拝啓、継母様。私は貴女に捨てられましたが、冷徹で有名な領主様と幸せに暮らします。

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第1章

第7幕 真の正体。

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「どうしてとは⋯⋯ただの美和子キサマへのだが?」

 鋭く、冷酷で冷たい眼光に射貫かれた美和子は何も答えずにただ呆然とその場でうなだれる。

「琴音よ。大丈夫か?」

 真はもう美和子には目もくれずに琴音のもとへ駆け寄り、名前を呼ぶと優しく琴音の身体を抱き起こす。

「し、ん⋯⋯さん」

 琴音は今にも消え入りそうだがどこか芯の通った声で真の名を呼び返す。
 それに対して真は何度も頷いた後、優しく笑って見せるが、彼の眉はハの字に下がっていた。

「大丈夫だ。もう安心しろ」

 たったこれだけの言葉。しかし、琴音にとってはこの言葉だけで酷く安堵し、勇気づけられる。
 まだ会って間もないというのに、彼の言葉は不思議と琴音を安心させ落ち着かせる。

 しかし、琴音にはひとつだけ質問しなければならない事があった。

(貴方は⋯⋯一体どうして)

 だが、この問いをかける前に真の冷えきった視線は美和子へと注がれ、びくり、と美和子は小さく肩を震わせた。



「お前は何故琴音をそう邪険にするのだ」

 理解が難しい。お互いどちらかに非があるのならばそこを指摘して改善していけばいい。
 それでも無理ならばいっそ極力関わらないと割り切れば良い。
 関係など、そうやって作り上げていけばいいものを。

 しかし、この2人のここまで一方的な関係は最早異様、と一言では表しきれない。

「彼女の傷んだ髪、破れ、汚れた衣類、痩せこけ、痣だらけの身体。お前は一体今まで何をしてきたのだ?」

 今琴音へ視線を移しても、彼女の腕や顔は赤く腫れ上がり、とても痛々しく、それを見ると真は怒りが沸き立つ。

 真は静かに問うが、声音は完全に冷えきっており、段々と声には凄みが増していく。

「⋯⋯っ」

 それに伴い美和子の顔はみるみるうちに血の気が失せて蒼白になっていき、真は呆れを通り越して鬱陶うっとうしさまでも感じた。

「⋯⋯どうしてよ」

 しばらくの間黙り込んでいた美和子がふいに口を開く。

「⋯⋯っどうしてアンタみたいなこの土地の領主がこんな娘の為にここに居るのよ!」

 叫ぶ美和子に最早自我など残っていなかった。
 何者かに裏切られて自分の計画通りに事が運ばず、ましてや突如として眼下に現れた男に平手打ちをくらい無惨な姿を晒すなど言語道断。彼女の自尊心プライドが黙っていなかった。



(嘘⋯⋯)

 反対に琴音は今の美和子の吐き捨てたような言葉を聞き、目を見開くと、静かに彼の腕の中から彼の顔を覗き込む。

(真さんが⋯⋯この土地の領主、様?)

 さすがの琴音でも、顔と名前は知らなくともこの家の使用人達の風の噂を耳にした事が以前あった。

 その内容は、この土地の領主は簡単に部下や、しまいには市民までもを切り捨てる残虐かつ無慈悲な冷酷領主である、というものだった。

 しかし、今琴音の目の前にいる真は噂とはかけ離れている存在であった。
 もし仮に彼がそうだとすれば、琴音を助ける意味が分からず、美和子と一緒に殺されていてもおかしくはない筈であった。



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