異世界から来た馬

ひろうま

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第2章 心境の変化

第7話 手入れ(騎乗後)

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◆Side ルナ◆
やよいさんとの会話後暫くして、カラドリウスを通じての神託が有った。
それにより、アイリスが私たちの元いた世界に行ったことがはっきりした。
「あなた、大丈夫?」
「え?うん。」
それ以来、ユウマはよく考え事している。
「また、アイリスちゃんのことを考えてたの?」
「……。」
「アイリスちゃんなら、大丈夫よ。馬女神が色々考慮してくれたみたいだし。」
「そうだね。でも、僕がもっとアイリスのことを理解してやっていれば、こんなことにはならなかったかも知れないと思うと……。」
彼は、父親としての責任を感じているのだろう。
「過ぎたことを悔やんでも仕方ないわ。私たちにできるのは、アイリスちゃんが向こうで幸せになるのを祈ることだけよ。」
「うん。そうだね。ルナ、ありがとう。」
彼は、私の頚を優しく抱いた。
「まあ、そういう私も少し後悔してることがあるの。」
「そうなの?」
彼は、私から手を話し、驚いたようにこちらを見た。
「ええ。私のせいで、アイリスは乗り手にレベルの高さばかり求めるようになってしまった。本当に伝えなければいけなかったことを、伝えてなかったのよ。」
「本当に伝えなければいけなかったこと?」
「ええ。それは……。」
「……。」
私は、頭を彼の胸に着けて言った。
「一番大事な人を乗せることこそ、最大の喜びだっていうことよ。」

◆Side アイリス◆
今日は最初だからか簡単な運動しか要求されなかったが、乗せた人はかなりレベルが高いのはわかった。
やはり、こちらに来たのは正解だったと思う。
しかし、久しぶりに運動したから、ちょっと張り切り過ぎた。
大した運動をしてないのに、かなり汗をかいてしまった。
こっちの世界では、体力も落ちているようだ。
ハイ・ホースと言っても、魔力が乏しい所では普通の馬とそんなに変わらないのだと思う。

乗った人は私を洗い馬に繋ぐと、馬装を解いて去って行った。
少し待っていると、シメイが現れた。
「お疲れ様!」
彼はそう言って、頚を愛撫してくれた。
「……。」
彼が頚を愛撫してくれたことに驚いた。
これまで、彼は私に触れない様ように気を付けていた感じだったからだ。
でも、触れてくれたのは嬉しかった。
それを伝えたくても、言えないのが辛い。
お父さんのように、念話が使えれば良いのだけれど……。

その後、彼の態度はよそよそしくなった気がした。
彼が愛撫した瞬間私が驚いのが、私が嫌がったと誤解させたのかも知れない。
「全身洗うね。」
彼は私にそう言って、シャワーを準備した。
シャワーは、お父さんとお風呂に入った時に、お父さんが自分や私の身体を洗うのに使っていたから知っている。
ちなみに、お風呂に入ったのは数える程しかない。
私がお父さんと一緒にお風呂に入るのを嫌がるようになったからだ。

シャワーでお湯を掛けてもらうと、汗が流されていくのを感じて気持ち良かった。
久しぶりにお風呂に入りたくなったが、こっちの世界に私が入ることができるようなお風呂があるのだろうか?
今度シメイと話す機会があったら、聞いてみよう。

◆Side 紫明◆
「お疲れ様!」
そう言いながら、アイリスの頚をポンポンと軽く叩いたした。
「……。」
あ、習慣で愛撫してしまった。今更だが、慌てて手を降ろした。
彼女が驚いた様子をしたが、嫌だったのだろうか。
ちょっと気まずくなった気がするが、手入れを続けよう。
彼女は、かなり汗をかいていた。相当頑張ったのだろう。
これは、洗った方が良いかな?
「全身洗うね。」
蹄を洗った後、彼女にそう言って、シャワーを準備した。

僕は、アイリスにシャワーでお湯を掛けていった。
被毛が有る部分は洗い用のブラシを使えるが、そうでない部分はブラシは使えない。
なので、普通直接手で洗うのだが……。
女の子の股やお尻を触るのは、矢張り気が引ける。
他の牝馬だとそんなに気にならないが(と言っても、牝馬に慣れていなかった僕は、最初ちょっと躊躇してしまったが)、アイリスは別だ。
彼女の心が人間に近いとわかっているため、僕は彼女を普通の馬と一緒にはできない。
だが、だからといって手入れが疎かになるのはもっと嫌なので、覚悟を決めて手で洗うことにした。
先ず、股。
牝馬の場合、お乳の間に汚れが溜まり易いので、汗を流した後そこをしっかり洗う。
意識しない様にしているが、残念なことに、僕の身体の一部が反応した。
そのため、何かいかけない事をしている気分になってしまう。
それから、お尻。
尻尾を持ち上げて洗い始めたが、僕は直ぐ顔を反らした。
見てないと洗い難いが、見てしまうと更に身体の一部の反応が強くなるからだ。
そういう感じで何とか洗い終わったが、毎回こんなに神経を磨り減らすのは疲れてしまう。どうにかしないと……。

なるべく意識しないようにしていたが、やはり僕はアイリスに恋をしてしまった様だ。
恐らく会った瞬間から……。いわゆる一目惚れというやつだ。
僕は、ケモナーではなかったはずなんだけど……。
先輩達が悠馬さんはルナさんに一目惚れしたというのを聞いたことがあったが、悠馬さんも同じような気持ちだったのだろうか。
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