その香り。その瞳。

京 みやこ

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(40)SIDE:奏太

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「あ、ふ……」
 マットに片頬を押し付けて熱い呼気を吐き出す僕のお尻に、彼がチュッと音を立てて吸い付いた。
「俺が丁寧に洗っただろ。それに、奏太の体は、どこもかしこも綺麗だよ」
 楽しそうに笑う彼だったけれど、その次に聞かされた声は、少し困ったような色を含んでいた。
「奏太のココ、ものすごくいやらしくて最高だが、少し痛々しいな。軽く舐めた程度なら大丈夫そうだが、下手に刺激すると悪化する」
 彼は僕の後孔がどういう状態なのかを説明してくれた。
 どうやら、入り口部分が赤みを帯びてぽってりと腫れているらしい。あんなにも立派なペニスを受け入れたのだから、多少ダメージを受けても仕方がない。
 いや、彼のペニスを受け入れてもその程度なのは、滴るほどに溢れた分泌液と、受け入れる側であるオメガ特有の体質だろう。本来なら裂けていてもおかしくないほど、斗輝のペニスは太く大きかったのだから。
 しかし、彼の報告を聞いて余計に気分が沈んでしまう。
 こんな状態を見せてしまったら、今度こそ、彼はなにもかもやめてしまうかもしれない。底抜けに優しい彼は、僕の怪我や体調不良をほんのわずかでも見逃さない。
 いくら僕が大丈夫、平気だと言ったところで、彼の目はすでに現状を目にしているのだから。
「……とき?」
 恐々と名前を呼んだら、またお尻の丸みにキスをされた。
「俺だって、奏太を抱きたくて抱きたくてたまらないんだ。そんな不安そうな顔をしなくても、ここでやめたりしないさ。こういう時のために清水が救急箱を用意してくれているから、おそらく問題ないだろう」
 そう言って、彼は浴室を出ていく。すぐさま戻って来た斗輝の手には、プラスチック製のボックスがあった。
 蓋を開け、中から平たい丸缶を取り出す。
「やはりな」
 苦笑しながら、斗輝は手の平に乗るサイズの丸缶の蓋を開け、中にあるクリームを右中指の先で掬い取った。腕を伸ばし、クリームが付いている指を僕に見せてくれる。
「これは即効性のある消炎鎮痛剤で、塗って五分もすると痛みや腫れが引く優れものだ。効き目は強くても副作用はないし、篠岡製薬が販売しているから安心して使える」
 小学生の頃、手に火傷を負った時に母がつけてくれた軟膏みたいに白い。そしてハンドクリームよりも、ややしっかりした質感をしている。
「オメガの体はアルファを受け入れるようにできているが、それでも番との体格差があったら、どんなに回数を重ねても多少の負担がかかってしまうんだ。奏太は初めて俺に抱かれた訳だから、清水がそこを見落とすはずはないな」
 さすが、斗輝の右腕として名高い清水先輩だ。
 感心していると、「じゃあ、塗るぞ」と声を掛けられる。
 斗輝は腕を引っ込め、後孔の入り口に薬が付いた指をソッと当てた。 
 入り口周辺に丁寧な仕草で薬を塗りこめた彼は、「念のために、ナカも塗っておくか」と言って、中指を静かに挿入してくる。
 分泌液が滲んでいて、さらに薬の滑りを借りて、彼の指はすんなりと侵入を果たす。
 ゆっくりと指の付け根まで挿入した斗輝は、慎重に抜き差しを繰り返した。
「奏太、痛いところはあるか?」
 ナカを探りながら尋ねる彼に、僕はコクコクと頷き返す。
 斗輝の指は僕のものに比べたら、骨がしっかりしていてスラリと長い。その指がヌプヌプと前後に動くものだから、疼いて仕方がない体がいっそう熱を帯びてしまう。
「いたく、ない、よ……、あ……、あん!」
 彼の指が前立腺を掠め、途端に僕の口からは喘ぎ声が飛び出した。
「は、あぁ……、も、もう、むり……。がまん、でき、な、い……。と、きぃ……」
 はしたないおねだりをしたら、彼の中指がスルリと交代する。それからすぐに、二本の指が入ってきた。
 人差し指と中指の二本だろうが、圧倒的な存在感を持つ斗輝のペニスに比べたら物足りない。
「や、あ……、ゆびじゃ、なくて……」
「うん、分かってる。だが、後のことを考えると、今のうちにしっかりとナカにも薬を塗っておいたほうがいいんだ」
 舌っ足らずな声で不満を訴えると、彼は指の抜き差しを止めることなく話しかけてきた。
「あとの、こと……?」
「ああ。はじめにたっぷり薬を塗っておけば、もう痛みも腫れも心配ない。だから、安心して奏太を抱くことができるんだ。俺はもう、自分で自分を止められる自信がないからな」
 そう言って彼は指を引き抜くと、その手で僕の右手を取った。そして、自分の下半身へと導く。
「ほら、限界ギリギリだ」
 握らされた斗輝のペニスは、硬くて、熱くて、ビクンビクンと脈を打っていた。
「こうなったら、きっと一回じゃ収まらない」
 掠れた声で囁いた斗輝は僕の手を解放し、僕をマットの上であおむけにさせる。それから僕を横抱きにして浴室を出ると、フカフカのバスタオルで僕と自分の体を手早く拭った。
 ふたたび僕を横抱きにした斗輝は、まっすぐに寝室へと向かった。
 大きなベッドはいつの間にか整えられていて、まっさらなシーツがかけられている。
 清潔なシーツの上に丁寧に下ろされた僕は、馬乗りになっている斗輝を見つめた。
 彼もまっすぐに僕を見つめてくれている。
 その目はすごく優しいのに、漆黒の瞳の奥は欲情に揺れていて、彼が言った通りに、だいぶ切羽詰まった状態にあるようだ。
 でも、それは僕も同じこと。彼に抱かれたくて、抱かれたくて。頭がおかしくなりそうなほど、彼を求めているから。
「とき……」
 僕は怠い腕を懸命に動かし、彼の背中に回した。
 やんわりと引き寄せる前に、斗輝がきつく僕を抱き締める。
 痛いほど抱き締めてきた彼は、少し冷静さを欠いた様子でキスをしてきた。
 強く唇を押し付けて肉厚な舌を強引に侵入させると、激しく口内を弄り、舌を絡ませてくる。
 寝室内にはクチュッという水音と、僕の吐息が響く。それに、斗輝が顔の角度を変えるたび、シーツが擦れる微かな音も。
 清潔そのものの寝室に淫靡な空気が漂うのは、あっという間のことだった。

