拝啓、継母様。私は貴女に捨てられましたが、冷徹で有名な領主様と幸せに暮らします。

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第1章

第1幕 最悪な日

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少し時を遡るーー。

 この日も相も変わらず爽やかな朝日に照らされて1日が始まるが、奥の座敷間から聞こえてくる甘ったるい声で全てが台無しになる。

「ねぇ、いいでしょ?優作さん」

 そう父、優作に言い寄るのは琴音の継母、美和子みわこであった。

 美和子は優作の耳元で何かを呟くが、優作は手元の新聞から一切視線を外すことなく淡白に「そうか。今度買おう」と答える。
 そんなやり取りを尻目に、琴音は静かに近くの井戸へと向かう。

ーー父は変わってしまった。

 美和子が来るまでそれなりに琴音達、秋山あきやま家は上手くやっていた。
 しかし、あの女が1度家に来てからと言うものの、父は琴音の実母を突如として家から追い出した。

 その後、美和子と再婚して以来、父はまるで心の無い人形の様に最低限のことしか話さなくなり、琴音にはもう父の笑顔を見た記憶は無かった。

「⋯⋯ふぅ」

 井戸から水を汲み、手ですくい上げると琴音は軽く顔に注ぎ、一息つく。

(今日は一段と冷えるな⋯⋯)

 琴音の朝はいつも早い。

 美和子は自分の実の娘でない琴音が気に入らないのか、父の目が届かないところでいつも暴力を振られる。
 初めのうちは罵声だけだったが、後にエスカレートしていき、今では罵声だけでは留まらず、殴る蹴るなどの暴行も繰り返されていた。

 琴音はそれを避けるために出来るだけ美和子に会わないよう早い時間に身支度を済ませることにしている。

 秋山家は、帝都の中でもかなり裕福な方で、使用人を雇っているが皆、美和子を恐れている為、基本的に琴音の事は見て見ぬふりである。

「この役立たずめ」
「この家の恥さらし」

 美和子に会う度に琴音はこの言葉を浴びせられていた。
 初めのうちは、父が助けてくれると信じていたが、後にそんな希望はとっくに捨て、琴音はもはや全てを諦めていた。






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