追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く

その十七

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「おい! 誰かいるか?」
 そう声をかけたが中から返事はない。

 だが、この中で何かが起きたのは間違いないだろう。オレはがれきに気をつけながら中に入った。
 暗いな――オレは、初歩の火属性魔法で指先に火を灯す。なんとか足元が見える程度だ――

「ニグレアがいれば、もっと辺りを照らせるのだが――」

 奥へ進むと、なにかを蹴ってしまう。カランカランという金属特有の音が響いた。なんだろうと拾い上げる。

「えっ? これって、クサナギだよな?」

 両手剣――グリップとガードに見事な彫刻がある特徴的な剣を見間違えるわけはない。オレが数日前まで所持していた神剣だ。

「どうして、こんなところに転がっている?」

 そのそばに、なにかが横たわっているのに気づく。「なんだ?」、あきらかにがれきとは違う。白い服のようなモノも見えた。指先の火を近づける。人だとわかり、慌てた。しかも、この人物――

「おい! ロゼル! しっかりしろ!」

 勇者パーティのメンバーだった、ロゼルだ。そうだった。この部屋、なにか見覚えがあると思ったら――リッチと戦い、ロゼルが殺られた場所だ!
 間に合わなかったのか?

「グエル? そこにいるの?」

 マルタの声だ。思ったより早く、ココはわかったらしい。すると、部屋の中が明るくなる。フィルが光属性魔法の『ライト』で部屋を照らしたようだ。

「えっ? ロゼルさま?」フィルの声が聞こえる。
「グエル? これって、どういうこと?」
「――えっ?」

 オレは改めて、状況を確認する。足元には腹部を刺されたロゼルが倒れている。意識もない。そして、オレの手には鮮血を纏ったクサナギが握られていた。
 あれ? これじゃ、オレがロゼルを刺したように見えないか?

「なになに? うわっ!」
「うそ――グエルさんが?」

 サリアとミリアがこの状況を見て、顔が真っ青になっている。

「ま、待て! 誤解するなよ。オレじゃない!」

 慌ててそう主張するが、そんなふうに否定するほうが逆に怪しまれないか?

『まさか、自分を捨てた仲間を恨んで、殺すなんて――』
『もはや、弁解の余地はありません。極刑ですね。このクズ』
 そんな、マルタとフィルの汚物を見るような目が頭に浮かんだ――

 うわぁぁぁぁっ! やっぱり、オレは破滅しかないのかぁ!!

「とにかく、急ぎ治癒を!」

 フィルが駆け寄って、ロゼルの腹部に手を当てる。淡い光が見えると、キズ口が塞いでいくのが見えた。その手際の良さは、教会随一の治癒士と言われるロゼルと同等か、それ以上だ!

「助かるのか?」

「キズは塞ぎました。あとはロゼル様の体力しだいですが――えっ?」

 フィルの顔色が急に変わったので、「どうした?」とたずねる。

「塞いだキズ口から禍々しい魔力を感じます。これは――魔法毒です!」
「――!?」

 魔族が使う闇魔法の一種で、傷口や服用で体内に侵入し、魔力を毒に変えていく――それが、魔法毒である。

「ロゼルさまの魔力が回復すると、それが毒に変換されるため、しだいに衰弱してしまいます」

 治癒魔法でいったんは回復できるが、続けないとやがて死に至らしめてしまう。

「そ、そんな……」

 本人が回復すれば魔力が戻り、毒になって衰弱する。それでは助かる方法がない。

「いったい、どうすれば――」

 回復しても魔力が戻らなければ、毒は発生しないのだが、そんなこと――あれ?

「そうか! その手があった!」
 オレがそう叫ぶと、フィルとマルタがビックリする。

「な、何? その手って――」とマルタ。

「マルタだ! マルタならきっと、ロゼルを助けられる!」
「えっ? ボクが?」と目を丸くするのだが――

 前の人生で、オレは魔族にそそのかされ魔人化した。そのオレを倒したのがマルタだった。マルタは錬金術によりオレから魔力を奪い、魔人化したオレを無力な人間にしたのだ。
 その術をロゼルに与えれば――

 その時、ゾッとするような悪寒を感じた。
 な、何かがいる――
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