追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

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第二話 クズ勇者、旅に出る

その十五

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 まさか、こんなところでカレーが食べられるとはなあ――

「ごちそうになってばかりで、申し訳ない」オレはアスワンにお礼を言う。

「何を言うんだい? 今日はグエルさんのおかげでウチに犠牲者が出なかったんだ。このくらいでは、返したクチには入らんよ」とアスワンは謙遜する。

 うーん、それには触れないでほしい。
 本当はオレが出しゃばらなくても、キャラバンのメンバーだけで制圧できたんだろうなあ……オレがはずかしい思いをしないように、そう言ってくれているんだろうけど、かえってはずかしくなる。穴があったら入りたい。

「ま、まあ……オレもお役に立ちたいと、ちょっと、カッコつけてしまって……申し訳ない」
 自意識過剰男とか思われてしまったのだろうか……

「何を言っている? あんな剣さばきは、並みの冒険者ではとてもできない。いやあ、グエルさんこそ真の『勇者』ですよ」

 うっ――勇者にされるのだけはカンベンしてほしい――オレの頭の中では、勇者という言葉は、破滅と同意語になっている。もう、破滅はこりごりだ。

 オレたちが食事を終えるころ、キャラバンのメンバーが捕縛した賊たちを連れてきた。なにをするのかと思えば、カレーの残りをヤツらに与えているではないか?

「おいおい、罪人にメシを与えるなんて、さすがに人が良すぎないか?」

 するとアスワンは、「ちょっと、作り過ぎたからな」と笑っている。

「だけど、手を縛っていた縄までほどいて――逃げられたらどうするんだよ?」
「問題ない。そのために、仮の奴隷契約をしてある」

 奴隷契約は、専用の首輪型魔道具を使用して行われる。主人の言うことを聞かないと、魔力により、首輪が締まる仕掛けになっているのだ。
 たしかに、賊の全員にその首輪が装着されてあった。明日、聖教国に到着し衛兵に明け渡したら奴隷契約を解除するらしい。
 強盗は重罪だ。それだけのことをしたのだから、情けは無用なのだが、ヤツらのクビに装着された魔道具を見ると、イヤなことを思い出してしまう。そう、オレも前の人生で奴隷だった。つまり、あの首輪をつけられていたのだ。

「そうそう。明日、聖教国に到着したら、ちょっとしたパーティを開くのだが、オマエさんたちも参加してくれないか?」
 アスワンはそう言うのだが、オレとマルタ、フィルも困った顔をする。

「なんだ? なにか用事でもあるのか?」
「いや、そういうわけではないんだけど――」

 オレは彼に事情を話す。冒険者をクビになって身分を証明するモノがないから、聖教国に入れない――と。すると、アスワンに大笑いされてしまった。

「なんだい、それでどうするつもりだったんだ?」

 そうたずねられ、「城門の兵にカネを握らせて入国できないかと考えていた」と素直に話す。

「ハ、ハ、ハ.そりゃダメだ。聖教国の兵はカタブツだから、そんなことをしたら確実に捕まっていたぞ」

 ああ、やっぱり……オレは苦笑いする。危うく、また破滅するところだった。

「それなら、儂のキャラバンメンバーにならないか?」とアスワンが提案してきた。彼が身元保証人になって、聖教国への入国を手助けするという。それはありがたいことだか――

「お、おい、イイのか? 今日、出会ったばかりのヤツをそこまで信用して」

 もし、自分たちが罪人で逃亡中だったとしたら、彼もほう助の罪に問われてしまう。しかし、アスワンはそれを笑い飛ばした。

「オマエさんたちがそんな人間でないのは、今日一日の行動を見ればわかる。それに、マルタさんを仲間にしているだろ? それだけで、信用するには充分さ」
 えっ? それは、どういう意味?

「運び屋を仲間にしているグエルさんが、悪い人であるわけないってことだ」

 王国の冒険者は運び屋を格下に見ることが多い。だが、オレはマルタのことを対等に扱っているし、運び屋だらけのキャラバンをバカにすることもなかった。それで、オレのことを気に入ったらしい。

「ハ、ハ、ハ……」とオレはチカラなく笑った。前の人生では、オレも運び屋をバカにしてきたからなあ――ちょっと、気が引ける。
 しかし、せっかくのご厚意だ。ココは彼の気が変わらないうちに、お願いすることにした。
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