異端魔法の加護

Rin.

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序章「異端魔法使い、現る。」

04.正統魔法と異端魔法

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 二人の少年少女は――――空翔くうと璃衣花りいかは、手を取り合ったまましばしの間見つめ合い――

「って、なにずっと繋いでるのよ!?」

 そんな少女の言葉で、現実に引き戻された。

「ご、ごめんっ!可愛かったからつい!」

「――っ!」

 思ったことをそのまま言ってしまう空翔と、それを受けて真っ赤になる璃衣花。そして自分の言葉を胸の中で反芻し、璃衣花より少し遅れて赤くなる空翔。しかし、お互い赤面しながらも言葉が途絶えることはなく

「ばっ、ばっかじゃないの!?私が可愛いとか、そんなわけないじゃない...」

「いや、お前は充分可愛いだろ...って無言で術式紙向けるのはやめてください。怖いです。可愛いは撤回しますほんとうにすいませんでしたぁぁぁ!」

「べ、別に撤回しなくてもいいのに...私だって褒められたらそりゃ嬉しいわよ...」

「んえ?なんか言った?」

「何も言ってない!」

「なんで怒られてるんだろうなぁ!?」

 なかなか思いが噛み合わない二人がそんなやりとりをしている内に、黄金色に輝いていた太陽はその身を潜め始めていた。それに気付いた空翔は咄嗟に口を開き

「も、もう暗いし続きはどっかで飯でも食いながら話そうぜっ!」

「ど、どうしたのよ急に...まあいいけど。」

「そ、そう来なくっちゃ!この辺美味い飯屋とかある?」

「んー、そうねぇ...私のお気に入りのお店を教えてあげるわ。」

「おお!行こう行こう!」

「なんでそんなに急かすのよ...もしかして空翔、暗いの苦手なの?」

「は、はぁ!?そ、そんなことねえし!?暗いの大好きだし!?」

「――第五階級術式遮断魔法、アンク」

 明らかに怪しい態度の空翔に、璃衣花は術式紙を向け小さく呟く。すると彼を取り囲むように黒い球体が出現し

「ぎゃあああああああ!なんだこれ!?何も見えない!暗い!怖いよ助けてええええええ!」

「はぁ...やっぱり暗いの苦手なんじゃない。なんでわざわざ強がったのよ...アンク解除。」

「ふぁぁ...怖かった、怖かったあああああ!」

「ちょっ、泣きながら抱きつかないでよ!?やめなさいよおおお!」

 恐怖のあまり我を忘れ目の前の少女に抱きつく空翔。再び顔を赤らめながらもそれを振りほどこうとする璃衣花。しかしなかなかその拘束を抜け出すことはできず

「――――――――(涙)」

「離れなさい!離れなさいってば!...もう、なんでこうなったのよおおおおお!」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

「取り乱してしまい誠に申し訳ございませんでした。」

「ホントは沢山言いたいことあるけど...まあ素直に反省してるようだし、今回は許してあげるわ。」

「ありがとうございます!!!」

「ただし!次は絶対に許さないからね!わかった!?」

「はい!肝に銘じて!」

 街から少し外れたところで、正座で謝罪する少年と、その少年を見下ろす少女。たまたま通った人がそんな奇妙な光景を見なかったことにし、過ぎていくのを少女は肌で感じていた。

「もういいから、早く立ちなさいよ。ご飯食べに行くんでしょ?」

「は、はい!行きましょう!」

「敬語じゃなくていいわよ...」

 奇妙な会話を繰り広げながら、璃衣花の案内で店に向かう二人。気まずさを感じながらも二人は歩を進め、そして

「おお...ここが璃衣花のお気に入りか...」

「ええそうよ。ここのご飯はとっても美味しいの!」

「それは楽しみだ...だけど...」

「だけど?」

「美少女には似合わない感が否めないぜ...」

 その店の看板には大きく太い文字で【漢食堂】と記されていた。窓から覗いてもそこにいるのは店員も客も筋肉質の男ばっかりで、空翔のようなただの高校生や、璃衣花のような可憐な少女はとても場違いな気がした。しかし璃衣花当人は気にしている様子はなく

