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前編
36夢
しおりを挟む「では、浄化をしてくれ」
国王陛下にそう言われ、僕はジルと国王陛下の前で浄化を開始した。
僕が見られるのが嫌だという事で、どうやら二人だけの様だ。
「は、はい。では……」
僕はお城の大きさは、流石に1回では無理だろうと思い、抑えようとしたが、全身から魔力が吸い取られる感覚で、お城全体をやってしまった。
僕は浄化が完全に終わらせられるか不安だったが、ギリギリ魔力がもった様で、終わると同時に意識が吹っ飛んだ。
ーーーーーーー
(ジル視点)
まさか一回で終わらせるとは……魔力が完全に無くなってしまったら死に関わるというのは、分かっているだろうに。
私は内心ヒヤヒヤしながら見ていたが、父上は感動で声も出ないようだ。まあ、最初はそういう反応になるだろう。
「父上、父上!!」
私が大きめの声で呼ぶと、父上はハッとした顔で、こちらに気づいた。
「父上、ハルはギリギリまで魔力を消費してしまったようです。先に失礼しても宜しいでしょうか」
「あ、あぁ。分かった。今日はゆっくり休ませてやってくれ」
「では、失礼します」
私はハルを抱きかかえ、自室へと急いだ。
ハルは真っ青な顔をしている。命に問題は無いだろうが……どうしたものか。私はハルの頭を撫でながら考えていると、突然部屋の空気が変わった。
「っ!!」
背後に気配を感じ、後ろを向くと、そこには不思議な空気を纏った、見慣れない青年が立っていた。
「早くしないとハルがあちらに引き込まれてしまうよ」
青年は口を開くと、私とハルしか知らない事を言ってきた。
いや、違うな。私とハルの他にもう一人いる。恐らくこの人が……
「神様……ですか」
「それは後から。まずはハルを助けないといけない」
「しかし、どうすれば……」
「君は氷属性か。最初にハルの魂を、鑑定を使って探るんだ。難しいが、君ならできるだろう」
鑑定で探る?どうしたら……いや、もうイメージでいくしかない。ハルを守ると決めたのだから。
私は鑑定を発動し、ハルの魂をイメージしながら、探り始めた。すると、ハルの身体の中心から暖かいものを感じた。
「どうやら見つけた様だね。ここからが本番だ。氷属性ならなんとか出来るだろう。魂が凍らないように薄い氷で結界を張るんだ」
っ!!これが……もし失敗すれば……きっとハルは私の魔法で仮死状態になるだろう。しかし、やらなければ、ハルはあちらで死ぬ。下手したら魂が壊れてしまうかもしれない。
私は手の震えが止まらなくなるが、決心して慎重に結界を張った。一歩間違えば氷漬けになる。張り終えるまで気は抜けない。
冷や汗をかきながら、ようやく結界を張ることが出来た。
「よくやったね」
青年は、張り終えた私に声をかけてきた。
「ありがとうございます」
「では、まず私は君の質問に答えよう。その代わりに君には協力して貰うよ」
青年のその言い方はまるで……
「おっと、それ以上はダメ。取り敢えずさっきの質問だけど、君の言う通りこの世界の神だ」
やっぱりか。それに今心を読んだのか?
「心は読めるよ。好きで読んでいる訳では無いけどね」
「そうですか。では私は声に出さなくても宜しいでしょうか。城の者に聞かれる可能性がありますので」
「いいよ。私のは念話だからこのままでいいね?」
「はい。大丈夫です」
そして私は、聞きたい事は全て聞く事にした。
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