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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く
その十八
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この感じ――あきらかに常軌を逸する魔力量を持つ何かがココにいる。
オレだけじゃない。他の四人も顔から血の気が失せた。
「オマエたちも仲間か?」
そんな声が聞こえ、顔を上げる。すると、目の前にアンデットの姿があった。
「うわあぁぁぁぁっ!」
サリアは叫び、ミリアは尻もちをついた。
「リ、リッチ……」
忘れるわけがない。この姿、この威圧。前の人生で、オレがまったく歯が立たなかった最強最悪の怪物だ。
ど、どうする?
オレ一人なら、なんとか逃げきれるかもしれない。マルタもなんとか――いや、ダメだ。完全に足がすくんでいる。他の三人も同じようなモノだ。リッチが放つオーラを浴び、恐怖と絶望でもはや抵抗することも逃げることも放棄している。くそっ、こうなったら――
オレは手にした神剣クサナギを構えた。
「ほう、まだこの妾に歯向かう意志を示すか? その精神力だけはほめてやるのじゃ」
アンデットのクセによくしゃべりやがって――だが、相手の余裕は圧倒的なチカラの差を物語っている。
正直、まったく勝てる気がしない。だからと言って、ここで逃げ出したら前の人生の二の舞――オレは仲間を捨てたクズとして、世間から爪弾きにされる。
うわぁぁぁぁっ! どう転んでも破滅しかないじゃないかぁ!
何か――何か策はないか――
躊躇していると、最強のアンデットはオレを無視して、フィルの前に行く。
「美しい娘じゃ。オマエのような、若く美しい娘を見ると虚しさが込み上げてくる。妾は自分の美しさを永遠に残すための研究を続けたというのに、このような醜い姿に朽ち果ててしもうた。もはや、死にたくても死ねない。憎い――すべての美しいモノを妾は憎い」
コイツ、何を言っている?
つまり、本当は自分の美貌を残したく不死となったのに、大事なカラダは朽ち果て、魂だけが生き続けてしまった――ということか?
その腹いせに、生きるモノに八つ当たりしている?
おいおい、とんだお騒がせヤロウだ。それで、殺されるなんてたまったもんじゃない。だが、そんな悠長なことも言っていられない。このままでは真っ先にフィルが殺られる。
ん? 待てよ。この状況は利用できないか?
どうやら、リッチは他のアンデットと違いコミュニケーションが取れそうだ。そして、自分の容姿にコンプレックスを持っている。それなら――
「なあ、リッチよ。もし、美しかったころの自分を取り戻せるのなら、やってみたいと思わないか?」
オレはそう言ってみる。
「――なんだと? オマエ、その方法を知っているのか?」
「ああ、知っている」
もちろん、口から出まかせだ。だか、こうなったら言い切るしかない。ウソだとバレたら、その時点でジ、エンドになる。
「キサマ、ウソをついているな?」
うわっ! いきなりバレている!?
「ウ、ウソじゃない。オレはその方法を知っている」と、とにかく言い張った。
「いや、ウソだ。なぜなら、この妾が――マグスオブマギと呼ばれたこの妾でさえ千年かけてもその魔法を見つけられなかったのじゃ。キサマのような凡人が知るはずもない」
だよねぇ。いやいや、納得するな!
「神書アスタリアズノートを知っているか?」
オレがその言葉を出すと、リッチの表情が変わった。まあ、スケルトンであるリッチに表情があるわけはないので、そう感じただけだが――とにかく、相手に反応がある。ココはもう一押し!
「このダンジョンの最下層にその神書がある。それを手に入れれば、オマエを生前の姿に戻すことは可能だ」
これでどうだ! 信じるに事足りるだろう! なにせ、神書だ!
「そんな戯言を妾に信じれと?」
ダメでしたぁ――
「だが、神書であればあり得なくもないか?」
うお? なんか手ごたえあり。
「そうだ! オレたちはその神書をこれから取りに行く。そうすれば、オマエを生前の姿に戻してやろう。どうだ? 取引するに値するネタだろ?」
すると、リッチはアゴに手を当て考えている。
「うむ、わかった。信じよう」
よっしゃあ! オレは心の中でガッツポーズを繰り出す。
「それが口から出まかせだったならば、オマエにありとあらゆる苦痛を与えるぞ。決して死なせはせん。永遠の苦しみを味わうのじゃ。それでイイな?」
「あ、ああ、もちろん――」
永遠の苦しみって――それって、前の人生より悪化していないか?
やべえ。マジでなんとかしないと――
「本当に昔のカラダを取り戻せたら、オマエの妻になってもイイのじゃ」
――えっ?
