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~ 四 ~ 草メイドレース
第八十話
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ミリタリアがやってきて一週間。彼女の走りは――全く変わらない。
「すみません……やっぱり私は失敗作なんです」
失敗作――彼女の口から何度も出てくる言葉。
彼女は王国三大貴族、ブルームハルト侯爵と重賞を三勝したサンフレアの娘として命を受けた。
二つ上の姉には重賞フラワーカップを勝ったナフタリアがいる。
腹違いの姉妹に至っては活躍したレースメイドの枚挙に暇がない。
そんな彼女である。当然、生まれた時からレースメイドとしての活躍を期待されていた。
五歳になるとトレーニングが開始される。しかし、物覚えの悪い彼女は同世代の子供たちから遅れを取るようになる。
ブルームハルト家の娘として、他の子に負けるのは許されない――
そんなプレッシャーの中、彼女は苦しんだ。
追い打ちをかけるように――
「アナタのお姉さんは同い年の友達に負けたことなんてなかったのよ」
母親の叱責だった。
「妹に負けるなんて……いったい、どういうつもり?」
ことあるごとに母親は彼女を責めた。
仕舞いには――
「……アナタは失敗作ね」
幼いミリタリアにとって、母親の心ない言葉でどれだけ傷付いたことだろう――
それでも、母親は容赦なく彼女を「失敗作」と罵り続けた。
走る度に彼女は怒られ、しだいに走ることが嫌いになった。
しかし、『走って勝つ』、それが運命付けられた立場であることも幼いながら理解していたミリタリアは、それでも走り続ける。
やがて、心もカラダも蝕まれ、一年以上走れない時期が続いた。
こうなると、同世代との差は決定的となる。
もうすぐデビューという時期になっても、オーナーも所属トレーナーも決まらない状態だった。
なんとか、王都のチームに所属できたのだが、初戦の大敗で見切りを付けられ、父親から引退を付きつけられた。
侯爵家とのつながりを持ちたい下級貴族が縁談を持ちかけてきたこともあったのだが、そんな家に嫁がせるほうが「家の恥」だと、父親は奴隷商人に彼女を売ったのだ。
「すみません……やっぱり私は失敗作なんです」
失敗作――彼女の口から何度も出てくる言葉。
彼女は王国三大貴族、ブルームハルト侯爵と重賞を三勝したサンフレアの娘として命を受けた。
二つ上の姉には重賞フラワーカップを勝ったナフタリアがいる。
腹違いの姉妹に至っては活躍したレースメイドの枚挙に暇がない。
そんな彼女である。当然、生まれた時からレースメイドとしての活躍を期待されていた。
五歳になるとトレーニングが開始される。しかし、物覚えの悪い彼女は同世代の子供たちから遅れを取るようになる。
ブルームハルト家の娘として、他の子に負けるのは許されない――
そんなプレッシャーの中、彼女は苦しんだ。
追い打ちをかけるように――
「アナタのお姉さんは同い年の友達に負けたことなんてなかったのよ」
母親の叱責だった。
「妹に負けるなんて……いったい、どういうつもり?」
ことあるごとに母親は彼女を責めた。
仕舞いには――
「……アナタは失敗作ね」
幼いミリタリアにとって、母親の心ない言葉でどれだけ傷付いたことだろう――
それでも、母親は容赦なく彼女を「失敗作」と罵り続けた。
走る度に彼女は怒られ、しだいに走ることが嫌いになった。
しかし、『走って勝つ』、それが運命付けられた立場であることも幼いながら理解していたミリタリアは、それでも走り続ける。
やがて、心もカラダも蝕まれ、一年以上走れない時期が続いた。
こうなると、同世代との差は決定的となる。
もうすぐデビューという時期になっても、オーナーも所属トレーナーも決まらない状態だった。
なんとか、王都のチームに所属できたのだが、初戦の大敗で見切りを付けられ、父親から引退を付きつけられた。
侯爵家とのつながりを持ちたい下級貴族が縁談を持ちかけてきたこともあったのだが、そんな家に嫁がせるほうが「家の恥」だと、父親は奴隷商人に彼女を売ったのだ。
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