6 / 11
序章「異端魔法使い、現る。」
06.七々瀬の血統
しおりを挟む
「え、えーっと、よく聞こえなかったのでもう一度お願いできますか...?」
璃衣花の突然の言葉に首をかしげる空翔。なんとなく、歓迎されている事だけは理解出来たがしかしまた聞き覚えのない言葉が出てきて彼は混乱していた。
「だーかーらー!あんたをこの七々瀬家の専属魔法使いに任命するっつってんの!何でそんな変な顔してんのよ!?」
「うーんっと...まず専属魔法使いってナンデスカ?」
「そっか...それすら知らないのね...」
「なんかゴメンナサイ。」
「いいわよ別に、空翔のせいでもないし。てかその喋り方やめなさい!なんか調子狂うから!」
「...はーい。で、改めて専属魔法使いって何?」
普段の様子に戻る二人。そしてその進まなかった会話が、やっと空翔の言葉で再開した。
「専属魔法使いってのは、普通はどこかの家に仕えて何があってもその家のために最優先で魔法を使う人のこと。ってのがこの言葉の定義で、世間の認識。実際のところは、その名目で曰く付きの有力者を大きな家が匿ってることが殆どなんだけどね。世の中から見たら一つの家に忠誠を誓う存在ってことだから、その肩書きだけでも決して悪い顔はされないのよ。」
「なるほど...ちなみに、俺が専属魔法使いにされそうな理由は世間の認識での意味なのかそれとも実際の現状での意味なのか、どっちなんだ?」
「どっちもよ。異端魔法使いで魔法についても理解のある存在なら、この七々瀬家ですらも守ってくれるって信じてるし。だけどその異端魔法使いってだけで殺されかねないから、そのへん全部揉み消せるって意味もあるし。」
「それはほんとにありがてえ。てか、七々瀬家ですらって言ってたけど、お前の家ってそんなにやべえの?なんかやらかしちまったの?」
「...実はね、今の国王の政治ってとんでもない独裁なのよ。ただ、ずっとそれの言いなりなんて嫌だから、数年前に八つの家が立ち上がったわ。そのうちの一つがこの七々瀬家。うちはさ、家族親戚揃って魔法力だけ八家の中でも飛び抜けて高くてさ、だから表立って国王の政治に牙を剥いてるの。おかげで国民からの好感度はかなり高いけど、その分王に一番睨まれてもいるの。正直そろそろ潰されかねないとも懸念されていたわ。でも」
「そんなとこにたまたま異端魔法使いの俺が現れたってか。そんでそんな存在を逃すわけにはいかないんだな?国民のためにも家のためにも。」
「そ、理解が早くて助かるわ。だからね、その...あのね...っ」
「?」
七々瀬家の事情を理解し、本格的に話を進めようとする空翔。しかし何故か眼前の少女が俯いてしまった。その声には不安が見え隠れしていて、空翔は頭の中が真っ白になってしまった。しかし口を閉ざすことだけはできず、その曖昧な会話だけが続いていく。
「お、おいどうしたんだよ?」
言葉が零れる。目の前の少女の肩が揺れる。少しするとその少女の、璃衣花の顔が徐々に空翔の目を向き――
――彼女はその美しいオッドアイから大量の涙を流し、空翔に告げるのだった。
「ごめんね、ごめんね空翔。こういう時、なんて言ったらわからなくて...あのね、空翔っ...!お願いだから、この国、を...この家を...っ...す、救って...?」
――その言葉に対し、空翔の答えは迷う間もなく決まっていた。いきなり知らない世界に呼び寄せられ、殺されかけ、そんな空翔を救ってくれたのは全て璃衣花だった。過ごした時間はまだ半日も過ぎていなかったが、空翔を決心させるには充分だった。空翔の命を助け、空翔にこの世界のことを教えてくれたその少女が、目の前で泣いていて、それを助ける手立てを自分が持っている。そんな状況で動けない人間がいるだろうか?少なくとも空翔はそうではなかった。そして彼は
「任せろ。この国もお前の家も、お前自身も、俺が全部守ってやる。」
少女を抱きしめながらそう告げた。
少女の泣き声が、大きな屋敷に木霊していた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
広い廊下に響く小さな二つの足音。片方は慣れた足取りで、もう片方は先を行く影を追うように。足元には上質の赤く柔らかい絨毯が敷き詰められ、その上を歩く者の疲労を緩和しているのではないかと後ろの足音の主に錯覚させていた。見たことのない装飾の外には雲一つない空が広がり、やっとその装飾が窓枠であることを理解する。その反対側には等間隔で大きな扉が立ち並び、それぞれのちょうど中間には、名前も知らない花の花瓶が存在する。そんな、いわゆる屋敷と呼ばれる建物の内装に、自分の前を歩く少女を追うように歩く少年――海星空翔は、見慣れない風景に圧巻されながらその一室を目指していた。
まだ空翔がこの世界に来てからは一夜しか明けていない。前日の夜は罪悪感に苛まれながらも、目の前を歩く少女――七々瀬璃衣花と同じ部屋で寝ることになった。璃衣花自身は何も感じていないようだが、空翔は屋敷の景色とその少女のことで頭が一杯だ。更には、今にも爆発しそうな頭に新たな情報が入ってくる。これ以上悩むことがあろうかと思っていた空翔だったが
「ついたわよ、食堂。私の家族も七々瀬家の使用人も、みんな揃ってるはずだから、挨拶考えておいてね。」
そんな言葉で、簡単に予想がひっくり返されたのだった。目の前で無情にも扉を開けてしまう少女。その扉の先には複数の人影が映し出されていた。そして
「さ、行くわよ。七々瀬家専属魔法使いの契約式、するんだから。」
璃衣花に手を引かれ、その中に吸い込まれていく。
――空翔の人生が大きく変わる、その瞬間を迎えようとしていた。
