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第四章 縛りと役目
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「スイセン、ユラ……止まれ」
それだけ言うと、凛くんは俺達を抱きしめたまま眠ってしまい、スイセンとユラは止まれる筈のない体勢で止まっていた。
「……なんやこれ。それになんか倦怠感が半端ないんやけど」
「兄貴もか?? 俺もなんや怠くて動けんわ」
「凛は自分の傷を一時的に止めて、川まで逃げてたのよ。こっちで出来る事は本当に少ないけど……そろそろ解けるわよ」
「カカ様!! カカ様ごめんなさい。僕守れなかった。今の何?? 僕も出来る??」
スイセンは、小さくなって凛くんに突撃するが、凛くんは俺等よりも疲れているのか、深く眠っている。
「落ち着けスイセン。興奮しすぎや……俺等も身体怠いから、あんま騒ぐな」
「佐良さん……凛くんに執着しとる悪魔居ますよね。それって、こっちの奴ですか??」
「……あれは違うわ。こっちでは、どうする事も出来ないの。だから悪魔憑きさえなんとかしておけば、取り敢えずは大丈夫な筈よ……詳しく知りたいなら、日本にはそっち系の漫画や小説があるでしょ。それを参考にするといいわ。あっちは私達の管轄外だから、聞かれても分からないのよ」
「親父が読んどったやつやない?? 凛に聞いてもええけど、レシーブ教える時と同じで、意味わからん説明やと思うんよな」
確かに……今も見ててって言っただけやし、説明出来んのやろうな。親父にオススメの本教えてもらうか。
「そういえば、ジョンが言ってたわ。ゼンとゼルが私達とは、また違うものを使ってるんだって。あっちの事はジョンと隆二が一番詳しいと思うわよ。それと隆一もね」
隆二さんとコーチも詳しいんか。ちゅーか、コーチは天界の住人……まあ、そうやろな。隆二さんと兄弟やし、リュカの親父やし。リュカの母親は見た事ないけど、どうなっとるんやろう。
「佐良さん、リュカは……」
「リュカは気付いているのかどうなのか……いまいち分からないのよ。ずっと猫を救う事しか考えて来なかったし、今は凛に付きっきりでしょ?? 凛とゼンとゼル以外、リュカは誰も信じてない気がするのよ。だから聞くに聞けなくてね……あとは本人に聞くといいわ。私から言うべきではないから……」
「確かに、リュカさんは獣より警戒心強い気するわ」
今日あたり聞いてみてもええな。俺等の体調が回復したらやけど……それより今は、ユラをどうするかやな。
ユラを見ると、隅の方で伏せをしていて、必死に謝っているように感じる。
「ユラ、こっち来てみぃ」
俺が呼ぶと、伏せをしながらこっちに寄って来て、思わず笑いそうになるが、そこは我慢すると、ゼルが隣で吹き出していた。
「こいつの事は気にせんでええ。それよりも今はお前の事や。陣くんのとこに帰れ。斗季のとこでもええし、耀のとこでもええから、親のとこに帰り」
するとフルフルと首を横に振って、凛くんの服を噛んで軽く引っ張っている。何かを訴えてる気もするが、俺には言葉が分からないため、帰りたくないと言ってるようにしか思えなかった。
「トト……ユラがカカ様に、大学行くなって。僕が寝てるといつも穢れ増えてるの。カカ様座るとこ、穢れいっぱいなの」
どういう事や?? 椅子が穢れてるって事か?? それ普通の汚れやないん??
「あー、俺分かったかもしれん。いつも凛が座った後、群がっとるんや。誰が座るかってな。気色悪いから、いつも別な場所座っとるんやけど、偶に凛の名前が机にむちゃくちゃ書かれとる場所もあるんや。絶対座らんけど、少なくとも凛の事を講義中に考えとる、ヤバい連中が居るっちゅう事やんか」
「なんで言わんのや。そんなんやったら、大学なんか行かせんのに」
「凛に気付かれるやろ。大学なんかいろんな奴居るし、しゃーないやろ。それでも凛が楽しそうに講義受けとるから、行くななんて言える訳ないやん」
楽しそうに……それは無理や。凛くんは勉強好きやからな。講義が面倒なんて思わんのやろうな。
「早いところ服を作って貰うしかないわね。それと柏木……は、頼り無いわね。洸も編入するには遅いし、リュカを連れて行ったらどう?? ずっとくっついてるんでしょうから、一緒に行動してもらったらいいじゃない」
「それしかないか。今日はそれも含めて話し合ってみます。それと……俺等練習どころやなくて、ほんまに動けんのですけど」
「ここで少し寝てるといいわ。それかユラに触ってると、多分回復が早いと思うわよ」
佐良さんはそう言って部屋を出て行き、俺達はユラを凛くんにくっつかせて、一緒に寝る事にした。
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