【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす

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悠久の王・キュリオ編2

《番外編》ホワイトデーストーリー1

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※作者より皆さまへ
再び少し未来の部分となりますため、【副担任のアラン】として学園へ身を置くキュリオが登場致します。ご説明がないのは、別で先行しております物語のイベント編となっているためです。何卒ご了承くださいませ。



「アオイ姫様! 弁当は俺が持ちます!」

「う、うんっ! ごめん!」

 今朝も少し遅い目覚めに慌てているのは、この城の姫と世話係の剣士カイだった。いつもは父親の居る広間へ顔を出し挨拶をするのが決まりだが、今朝はもう出掛けていると聞いてそのまま城門へ急ぐ。

 城を出てから城門を突破するまでにも敷地が広いため、鍛えていないアオイの肺と心臓はそれだけで激しく乱れてしまう。

「ありがとうカイ! いってきますっ!」

「いってらっしゃいませ! お気を付けてっ!」

 受け取ったジルの重箱弁当が今度は腕へと圧力をかけ、キュリオに贈られた首元のチョーカーがしっとりと汗に濡れて光る。指の腹ほどの太さのそれは、落ち着いた藍色の帯に銀色の花を模った装飾品がぶら下がっている。そして何よりも美しいのがその中心にはめ込まれた真珠という海の宝石の輝きだった。

「ちょっとアンタなになに~? ついに男でも出来た!?」

 そう好奇な眼差しと声で覆いかぶさってきたのは大親友のミキだ。

「うん? どうして?」

「もーっ! とぼけちゃってぇ~! これは何かね?」

 ニヤニヤと笑みを深めながらキラリと光るアオイのチョーカーを指差す。

「あ、これは……」

 隠すわけでもなく、説明しようとすると教室のドアが開いて担任と副担任が姿を現した。

「よーし皆居るなー。今日からアラン先生が復帰だ! 女子は特にはしゃぎすぎないよう気を付けるように!」

 大柄の担任の念押しは体重に比例しなかったらしい。
 やすやすと跳ねのけた女子生徒の声と眼差しを見ればそれは明らかだった。

「きゃぁああっ! アラン先生!! 寂しかったぁあっっ!」

「またイケメン度が増してるっっ! 眩しすぎるんだけど!?」

「いい匂い~! マジ王子っっ!!」

 王としての仕事が忙しかったキュリオは、ここ数日副担任のアランを一時休止していた。唯一、彼の身分を知っている学園長がうまく取り計らってくれたため、さほど大きな騒ぎにはならなかった。

『アラン先生どうしてたんだろうね? 病気とかじゃなさそうだから安心したけど……』

 ミキが声を下げながら背後のアオイを振り返る。

『うん……、でもすこしお疲れ気味かも……』

(お城の外でお仕事をされることは少なくなったけど、相変わらず執務室に籠りっきりだし……)

 それでも合間をみて会いに来てくれるのだからキュリオに感謝せざるを得ない。
 そして食事中も笑みを絶やさず接してくれるのは他でもないアオイのためだろう。

『えー? そう見える? 肌もちょーツルツルだし……ってアンタがそう見えるならそうかもしれないねぇ』

『どうして?』

 意味深な言葉を呟いた親友にドキリとしながらも聞き返す。もしアランとの関係性がバレてしまったら学園にいられなくなるかもしれないという不安と、なによりもキュリオに迷惑がかかることをアオイは恐れていた。

『んー……うまく説明できないけどさ、アオイとアラン先生ってよく見つめ合ってるじゃーん?』

 心の中ではアオイとシュウがうまくいくことを願っているミキだが、アオイとアランの間に流れる刺激的なムードが好きなのも事実だ。

『そ、そんなこと、ないって……!』

(ミキ、絶対面白がってる!)

 気づかれてはなるまいと必死に隠そうとすればするほど、彼女の瞳はいやらしく何かを期待する色を強めていく気がする。

『ふ~ん? そのチョーカーも実はアラン先生からだったりして?』

『えっ!?』

 後ろから背中を叩かれたように激しく脈うつアオイの心臓。
 下手なことを口走ってしまうのは危険だと判断したアオイだが、隣りから出された助け船に喜んで飛び乗ることにした。

『……うるせーよミキ』

『うるせーって何よ! せっかくのアラン先生が復帰したんだし、これくらいいいでしょ!』

『……シュウ大丈夫? 寝不足なの?』

『まぁな……』

 アオイに声を掛けられ、なぜか照れくさそうに顔を伏せて眠りの姿勢に入った少年に首を傾げる。

『シュウ? どうかした?』

『ヤダねこの子は! 無粋なこと聞いちゃいかんよ!!』

『うん?』

(ミキは何か知ってるみたい……。私、やっぱりお勉強不足なのかな……バレンタインデーも知らなかったし……)

 こうしてシュウはほとんどの時間を寝て過ごし、アオイとミキはそれなりに勉強に打ち込んで昼を迎えた。




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