「ん、んんっ……、よわいとこ、ばっかり……。あんっ」
 今、僕は斗輝の舌で左乳首を弄られ、彼の左手で右乳首を捏ねられ、彼の人差し指と中指と薬指の三本でナカを掻き混ぜられていた。
 すっかり快感を拾う器官に変えられてしまった乳首をしつこく愛撫され、ナカで感じるのと同じくらいに気持ちよくなってしまう。
 三ヶ所同時に攻められると、訳が分からなくなるほど気持ちよくて、それが少し怖かった。
 快感のままに喘ぎ、ボロボロと涙を零していたら、いったん口を外した斗輝がクスッと小さく笑った。
「奏太の乳首があまりにも可愛いから、弄らずにはいられなくてな」
「そんなとこ、かわいく、な、い……。やあぁっ!」
 反論を口にした途端に右乳首がキュウッと抓られ、おまけにクニクニと指の腹で擦り潰された。
「可愛いよ。ぷっくり膨らんで、ツンと尖ってさ。赤みが増しているところが、本当に可愛い」
 彼の指が乳首を弄るたびに、コリコリとした感触を自分でも感じる。舌で強めに転がされている左乳首も、同様に硬くなっていた。
 浴室でかなり高められた状態だった体をさらに愛撫されると、激しいうねりのような快感が巨大な塊となって襲い掛かってくる。
「や、だ……、ん、くぅ……」
 首を左右に振ってやり過ごそうとするものの、まったくうまくいかない。
 それどころか、彼の愛撫はさらに情熱的になって、僕の体の奥で生まれる熱の温度をグングンと押し上げていった。
「本当に嫌なのか? 乳首を弄られるたびに、奏太のナカがキュウッて俺の指を締め付けているんだが」
 ほんの少しだけ意地悪く笑う斗輝は、右乳首に歯を立て、左乳首をピンと指で弾く。
 その瞬間、ビクンと僕の体が跳ね上がった。
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