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第二章 新しい生活
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しおりを挟むオディンズの本店……初めて来たけど、なんかめちゃくちゃお洒落だ。スポーツメーカーのお店なんだよな??
「凛くん、絶対俺の手離さんでな?? 本店は母さんと父さんがイタリアから連れて来た人多くてな……グイグイ来るから気ぃつけてな」
「凛は美人で可愛いから、女の子と間違われてまうかもしれんし……性格もええからな」
何でそれをお店の前で言うんだ。もっとはやく言ってくれ。
俺はぬいぐるみを持っていない今、ゼンの腕に手を回し、もう片方の手で首に下げられたカメラをいじる。ゼルは俺の腰に手を回して、ガッチリ掴まれていた。
中に入ると、カジュアルな普段着などが置いてあって、気になってついつい見てしまう。
「凛くんなんか気になるんか??」
「いや……スポーツ関連以外にもあるんだなって。全然知らなかった」
「あー、まあ本店の一階とネットでしか販売しとらんから」
そうだったのか。お洒落だし、他店舗でも販売したらいいのにな。
俺達は止まらずに、そのままスポーツ関連が置いてある二階へと向かって、ゼンとゼルが迷いなくインナーが置いてある場所へ俺を連れて行く。
「凛!! このアンダーウェア!! ずっと思っとったんよ……凛は膝ついたり、転がる事少ないやんか。でもトシと練習ん時、後ろに転がると……中見えそうでヒヤヒヤするんや。インナーパンツ穿いて欲しい思っとったんやけど、動きづらい??」
そんなとこ見るの、ゼンとゼルしか居ないと思うけど。でも身体の負担が減るなら、穿いてみてもいいかな。最近は二段トスとかにも積極的に行くから、前より動く事も多いし。
「穿いてみようかな。良さそうなら何着か買ってみてもいいし。膝下までがいいかな??」
「そんなら俺が買ったるよ。俺が言い出したしな。試着は……うわ、兄貴どないしよ。俺試着させたない」
「うちは試着オッケーやしな。俺も嫌やわ……しゃーない。凛くんが欲しそうな、ええ感じのインナーないっぽいし……オフィス行こかあ」
俺はゼンに横抱きにされると、従業員通用口に行って、ゼルが鞄からカードを出して扉を開く。そしてエレベーターで上へ行き、途中で止まる事もなく扉が開かれると、従業員らしき人達と目があった。
『お疲れ様です』
「社長居ります?? ちょい話したい事ありまして」
ゼンとゼルが挨拶した後、ゼンが従業員の方に聞くと、固まっていた人達の中で、外国人の背の高いスラッとした男性がこっちに来た。
「(ゼン様、ゼル様、お久しぶりです)」
英語……じゃないな。イタリア語?? ゼンとゼルしか分からないや。
「(日本語で話せるだろ。その喋り方も全部やめろ。それより、オカンのところ行きたいんだよ。この子の事、聞いてるか??)」
「(オカンが居るかだけ聞けばでいいだろ。凛の事知らなくても、今は兄貴が抱いてるんだからさ)」
「(そういう訳にもいかないだろうが。これからは来る回数増えるだろうし、プロ契約しなければ、普通の選手は働きながら練習すんだから)」
うぇっ!? ゼンはまだしも、ゼルもペラペラなの!? 俺も教えて欲しいな。オカンと俺の名前だけしか分からなかった。
「ジュリはいつものとこに居る。この子は凛だろ?? ジュリとジョンから聞いてるから知ってるけど、ゼンに抱かれて大人しくしてるなんて可愛いな。あの人そっくりで美人さんだ」
日本語になったその人は、手を俺の方に伸ばしてきて、思わずゼンの方にギュッと顔を背ける。
「やめろ。凛くんに触んなや」
「ほんまに知っとるんか? 聞いたんやろ?」
「名前とお前等の恋人ってしか聞いてないぞ。他には佐良さん家の息子で、可愛くて美人でバレーが上手いってくらいだな。今はこっちに選手達は居ないから、これしか聞いてないな」
「はぁ……今日は取り敢えず、すぐ帰るからええわ。俺等も来年からこっち戻る予定やし。詳しい事は駿達に聞いてや」
俺はギュッとしたまま連れて行かれ、何処かの扉が開かれると、お義母さんの声が聞こえた。
「あら?? 凛ちゃんはどうしたの?? 貴方達が自分から来るなんて珍しいじゃない」
「凛くん、もう大丈夫やで。下りる??」
「……やだ」
「よしよーし、凛は大丈夫な奴と、ダメな奴の見分けでもつくんか?? 自分の事知っとる奴等には、触られても大丈夫やんか」
なんか、触る時の手の出し方が違うから、なんとなく分かるけど……いきなり手が伸びてきたら誰だってビクつく。
「オカン、凛くんのインナー買いきたんやけど、ピチッとしとって、擦れんやつとかって作っとったりせんか??」
「ピチッと??……あら、ソウイウコト?? それなら、メンズ用のスポブラがあるわよ。ネットでしか販売してないのだけど、凛ちゃんのサイズがあるかしら」
「あとインナーパンツ欲しいんやけど、試着はさせたなかったから、凛に合いそうな膝下丈のサイズ、オカンなら分かるやろ??」
「待ってて、今持ってくるわ。その代わり、他のも持ってきていいかしら。凛ちゃんイメージの試作品着て欲しいのよ。気に入ったらそのままあげるわ」
そう言ってお義母さんは、部屋を出て行き、ゼンは椅子に座ると、俺の首に手をあて、深いキスをしてくる。
「どれ……ちょっと落ち着いたか?? ごめんな、連れてきてもうて」
「大丈夫。ゼン達のせいじゃない。それより、何で試着ダメなの??」
「誰が着とるか分からんやん。インナーやからな……それを凛に着せるんは嫌や」
確かにインナーは抵抗あるかも。俺は試着しない派だから、そこまで考えてなかった。
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