オレだけじゃない。他の四人も顔から血の気が失せた。
「オマエたちも仲間か?」
そんな声が聞こえ、顔を上げる。すると、目の前にアンデットの姿があった。
「うわあぁぁぁぁっ!」
サリアは叫び、ミリアは尻もちをついた。
「リ、リッチ……」
忘れるわけがない。この姿、この威圧。前の人生で、オレがまったく歯が立たなかった最強最悪の怪物だ。
ど、どうする?
オレ一人なら、なんとか逃げきれるかもしれない。マルタもなんとか――いや、ダメだ。完全に足がすくんでいる。他の三人も同じようなモノだ。リッチが放つオーラを浴び、恐怖と絶望でもはや抵抗することも逃げることも放棄している。くそっ、こうなったら――
オレは手にした神剣クサナギを構えた。
「ほう、まだこの妾に歯向かう意志を示すか? その精神力だけはほめてやるのじゃ」
アンデットのクセによくしゃべりやがって――だが、相手の余裕は圧倒的なチカラの差を物語っている。
正直、まったく勝てる気がしない。だからと言って、ここで逃げ出したら前の人生の二の舞――オレは仲間を捨てたクズとして、世間から爪弾きにされる。
うわぁぁぁぁっ! どう転んでも破滅しかないじゃないかぁ!
何か――何か策はないか――
躊躇していると、最強のアンデットはオレを無視して、フィルの前に行く。
「美しい娘じゃ。オマエのような、若く美しい娘を見ると虚しさが込み上げてくる。妾は自分の美しさを永遠に残すための研究を続けたというのに、このような醜い姿に朽ち果ててしもうた。もはや、死にたくても死ねない。憎い――すべての美しいモノを妾は憎い」
コイツ、何を言っている?
つまり、本当は自分の美貌を残したく不死となったのに、大事なカラダは朽ち果て、魂だけが生き続けてしまった――ということか?
その腹いせに、生きるモノに八つ当たりしている?
おいおい、とんだお騒がせヤロウだ。それで、殺されるなんてたまったもんじゃない。だが、そんな悠長なことも言っていられない。このままでは真っ先にフィルが殺られる。
ん? 待てよ。この状況は利用できないか?
どうやら、リッチは他のアンデットと違いコミュニケーションが取れそうだ。そして、自分の容姿にコンプレックスを持っている。それなら――
「なあ、リッチよ。もし、美しかったころの自分を取り戻せるのなら、やってみたいと思わないか?」
オレはそう言ってみる。
「――なんだと? オマエ、その方法を知っているのか?」
「ああ、知っている」
もちろん、口から出まかせだ。だか、こうなったら言い切るしかない。ウソだとバレたら、その時点でジ、エンドになる。
「キサマ、ウソをついているな?」
うわっ! いきなりバレている!?
「ウ、ウソじゃない。オレはその方法を知っている」と、とにかく言い張った。
「いや、ウソだ。なぜなら、この妾が――マグスオブマギと呼ばれたこの妾でさえ千年かけてもその魔法を見つけられなかったのじゃ。キサマのような凡人が知るはずもない」
だよねぇ。いやいや、納得するな!
「神書アスタリアズノートを知っているか?」
オレがその言葉を出すと、リッチの表情が変わった。まあ、スケルトンであるリッチに表情があるわけはないので、そう感じただけだが――とにかく、相手に反応がある。ココはもう一押し!
「このダンジョンの最下層にその神書がある。それを手に入れれば、オマエを生前の姿に戻すことは可能だ」
これでどうだ! 信じるに事足りるだろう! なにせ、神書だ!
「そんな戯言を妾に信じれと?」
ダメでしたぁ――
「だが、神書であればあり得なくもないか?」
うお? なんか手ごたえあり。
「そうだ! オレたちはその神書をこれから取りに行く。そうすれば、オマエを生前の姿に戻してやろう。どうだ? 取引するに値するネタだろ?」
すると、リッチはアゴに手を当て考えている。
「うむ、わかった。信じよう」
よっしゃあ! オレは心の中でガッツポーズを繰り出す。
「それが口から出まかせだったならば、オマエにありとあらゆる苦痛を与えるぞ。決して死なせはせん。永遠の苦しみを味わうのじゃ。それでイイな?」
「あ、ああ、もちろん――」
永遠の苦しみって――それって、前の人生より悪化していないか?
やべえ。マジでなんとかしないと――
「本当に昔のカラダを取り戻せたら、オマエの妻になってもイイのじゃ」
――えっ?
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