守にしていてな。代わりに私が用件を聞こう」
扉を開くとケニーさんの姿は無く、筋肉隆々の壮年の男性が作業していた。
「おっと、初めてのお客さんか。私はケニーの父親のドーガという。以後宜しく頼む」
「ケニーさんの…。あ、俺の名前はゴートといいます。冒険者です。こちらこそ宜しくお願いします!」
ケニーさんの店には何度もお世話になっているが父親は初めてだ。少し焦った。
「元気があって何より。さてゴート君、息子に用事がある様子だったが?」
「えっと、近々旅に出ようかと思っているのですが、その前に武器一式の整備をお願いしようかと思いまして」
「成る程。それは良い心掛けだ。こういう一手間を怠ると良い冒険者にはなれないからな。では武器を出してくれるか?」
台に短槍と投げ槍三本を置くと、ドーガさんは少し全体を見た後、軽く振り納得したように話し出した。
「全部息子の自作とは。ゴート君にはずいぶんと贔屓にしてもらっているようだな」
「贔屓というか、俺の方こそケニーさんには冒険者になりたての右も左もわからない頃から相談に乗ってもらったり、良くご飯に連れていって貰ったりとお世話に成りっぱなしで…寧ろこっちが感謝したい位です!」
「そうか…。息子が冒険者の方々と良い関係が築けているようで安心したよ。武器は責任を持って整備しておこう。明日の午後には出来てる筈だ。因みに料金についてだが息子に聞かないとわからないのでな。受け取りの際で頼むよ」
「わかりました。明日取りに来ますのでお願いします」
用件も済み店を出ようと扉に手を掛けると後ろからドーガさんの声。
「ゴート君、良ければこれからも息子と仲良くしてやってくれ」
振り替えると照れ隠しなのかせかせかと商品を整理しているドーガさんの姿が。
「勿論です!」
黒鉄で武器の整備と来れば次は労働者で防具の整備だ。
魔道具はこの前整備したばかりだから問題ない。
労働者は黒鉄からすぐ近くの少し歩いたところにある。
店の前に着いてふと思う。ここにも随分とお世話になったと。
初めての防具購入から今に至るまで、成長に合わせて調節してもらったり、動き易さは維持したまま耐久性を上げるように試行錯誤してもらった事、そしてさっき寄ってきた黒鉄の紹介等、他にも沢山。挙げるとキリが無い。
ランさんやロイさんは勿論だけどここを紹介してくれたおやっさんにも改めて感謝しないとな。
今度おやっさんの農園に差し入れでも持っていこうかなんて考えながら店の扉を開ける。
「こんに「ラン、俺と結婚してくれないか」
束の間の静寂。
これは非常に不味いタイミングに来てしまった。気まず過ぎる。
そもそもなんで日中のしかも店の中でケニーさんがランさんにプロポーズを?いや、それ自体は何の違和感もないけどさ。
とにかくここは一刻も早く店から出るべきか。
混乱している頭を懸命に働かせて出た結論に従って、店から出ようと振り向いたその瞬間、ランさんの声。
「ゴート、ちょっと待った!大丈夫だから!私達の話を聞いて!」
頭だけでゆっくり後ろを見ると真っ赤になったランさんと、その様子を暖かい目で見守っているケニーさんが居た。
三人で椅子に座り、落ち着きを少し取り戻す。
「いやー、恥ずかしい所を見られてしまったね」
まだ恥ずかしいのか耳を真っ赤にして机に突っ伏すランさんをよそに、満面の笑みで話し出すケニーさん。成し遂げた漢の顔である。
「こちらこそ大事な時にお邪魔してしまってすみません…」
「とんでもない!真っ昼間の店の中なんだからゴート君は悪くないさ」
「本当だよ!何であんたはよりによってこんなタイミングで…」
「ごめんねラン。少しでも早く伝えたくて」
「全くもう…」
何だろう。空気が甘くなってきた。
ケニーさんの話を聞いた所によると、何でも、お互いの気持ちは何となくわかっていたが仕事の事を考えると中々踏み出せないでいたらしい。
そんなとき、最近ケニーさんのお父さんが鍛冶組合の仕事を引退し家業に専念することになり、またランさんの店でも親戚の子を見習いとして迎える事が決まって、結婚するなら今しか無いってことで気持ちを改めて伝えたらしい。
「何だか慌ただしくなっちゃいましたけど…ケニーさん、ランさん、改めて結婚おめでとうございます!俺も凄く嬉しいです!」
「ゴート君ありがとう、本当に嬉しいよ」
「ゴート、ありがと」
二人らしい反応に思わず笑いがこぼれた。
長居するのも何となく照れ臭いので用件を伝える。防具の受け取りは三日後以降になるようだ。それまでは予備の防具を着ておけばいいだろう。
防具を置いて店を出る。
ランさんとケニーさんが好意を寄せあっているのは何となく、気がついていた。だから二人が結ばれたことはとても嬉しい。嬉しいのだが、なぜだろうか。少しだけ寂しく思っている自分がいた。
朝食を何時ものようにおっちゃんの所で食べてから、黒鉄へ向かう。
「こんにちは。ケニーさんいますか」
