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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く
その十六
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今の揺れは――
オレは「はっ!」とする。ココは五層――ということは、前の人生でオレたち、勇者パーティが最強のアンデット、リッチと遭遇した場所だ。
「それじゃ――アレンたちが、リッチと戦っているのか?」
「――えっ?」
リッチという言葉を聞いて、他の四人が目を丸くする。
「リッチって、いにしえの魔女がアンデット化したという、伝説のモンスターのこと?」
サリアがそうたずねてきたので、オレは「そうだ」とだけ応える。
「う、うそ――だって、ココのダンジョンにリッチが現れたなんて話は聞かないわよ」
「いや、いるんだ。間違いなく――」
そう……オレはそのアンデットに遭遇し、ロゼルを失い、逃げ帰ったのだから――
「あっちの方向から聞こえたよな」
そう言って、オレは走り出す。
「グエル? 助けに行くの?」
マルタの声に、オレの足が止まった。そうだ、オレは何をしようとしている?
行ったって、どうにかなるわけでもない。相手は最強最悪のモンスター。死にに行くようなモノだ。
せっかく、勇者の責任から外れ、ここで起こる『身の破滅』から逃れることができたというのに、わざわざそこへ飛び込んで行くバカがどこにいる?
「そうだな、助けに行くなんて――」
「でも、わかっていたよ。仲間思いのグエルならみんなを見捨てないことくらい」
「――えっ?」
マルタ? 何を言っている?
「本当は勇者メンバーのことが気がかりだったのでしょ? だから、ココに来ようって言ったんだよね?」
いや、そうじゃなく、神書を横取りするために来たのだけど――
「わかりました。そうでしたら引き留めはしません。それでこそ、私の愛したグエル様です!」とフィル。
いや、引き留めてイイんだけどぉ?
「なんかわからないけど――グエルさん、漢(おとこ)です!」とサリアがサムズアップする。
「グエルさん、私たちもできることがあれば協力します」とミリアも、今までのオドオドした雰囲気がなくなり、キリっとした表情になっている。
あれ? なにこれ? 助けに行くことが確定?
その時、再び激しい地響きと揺れが襲う。さっきより大きい!
壁に手を当てなんとかこらえると、オレとマルタたちの間にある天井がグシャアァァァァッと、崩れてきた!
「うわあぁぁぁぁっ!」
揺れは数秒でおさまったが、通路が完全に塞がり、向こう側にいる仲間の様子がわからない。
「おい! 大丈夫かぁ!」そう、叫ぶと――
「こちらは大丈夫です! 全員無事です」とフィルの声が聞こえた。
ホッとして、「オレも無事だ」と声を返す。
「わかりました! 私たちは別の道を探しますので、グエル様は先に行ってください!」
――えっ?
「い、いや、ちょっと!」
オレは叫ぶのだが、向こうからの返事はない。どうやら、もう移動したようだ。と、いうことは――
「行くしかないよな――」
顔がヒクヒクと引きつる。最強クラスのモンスター、リッチ――勝てる見込みはない。すると、なにやら悲鳴が聞こえた。アレンの声だ。うわっ……やられちまったのか?
逃げたい気持ちをなんとか抑える。もし、ここでオレだけ逃げたらどんなことを言われるか――
『やはり、アナタはタダの俗物だったのですね。こちらに顔を向けないで!』
『グエル――信じていたのに、情けないよ。やはり、あのときボクが殺しておけば――』
そんなフィルとマルタの声が脳裏に聞こえた。
ああぁぁぁぁっ! もう、どうにでもなれ!
オレは、声の聞こえた方向へ向かう。激しく崩れた壁の奥に、暗い部屋があった。
オレは「はっ!」とする。ココは五層――ということは、前の人生でオレたち、勇者パーティが最強のアンデット、リッチと遭遇した場所だ。
「それじゃ――アレンたちが、リッチと戦っているのか?」
「――えっ?」
リッチという言葉を聞いて、他の四人が目を丸くする。
「リッチって、いにしえの魔女がアンデット化したという、伝説のモンスターのこと?」
サリアがそうたずねてきたので、オレは「そうだ」とだけ応える。
「う、うそ――だって、ココのダンジョンにリッチが現れたなんて話は聞かないわよ」
「いや、いるんだ。間違いなく――」
そう……オレはそのアンデットに遭遇し、ロゼルを失い、逃げ帰ったのだから――
「あっちの方向から聞こえたよな」
そう言って、オレは走り出す。
「グエル? 助けに行くの?」
マルタの声に、オレの足が止まった。そうだ、オレは何をしようとしている?
行ったって、どうにかなるわけでもない。相手は最強最悪のモンスター。死にに行くようなモノだ。
せっかく、勇者の責任から外れ、ここで起こる『身の破滅』から逃れることができたというのに、わざわざそこへ飛び込んで行くバカがどこにいる?
「そうだな、助けに行くなんて――」
「でも、わかっていたよ。仲間思いのグエルならみんなを見捨てないことくらい」
「――えっ?」
マルタ? 何を言っている?
「本当は勇者メンバーのことが気がかりだったのでしょ? だから、ココに来ようって言ったんだよね?」
いや、そうじゃなく、神書を横取りするために来たのだけど――
「わかりました。そうでしたら引き留めはしません。それでこそ、私の愛したグエル様です!」とフィル。
いや、引き留めてイイんだけどぉ?
「なんかわからないけど――グエルさん、漢(おとこ)です!」とサリアがサムズアップする。
「グエルさん、私たちもできることがあれば協力します」とミリアも、今までのオドオドした雰囲気がなくなり、キリっとした表情になっている。
あれ? なにこれ? 助けに行くことが確定?
その時、再び激しい地響きと揺れが襲う。さっきより大きい!
壁に手を当てなんとかこらえると、オレとマルタたちの間にある天井がグシャアァァァァッと、崩れてきた!
「うわあぁぁぁぁっ!」
揺れは数秒でおさまったが、通路が完全に塞がり、向こう側にいる仲間の様子がわからない。
「おい! 大丈夫かぁ!」そう、叫ぶと――
「こちらは大丈夫です! 全員無事です」とフィルの声が聞こえた。
ホッとして、「オレも無事だ」と声を返す。
「わかりました! 私たちは別の道を探しますので、グエル様は先に行ってください!」
――えっ?
「い、いや、ちょっと!」
オレは叫ぶのだが、向こうからの返事はない。どうやら、もう移動したようだ。と、いうことは――
「行くしかないよな――」
顔がヒクヒクと引きつる。最強クラスのモンスター、リッチ――勝てる見込みはない。すると、なにやら悲鳴が聞こえた。アレンの声だ。うわっ……やられちまったのか?
逃げたい気持ちをなんとか抑える。もし、ここでオレだけ逃げたらどんなことを言われるか――
『やはり、アナタはタダの俗物だったのですね。こちらに顔を向けないで!』
『グエル――信じていたのに、情けないよ。やはり、あのときボクが殺しておけば――』
そんなフィルとマルタの声が脳裏に聞こえた。
ああぁぁぁぁっ! もう、どうにでもなれ!
オレは、声の聞こえた方向へ向かう。激しく崩れた壁の奥に、暗い部屋があった。
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