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- 玖 -
塀の向こう
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後宮の門の警備役は、ふと顔をあげた。
高くそびえる塀の内側から、なにやら騒ぎ立てる声と、焦げ臭い匂いが漂ってくる。
ついこのあいだも火事があったらしい。またか、とだけ思い、あくびをひとつ。
自分はあくまで出入りを監視するのが仕事で、そもそも男子禁制の後宮に入ることは許されていない。
だいたい、内側には女官も宦官も、腐るほどいる。
日ごろ贅沢な暮らしを享受しているのだ。自分たちの領域で起こる事件くらい、自分たちで始末すればいい。
寒空の下、暖も取れずに黙ってじっと立っているのが仕事の警備役からすれば、彼らに分を越えた親切や同情など、する義理も趣味もなかった。
「おや」
門の反対側に立っている相棒が、軽く声をあげる。
その視線を追うと、塀を越えて、一対の蝶がひらひらと飛んできたところだった。
くるくるとお互いの周りを楽しげに飛び回っている。
まるで結婚して人前で夫婦の愛情を披露することを許された、仲睦まじい男女のようだ。
そのまま門の前の広場を通り抜け、やがて上空へと姿を消した。
「蝶が飛ぶには、季節が早すぎやしないか」
警備役は首を傾げたが、折よく交代にきた同僚の姿が見えると、そんなことはすぐに忘れてしまった。
高くそびえる塀の内側から、なにやら騒ぎ立てる声と、焦げ臭い匂いが漂ってくる。
ついこのあいだも火事があったらしい。またか、とだけ思い、あくびをひとつ。
自分はあくまで出入りを監視するのが仕事で、そもそも男子禁制の後宮に入ることは許されていない。
だいたい、内側には女官も宦官も、腐るほどいる。
日ごろ贅沢な暮らしを享受しているのだ。自分たちの領域で起こる事件くらい、自分たちで始末すればいい。
寒空の下、暖も取れずに黙ってじっと立っているのが仕事の警備役からすれば、彼らに分を越えた親切や同情など、する義理も趣味もなかった。
「おや」
門の反対側に立っている相棒が、軽く声をあげる。
その視線を追うと、塀を越えて、一対の蝶がひらひらと飛んできたところだった。
くるくるとお互いの周りを楽しげに飛び回っている。
まるで結婚して人前で夫婦の愛情を披露することを許された、仲睦まじい男女のようだ。
そのまま門の前の広場を通り抜け、やがて上空へと姿を消した。
「蝶が飛ぶには、季節が早すぎやしないか」
警備役は首を傾げたが、折よく交代にきた同僚の姿が見えると、そんなことはすぐに忘れてしまった。
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