「いらっしゃい。すまないがケニーは留守にしていてな。代わりに私が用件を聞こう」
扉を開くとケニーさんの姿は無く、筋肉隆々の壮年の男性が作業していた。
「おっと、初めてのお客さんか。私はケニーの父親のドーガという。以後宜しく頼む」
「ケニーさんの…。あ、俺の名前はゴートといいます。冒険者です。こちらこそ宜しくお願いします!」
ケニーさんの店には何度もお世話になっているが父親は初めてだ。少し焦った。
「元気があって何より。さてゴート君、息子に用事がある様子だったが?」
「えっと、近々旅に出ようかと思っているのですが、その前に武器一式の整備をお願いしようかと思いまして」
「成る程。それは良い心掛けだ。こういう一手間を怠ると良い冒険者にはなれないからな。では武器を出してくれるか?」
台に短槍と投げ槍三本を置くと、ドーガさんは少し全体を見た後、軽く振り納得したように話し出した。
「全部息子の自作とは。ゴート君にはずいぶんと贔屓にしてもらっているようだな」
「贔屓というか、俺の方こそケニーさんには冒険者になりたての右も左もわからない頃から相談に乗ってもらったり、良くご飯に連れていって貰ったりとお世話に成りっぱなしで…寧ろこっちが感謝したい位です!」
「そうか…。息子が冒険者の方々と良い関係が築けているようで安心したよ。武器は責任を持って整備しておこう。明日の午後には出来てる筈だ。因みに料金についてだが息子に聞かないとわからないのでな。受け取りの際で頼むよ」
「わかりました。明日取りに来ますのでお願いします」
用件も済み店を出ようと扉に手を掛けると後ろからドーガさんの声。
「ゴート君、良ければこれからも息子と仲良くしてやってくれ」
振り替えると照れ隠しなのかせかせかと商品を整理しているドーガさんの姿が。
「勿論です!」
黒鉄で武器の整備と来れば次は労働者で防具の整備だ。
魔道具はこの前整備したばかりだから問題ない。
労働者は黒鉄からすぐ近くの少し歩いたところにある。
店の前に着いてふと思う。ここにも随分とお世話になったと。
初めての防具購入から今に至るまで、成長に合わせて調節してもらったり、動き易さは維持したまま耐久性を上げるように試行錯誤してもらった事、そしてさっき寄ってきた黒鉄の紹介等、他にも沢山。挙げるとキリが無い。
ランさんやロイさんは勿論だけどここを紹介してくれたおやっさんにも改めて感謝しないとな。
今度おやっさんの農園に差し入れでも持っていこうかなんて考えながら店の扉を開ける。
「こんに「ラン、俺と結婚してくれないか」
束の間の静寂。
これは非常に不味いタイミングに来てしまった。気まず過ぎる。
そもそもなんで日中のしかも店の中でケニーさんがランさんにプロポーズを?いや、それ自体は何の違和感もないけどさ。
とにかくここは一刻も早く店から出るべきか。
混乱している頭を懸命に働かせて出た結論に従って、店から出ようと振り向いたその瞬間、ランさんの声。
「ゴート、ちょっと待った!大丈夫だから!私達の話を聞いて!」
頭だけでゆっくり後ろを見ると真っ赤になったランさんと、その様子を暖かい目で見守っているケニーさんが居た。
三人で椅子に座り、落ち着きを少し取り戻す。
「いやー、恥ずかしい所を見られてしまったね」
まだ恥ずかしいのか耳を真っ赤にして机に突っ伏すランさんをよそに、満面の笑みで話し出すケニーさん。成し遂げた漢の顔である。
「こちらこそ大事な時にお邪魔してしまってすみません…」
「とんでもない!真っ昼間の店の中なんだからゴート君は悪くないさ」
「本当だよ!何であんたはよりによってこんなタイミングで…」
「ごめんねラン。少しでも早く伝えたくて」
「全くもう…」
何だろう。空気が甘くなってきた。
ケニーさんの話を聞いた所によると、何でも、お互いの気持ちは何となくわかっていたが仕事の事を考えると中々踏み出せないでいたらしい。
そんなとき、最近ケニーさんのお父さんが鍛冶組合の仕事を引退し家業に専念することになり、またランさんの店でも親戚の子を見習いとして迎える事が決まって、結婚するなら今しか無いってことで気持ちを改めて伝えたらしい。
「何だか慌ただしくなっちゃいましたけど…ケニーさん、ランさん、改めて結婚おめでとうございます!俺も凄く嬉しいです!」
「ゴート君ありがとう、本当に嬉しいよ」
「ゴート、ありがと」
二人らしい反応に思わず笑いがこぼれた。
長居するのも何となく照れ臭いので用件を伝える。防具の受け取りは三日後以降になるようだ。それまでは予備の防具を着ておけばいいだろう。
防具を置いて店を出る。
ランさんとケニーさんが好意を寄せあっているのは何となく、気がついていた。だから二人が結ばれたことはとても嬉しい。嬉しいのだが、なぜだろうか。少しだけ寂しく思っている自分がいた。
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