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~ 二 ~ チーム・ラオ始動!

第二十話

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「いいよ」

 ジェラルドから承諾を得る。


「えっ? 本当にイイのですか?」

 あまりにも呆気なかったので、聞き間違えなのかと考えてしまう。

「あのう、チーム・オブライエンのトレーニング時間を少し貸して欲しいと言ったのですが……」
「だからいいよ」
 本当なのか?


 コースを使用したトレーニングは重要だ。そんな貴重な時間を貸してくれるというのだ。

 ジェラルドには何のメリットもないはずだが――

「そうでもないよ」

「――えっ?」

「来週、レースに出走するコがいてね。併せる相手を探していたんだ」

 なるほど……と思う。


 とは、数人で同時にスタートして、コースを周回するトレーニングのこと。

 レース感覚を身に付けるために行うのだが、調子を変えたいという場合にも有効だ。ただし、相手が同レベルでないと、かえって調子を崩してしまう場合もある。

 通常、チーム内で併せる相手を探すのだが、適当な相手が見つからない場合、関係の深いチームに頼んで、合同トレーニングを行うこともある。

 しかし、発足したばかりのチーム・ラオとオブライエンは、当然ながら何の協力関係もない。しかもジェラルドとはほとんど初対面。そんな相手に大事なメイド達の相手をさせるのだ。普通なら安全面や心情的に敬遠するものだが――

 それでも、ジェラルドはイイと言っている。

「十六歳以上の一勝クラスだけど、そのコにはちょうどイイ相手だろ?」

 一勝クラスというのは文字通り一勝しているメイド達のこと。

「……ですが殿下、ニーニャはまだデビュー前の十五歳ですが……」

「殿下はやめて。まだ王族に席はあるけど、王宮からはもう出ている。ジェラルドでいいよ」

「いや、しかし――」

「長い? じゃあ、『ジェル』でも『ジェ』でも好きに呼んで」
 別に長さではないと思うが……

「ですから、このコは――」

「ボクは年齢やクラスでなく彼女達の能力で『併せ』を行っているんだ。そのコなら一つ上と併せるべきだと思うよ」


 実のところラオもそう思っていた。だからといって、いろいろ注文するのはさすがに図々しい。今日はトレセンのコースを知ってもらうくらいで充分だと考えていたのだが――

 そのうえ、併せてもらえるのだからありがたい。

「それではお願いします」

 ジェラルドは「ん――」と短く返事すると、勝手に歩き出す。付いて来いということか?
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