冒険者ゴートの一生

ケバブ

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四章

旅立ちの下級冒険者7

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「ゴート君、ここが野営所さ」

もうじき陽も落ちようかという頃、俺達は野営所に到着した。 

ネルさんが言っていたように小さな東屋に石組の釜戸が有るだけのこじんまりとしたものだ。

「取り敢えず少しの間休憩にしようか。勿論少しは警戒はしてて貰うけど気を張りっぱなしでも持たないし。あ、離れる時は一声頼むよ。俺は簡単にだけど夕食を作ってるからさ」

「わかりました。それじゃあ余り離れない程度に一回りしてきます。何も無いとは思いますが、念のため」

「宜しく頼むよ。もしこっちが先に出来たら呼ぶからさ」

御者の二人にも声をかけてから見回りに向かう。

俺は知らない土地や、話では聞いていても実際に訪れるのは初めての土地での依頼では可能な限り下見をする。

今回は護衛依頼ということもあって下見が出来なかったが現地についてからでも確認するべき所は何ヵ所か有る。特に一泊する場所ともなれば尚更だ。

周りの地形、退路、植生、そして特に重要なのが糞や足跡、縄張り争いの残滓といった野性動物の痕跡だ。この痕跡を見逃すと本来回避できたのにも関わらず不意に遭遇する羽目になる。

野ウサギや鹿程度ならともかく、猪や狼、熊なんかに襲われたらたまったものじゃない。

早速野営所の周りを確認していくが幸運にも野性動物の痕跡が、殆ど無い。野営所という人がしょっちゅう使う場所の近くというのもあるのだろう。

特に問題無しかと思いきや違和感の有る場所が。一部不自然に草が折れていたり千切られているのだ。

「ウサギか?いやこの高さは鹿か猪だが…良かった、この感じは鹿だ」

千切れている草をよく観察するとある程度鋭利な歯で噛み千切られているのがわかる。猪が草を食むともう少し擦り潰した感じになるのだ。

鹿なら特に問題ないだろうし、一応ネルさんに報告しておけばいいかな。

余り護衛対象から離れるのもよくないしそろそろ戻るとしよう。


「ネルさん、今のところ痕跡が見つかったのは鹿位でした。恐らく害は無いとは思いますが一応報告しておきますね」

「成る程、野犬や狼のが見つからなくて良かったよ。そろそろ夕食にしよう。といってもスープと保存用のパンだけどね」

「いえ、ありがたいですよ!冒険者組合の話では飯は個人でっていうのが基本みたいだったんで」

「ああ、確かに護衛依頼は基本的に冒険者個人でっていう事にはなっているけどあくまで'基本は'だから。キャラバンや合同依頼になるような規模ならともかく、個人で依頼する場合食事を提供する商会も少なくないよ」

確かに参加している冒険者が沢山居る依頼は食事の準備は大変そうだ。

「ましてや今回は少人数な上に、知り合いだしね。さ、先に食べちゃって。御者の二人はまだ荷物の確認や馬の世話をしてるから」

「それじゃ、お言葉に甘えて。頂きます」



食事を済ませ片付けを手伝った頃にはすっかり暗くなっていた。

光の魔道具が東屋の周りを柔らかく照す。
ネルさんの光の魔道具は良いやつらしく、光量を調整が出来るようだ。羨ましい。
俺のは調節機能はなく弱く光るだけなのだ。

「ゴート君、そろそろ夜番の順番を決めたいんだけど良いかい?」

「勿論です!」

仕事の一部でもあるので直ぐに了承する。

「それじゃあ二番目を頼むよ、どうしても真ん中はキツくてね。じゃ、最初の夜番はこっちに任せて休んでくれ」

「これも仕事の内なんで遠慮せずに任せてください。何かあれば俺もすぐ起きるとは思いますし」

「そうならない事を祈るよ。じゃ、交代の時声をかけるから」

ネルさんと夜番の打ち合わせを済ませ、東屋の柱にマントをかぶり寄りかかる。

街にいた頃依頼のため森のなかで何回か泊まったのだが、その時と比べると屋根もあるし他の人も居る。安心感が違う。

寧ろ安心しすぎて深く寝ないように気を付けて休まなければいけないな。
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