璃衣花の突然の言葉に首をかしげる空翔。なんとなく、歓迎されている事だけは理解出来たがしかしまた聞き覚えのない言葉が出てきて彼は混乱していた。
「だーかーらー!あんたをこの七々瀬家の専属魔法使いに任命するっつってんの!何でそんな変な顔してんのよ!?」
「うーんっと...まず専属魔法使いってナンデスカ?」
「そっか...それすら知らないのね...」
「なんかゴメンナサイ。」
「いいわよ別に、空翔のせいでもないし。てかその喋り方やめなさい!なんか調子狂うから!」
「...はーい。で、改めて専属魔法使いって何?」
普段の様子に戻る二人。そしてその進まなかった会話が、やっと空翔の言葉で再開した。
「専属魔法使いってのは、普通はどこかの家に仕えて何があってもその家のために最優先で魔法を使う人のこと。ってのがこの言葉の定義で、世間の認識。実際のところは、その名目で曰く付きの有力者を大きな家が匿ってることが殆どなんだけどね。世の中から見たら一つの家に忠誠を誓う存在ってことだから、その肩書きだけでも決して悪い顔はされないのよ。」
「なるほど...ちなみに、俺が専属魔法使いにされそうな理由は世間の認識での意味なのかそれとも実際の現状での意味なのか、どっちなんだ?」
「どっちもよ。異端魔法使いで魔法についても理解のある存在なら、この七々瀬家ですらも守ってくれるって信じてるし。だけどその異端魔法使いってだけで殺されかねないから、そのへん全部揉み消せるって意味もあるし。」
「それはほんとにありがてえ。てか、七々瀬家ですらって言ってたけど、お前の家ってそんなにやべえの?なんかやらかしちまったの?」
「...実はね、今の国王の政治ってとんでもない独裁なのよ。ただ、ずっとそれの言いなりなんて嫌だから、数年前に八つの家が立ち上がったわ。そのうちの一つがこの七々瀬家。うちはさ、家族親戚揃って魔法力だけ八家の中でも飛び抜けて高くてさ、だから表立って国王の政治に牙を剥いてるの。おかげで国民からの好感度はかなり高いけど、その分王に一番睨まれてもいるの。正直そろそろ潰されかねないとも懸念されていたわ。でも」
「そんなとこにたまたま異端魔法使いの俺が現れたってか。そんでそんな存在を逃すわけにはいかないんだな?国民のためにも家のためにも。」
「そ、理解が早くて助かるわ。だからね、その...あのね...っ」
「?」
七々瀬家の事情を理解し、本格的に話を進めようとする空翔。しかし何故か眼前の少女が俯いてしまった。その声には不安が見え隠れしていて、空翔は頭の中が真っ白になってしまった。しかし口を閉ざすことだけはできず、その曖昧な会話だけが続いていく。
「お、おいどうしたんだよ?」
言葉が零れる。目の前の少女の肩が揺れる。少しするとその少女の、璃衣花の顔が徐々に空翔の目を向き――
――彼女はその美しいオッドアイから大量の涙を流し、空翔に告げるのだった。
「ごめんね、ごめんね空翔。こういう時、なんて言ったらわからなくて...あのね、空翔っ...!お願いだから、この国、を...この家を...っ...す、救って...?」
――その言葉に対し、空翔の答えは迷う間もなく決まっていた。いきなり知らない世界に呼び寄せられ、殺されかけ、そんな空翔を救ってくれたのは全て璃衣花だった。過ごした時間はまだ半日も過ぎていなかったが、空翔を決心させるには充分だった。空翔の命を助け、空翔にこの世界のことを教えてくれたその少女が、目の前で泣いていて、それを助ける手立てを自分が持っている。そんな状況で動けない人間がいるだろうか?少なくとも空翔はそうではなかった。そして彼は
「任せろ。この国もお前の家も、お前自身も、俺が全部守ってやる。」
少女を抱きしめながらそう告げた。
少女の泣き声が、大きな屋敷に木霊していた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
広い廊下に響く小さな二つの足音。片方は慣れた足取りで、もう片方は先を行く影を追うように。足元には上質の赤く柔らかい絨毯が敷き詰められ、その上を歩く者の疲労を緩和しているのではないかと後ろの足音の主に錯覚させていた。見たことのない装飾の外には雲一つない空が広がり、やっとその装飾が窓枠であることを理解する。その反対側には等間隔で大きな扉が立ち並び、それぞれのちょうど中間には、名前も知らない花の花瓶が存在する。そんな、いわゆる屋敷と呼ばれる建物の内装に、自分の前を歩く少女を追うように歩く少年――海星空翔は、見慣れない風景に圧巻されながらその一室を目指していた。
まだ空翔がこの世界に来てからは一夜しか明けていない。前日の夜は罪悪感に苛まれながらも、目の前を歩く少女――七々瀬璃衣花と同じ部屋で寝ることになった。璃衣花自身は何も感じていないようだが、空翔は屋敷の景色とその少女のことで頭が一杯だ。更には、今にも爆発しそうな頭に新たな情報が入ってくる。これ以上悩むことがあろうかと思っていた空翔だったが
「ついたわよ、食堂。私の家族も七々瀬家の使用人も、みんな揃ってるはずだから、挨拶考えておいてね。」
そんな言葉で、簡単に予想がひっくり返されたのだった。目の前で無情にも扉を開けてしまう少女。その扉の先には複数の人影が映し出されていた。そして
「さ、行くわよ。七々瀬家専属魔法使いの契約式、するんだから。」
璃衣花に手を引かれ、その中に吸い込まれていく。
――空翔の人生が大きく変わる、その瞬間を迎えようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる