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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く
その十九
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「「え、えぇぇぇっ!」」
オレだけでなく。フィルも声をあげる。
「な、何を言い出す!?」
「こうして見たら、なかなかイイ男じゃないか? 妾が成し得なかった術ができるというのじゃ。妾の夫として申し分ない」
いやいや、夫もなにも、アンタ、アンデットだよねえ?
「そうです。グエル様は私のような清楚でつつましい女性が好みなのです」
とフィル――えっ? 張り合うところはそこ?
――っていうか、男の前で平気でハダカになるのが清楚で、婚約するために策略するのがつつましい??
い、いや、フィルの言動にツッコミを入れている場合じゃない。
「よ、よし! とにかく、これで交渉成立だな」
『何が交渉成立ですが? リッチよ。何をしているのです? さっさとコイツらを片付けなさい』
そう言う男の声が聞こえたと思ったら、リッチのとなりに金糸の派手な刺繍が施された紺のジャケットを纏う男が現れた。コイツは――
「あの時の――魔族?」
大聖堂の前でオレに話しかけた。あの男だ。
「えっ? 魔族?」
フィルが目を見開き、相手を見る。
『ほ、ほう? 私が魔族だと気づいていましたか? では、なおさらです。ここから出すわけにはいきません。リッチ、命令です。ココにいる全員を殺しなさい』
く、くそ――せっかく、リッチをうまく丸め込んだというのに――コイツめ。
「やはり、グエル様のお考え通りでしたね?」
「――えっ?」
フィルに言われて、何のこと? と考える。
「あの魔族が、リッチを召喚し、勇者パーティを襲わせたのですね? 神書を手に入れさせないように――」
ん? あれ? そういえば、ナタリアやロゼルの前で、オレはそんなことを言った気がする。マジか? あれは、苦し紛れに言ったんだけどなあ――
『そうです。この私がリッチを召喚した、魔族最強のネクロマンサー、クリネロです。ああ、名前を言ってしまいましたね。でも、問題ないでしょう? もうすぐ、アナタたちは死ぬのですから』
クリネロと名乗った魔族の男は不気味な笑いをあげた。くやしいが、もはや策が尽きた。ヤツが言う通り、死を待つしかない――
「断る――」とリッチは返事をした。そう、断る……えっ?
『な、何を言っている? 私はお前の召喚主ですよ。召喚されたアンデットは主の命令に従うはずじゃ――』
「そんなの知らん。妾はこの男に昔のカラダを取り戻してもらう約束をした。だから、殺さない。それに、妾は命令されるのがキライじゃ。よって、オマエが一番キライじゃ!」
『な、何を言っている?』
あれ? なにか揉めていない?
『ならば、チカラずくで!』
紺のジャケットを纏った魔族が手を前に突き出すと、手のひらから黒い煙のようなモノが噴き出し、リッチを襲った。
「闇属性の従属魔法か? だが、そんなモノは妾に効かぬ」
リッチが杖を向けると、黒い煙はバンッ! と、音を立てて飛び散った!
「――!?」
間髪入れず、リッチの杖から電撃が飛び出すと魔族の男へ向かった。そして、その後方の壁に電撃が衝突し、壁が弾け飛ぶ!
ババァァァァン!
「「「きゃあ!」」」
壁の石材が粉々となり、白煙となって辺りを覆う。オレたちはせき込みながら、白煙がおさまるのを待つ。やっと、視界が戻ると、魔族の男はいなくなっていた。
「ちっ、取り逃がしたか――」
リッチがくやしそうに言う。
え、えーと――どうなっている?
「仕方ない――それはそれとして、名前はグエルと言ったか? さっそく、行こうぞ」
――へっ? 行く?
「行くって?」
「何を言っているのじゃ? 神書を手に入れるのだろ? さあ、行こうぞ」
「行こう……って、まさか、リッチも来るのか?」
「そのつもりだが――」
――えっ?
「い、いや、アンデットはその場所から離れることができないのでは?」
このファーナンド遺跡ではアンデットは決められた場所にしか現れない。つまり、一定の範囲内しか行動できないのだ。
「それは、このダンジョンに住み着いているアンデットの場合じゃろ? 妾はココに召喚されただけなので、そういった呪縛はない」
そ、それはマズい――リッチもココから動けないと思っていたのに――だから、神書を手に入れたとして、リッチを元の姿に戻す術が見つからなかった場合、黙って逃げ帰ってしまえと思っていたのにぃ!
「なんだ? 何か問題があるのか?」
「いや、ないない! ないぞ!」
こうなったら、口から出まかせが本当になることを祈るしかない!
「グエル様。ロゼル様は?」
そうフィルから言われ、「はっ!」とする。
そうだ、ロゼルは魔法毒に犯され、このままでは死んでしまう――
「おい、もしかして、ロゼルに魔法毒を盛ったのはリッチじゃないのか?」
「その聖職者のことか? いかにも。妾に光魔法を浴びせたので、その剣で刺してやった。その時に、妾の闇魔法が剣に乗り移って、魔法毒になったのじゃろう」
じゃろうって……
「それじゃ、オマエなら魔法毒を解毒できるんじゃないか?」
「それはムリじゃ。一度、魔法毒が体内に入れば助かる方法はない。その男はあきらめろ」
ダメか。やっぱり、神書を手に入れ、ロゼルの体内から魔力が発生しないようするしかない。
オレは、リッチにもその方法を説明した――
「なるほど。もし、そのような術があるのなら、その男も助かる可能性はある」
よし! こうなったら、なんとしても神書を手に入れるぞ!
オレだけでなく。フィルも声をあげる。
「な、何を言い出す!?」
「こうして見たら、なかなかイイ男じゃないか? 妾が成し得なかった術ができるというのじゃ。妾の夫として申し分ない」
いやいや、夫もなにも、アンタ、アンデットだよねえ?
「そうです。グエル様は私のような清楚でつつましい女性が好みなのです」
とフィル――えっ? 張り合うところはそこ?
――っていうか、男の前で平気でハダカになるのが清楚で、婚約するために策略するのがつつましい??
い、いや、フィルの言動にツッコミを入れている場合じゃない。
「よ、よし! とにかく、これで交渉成立だな」
『何が交渉成立ですが? リッチよ。何をしているのです? さっさとコイツらを片付けなさい』
そう言う男の声が聞こえたと思ったら、リッチのとなりに金糸の派手な刺繍が施された紺のジャケットを纏う男が現れた。コイツは――
「あの時の――魔族?」
大聖堂の前でオレに話しかけた。あの男だ。
「えっ? 魔族?」
フィルが目を見開き、相手を見る。
『ほ、ほう? 私が魔族だと気づいていましたか? では、なおさらです。ここから出すわけにはいきません。リッチ、命令です。ココにいる全員を殺しなさい』
く、くそ――せっかく、リッチをうまく丸め込んだというのに――コイツめ。
「やはり、グエル様のお考え通りでしたね?」
「――えっ?」
フィルに言われて、何のこと? と考える。
「あの魔族が、リッチを召喚し、勇者パーティを襲わせたのですね? 神書を手に入れさせないように――」
ん? あれ? そういえば、ナタリアやロゼルの前で、オレはそんなことを言った気がする。マジか? あれは、苦し紛れに言ったんだけどなあ――
『そうです。この私がリッチを召喚した、魔族最強のネクロマンサー、クリネロです。ああ、名前を言ってしまいましたね。でも、問題ないでしょう? もうすぐ、アナタたちは死ぬのですから』
クリネロと名乗った魔族の男は不気味な笑いをあげた。くやしいが、もはや策が尽きた。ヤツが言う通り、死を待つしかない――
「断る――」とリッチは返事をした。そう、断る……えっ?
『な、何を言っている? 私はお前の召喚主ですよ。召喚されたアンデットは主の命令に従うはずじゃ――』
「そんなの知らん。妾はこの男に昔のカラダを取り戻してもらう約束をした。だから、殺さない。それに、妾は命令されるのがキライじゃ。よって、オマエが一番キライじゃ!」
『な、何を言っている?』
あれ? なにか揉めていない?
『ならば、チカラずくで!』
紺のジャケットを纏った魔族が手を前に突き出すと、手のひらから黒い煙のようなモノが噴き出し、リッチを襲った。
「闇属性の従属魔法か? だが、そんなモノは妾に効かぬ」
リッチが杖を向けると、黒い煙はバンッ! と、音を立てて飛び散った!
「――!?」
間髪入れず、リッチの杖から電撃が飛び出すと魔族の男へ向かった。そして、その後方の壁に電撃が衝突し、壁が弾け飛ぶ!
ババァァァァン!
「「「きゃあ!」」」
壁の石材が粉々となり、白煙となって辺りを覆う。オレたちはせき込みながら、白煙がおさまるのを待つ。やっと、視界が戻ると、魔族の男はいなくなっていた。
「ちっ、取り逃がしたか――」
リッチがくやしそうに言う。
え、えーと――どうなっている?
「仕方ない――それはそれとして、名前はグエルと言ったか? さっそく、行こうぞ」
――へっ? 行く?
「行くって?」
「何を言っているのじゃ? 神書を手に入れるのだろ? さあ、行こうぞ」
「行こう……って、まさか、リッチも来るのか?」
「そのつもりだが――」
――えっ?
「い、いや、アンデットはその場所から離れることができないのでは?」
このファーナンド遺跡ではアンデットは決められた場所にしか現れない。つまり、一定の範囲内しか行動できないのだ。
「それは、このダンジョンに住み着いているアンデットの場合じゃろ? 妾はココに召喚されただけなので、そういった呪縛はない」
そ、それはマズい――リッチもココから動けないと思っていたのに――だから、神書を手に入れたとして、リッチを元の姿に戻す術が見つからなかった場合、黙って逃げ帰ってしまえと思っていたのにぃ!
「なんだ? 何か問題があるのか?」
「いや、ないない! ないぞ!」
こうなったら、口から出まかせが本当になることを祈るしかない!
「グエル様。ロゼル様は?」
そうフィルから言われ、「はっ!」とする。
そうだ、ロゼルは魔法毒に犯され、このままでは死んでしまう――
「おい、もしかして、ロゼルに魔法毒を盛ったのはリッチじゃないのか?」
「その聖職者のことか? いかにも。妾に光魔法を浴びせたので、その剣で刺してやった。その時に、妾の闇魔法が剣に乗り移って、魔法毒になったのじゃろう」
じゃろうって……
「それじゃ、オマエなら魔法毒を解毒できるんじゃないか?」
「それはムリじゃ。一度、魔法毒が体内に入れば助かる方法はない。その男はあきらめろ」
ダメか。やっぱり、神書を手に入れ、ロゼルの体内から魔力が発生しないようするしかない。
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