「何言ってるのよ。いいから行くわよ!」

「え、ちょ、えええええ!」

 そう言って、空翔の腕を強引に引き、店へと入って行くのだった。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

「うま...!?」

「でしょー!私が気に入るのも納得でしょ♪」

「うん...正直これは予想外だった...」

 15分後、空翔はこの店の味に驚きを隠せないでいた。彼が注文したラーメンは、その店の雰囲気に似合わぬあっさりさ、それでいて口が物足りなくなることのない程よい油分、そんな二つの要素を兼ね備えていた。それに舌鼓を打つその反応に、璃衣花は満足したらしく

「そこまで美味しそうに食べて貰えると、紹介した甲斐があったもんだわ。そうだ、何か聞きたいこととかないの?いくらでも答えてあげるわよ♪」

 そんなことを言っていた。それを聞き空翔は空翔で喜び、そこから会話に花が咲いた。



――この会話が、二人の運命を大きく変えることになるとはそのときは誰も知らないのだった。



「そうだ!魔法使わせてよ!術式魔法!」

「ええ、いいわよ。ここで使っても大丈夫なのなら...これなんてどうかしら?」

「見てもわかんねぇ...てかやり方わかんねぇ!」

「術式魔法は簡単よ。ただ自分の魔力を手から放出すれば、あとはその魔力で魔法が発動されるの。」

「魔力ってどう出すんだよ...」

「手に意識を集中して、イメージするの。体の中の力が手に集まってくる感覚を想像する。そうすれば、気付いたら手のへんが青く光ってるはずよ。」

「そんなんでいいのか...まあ疑ってても始まらないし、やってみっか!」

 そう言って空翔は言われた通りにやってみる。目を閉じ、ひたすらに意識する。

『体の力を、手に...』

 意識を集中させる。なんだか、手のあたりにほんのりと暖かさを感じる気がする。そして、その閉じていた目を開いて――


「赤い...?」


――その手からは、赤い光が生まれていた。

 青と聞いていたはずなのに、自分の手からは赤い光が発生している。何かがおかしい。そう直感で理解した空翔は璃衣花に尋ねることにした。

「お、おいりぃ。なんか赤いんだけど?」

 しかし、その言葉を聞いた璃衣花の顔は驚愕の色で溢れており

「う、嘘でしょ...?なんで緋魔力持ちがこんなところにいるの...?」

「りぃ?どうした?これってこのまま術式紙に触っていいのか?」

「ダメ!触らないで!触ったら死ぬわよ!」

「―――っ!?」

 術式紙に伸ばしかけていた手を咄嗟に引っ込める。触ったら死ぬ?どういうことなのか。璃衣花が何か変なことを言ってるのではないか、とも疑ってしまうほど、その話は現実味がなさすぎた。しかし、璃衣花の鬼気迫る表情がそれを事実だと裏付けているようで、空翔は言葉を発することが出来なかった。

「―――――。」

「ごめんなさい、取り乱したわ。......実はね、魔法のことでまだ話していないことがあったの。聞いてくれる?」

 無言で頷く。

「あのね、今まで空翔に教えた魔法は、全部正統魔法と呼ばれる物だったの。正統魔法はその名の通り、この世界で正式に使われる魔法のこと。私は正統魔法しか使えないし、それはきっとこの国で一番の魔法使いでも同じだと思う。ただ、そんな名前で区分するからには正統じゃない魔法もあるのよ。その名前は《異端魔法》。異端魔法使いは、異端って言われるだけあって正統魔法が使えない。それどころか術式紙を使おうとすればその魔力が暴走して死に至ってしまうわ。ただそれだけにその力は絶大なる物でね、異端魔法使いは使いたい魔法を想像してその名を呟くだけでその魔法が使えてしまうのよ。しかも威力も正統魔法に比べて遥かに大きいから、全世界から恐れられている。だからね、異端魔法使いは普通、生まれた瞬間に殺処分されるわ。」

「殺処分!?」

「ええ、残酷な話だけれどね。そして、異端魔法使いには共通の特徴があるのよ。」

「まさか、それって...」

「そうよ。異端魔法使いは赤い魔力――――緋魔力を持っているのよ。」

「っことは、俺は...」





「――――そう。空翔はこの世で恐れられている存在、異端魔法使いよ。」
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