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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く
その二十三
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「グエル!」
「グエルさん!」
意識が戻ると、マルタ、サリア、ミリアの顔が見える。
「あれ? オレはどうしたんだ?」
「グエル! よかった!」
そう言って、マルタが抱きついてきた。えっ? どういうこと?
「もう、脅かさないでよ。いきなり、倒れたのでビックリしたんだから――」とサリアがなぜか怒っている。
どうして? まあ、それはどうでもイイが――
「オレは、どのくらい気を失っていたんだ?」
「ほんの数十秒だよ」
そうか、ずいぶんと時間が経った気がしたが、その程度か――
「そうだ! 本は? 神書アスタリアズノートは!?」
「それが、突然光ったあと、消えてしまったんだ」
「えっ?」
ウソだろ? せっかく、ここまで来て、消えてしまうなんて――いや、ちょっと待て――
「検索――」
オレは突然、そう声にする。なぜか、その言葉がキーワードになっていると感じていた。
『検索する内容をインプットしてください』
「うわっ!」と、叫んでしまう。
いきなり頭の中でそんな言葉が聞こえてきたからだ。
「ど、どうしたの?」とマルタは心配してたずねた。
「どうしたって、今、聞こえなかったのか? 検索とかインプットとか言っている声が――」
「えっ? なんのこと?」
どうやら、オレにしか聞こえないらしい。いや、まさか――
「検索――オマエはアスタリアズノートなのか?」
『解――アスタリアズノートはインストールが完了しています。いつでも、検索が可能です』
やはり、脳裏に声が聞こえる。信じられないが、神書が自分の頭の中に入ってしまったようだ――って、おい!
「ちょっと待て! 神書はマルタが手にするんじゃなかったのか? オレの頭の中に入ってどうするんだよ!」
「えっ? ボクがなに? 頭の中って?」
「いや、それが――神書アスタリアズノートがオレの頭の中に入ったらしいんだ」
「「「え、ええぇぇぇぇっ!」」」
三人が驚いている。まあ、そうだよなあ――
「それって、どうなっちゃうの?」と質問されるのだが、どうと言われてもなあ……
「いや、特になにも――」としか答えられない。
「特に――って、大丈夫なの? 本に食われたりしないの?」とサリア。
本に食われるってなんなんだよ。
「別に、悪質なモノではないようだけど――そういえば、何か質問すれば、答えてくれるらしい」
「えっ? なんでも教えてくれるの? 楽して痩せられるダイエット方法とか、美肌になる方法とかも教えてくれるの?」
「――この状況で、どうしてそんなくだらない質問が頭に浮かぶのか、オレは質問したいよ」
それはともかく――神書を元に戻す方法はないのか?
「それを質問してみれば?」とマルタ。
そうか! その手があったか!
『解――アンインストールと唱えれば、アンインストールします』
なんだ、そんなことでイイのか?
試しにそう唱えると、神書とカギが手元に現れた。「おおっ!」という声が全員から漏れる。
「それで、これはマルタに預けたいんだけど」
前の人生で、マルタは錬金術士となっていた。おそらく、この神書を手に入れたからだろう。だから、今回もマルタが持っておくべきだ。
「ううん。グエルが持っていて」とマルタが言う。
「ここまで来れたのも、グエルのおかげだし、勇者であるグエルこそ持っているべきだよ」
いや、もうオレは勇者ではないし――
「そんなことより、早く戻ろう。フィルさんが待っているよ」
たしかにそうだ。神書を誰が持つかは保留ということにして、ロゼルのこともある。まずはフィルたちと合流だ。
「ちょっと! その前にお宝を運び出す準備が先でしょ! 何しに来たのよ」とサリア。
いや、オレたちは神書以外、用事はないのだが――まあ、イイか――
「それじゃ、一分間だけな。それで持てるだけにしよう」
「ええっ! それじゃ、全部持ち出せないよ!」
全部持ち出すつもりだったのかよ。マルタが袋を取り出し、ひとり一つずつ渡す。それに入れられるだけ持ち出そうと決める。それに金貨を詰め込んだだけでも数年は遊んで暮らせるくらいの価値があるはずだ。一分が経過し、詰め込むだけ詰めた袋をマルタの無限収納のリュックに預る。相変わらず、サリアがブツブツ不満を言うのだが、ミリアがなんとか宥める。いったい、どっちが姉で妹なのだか――
「それじゃ、出るぞ」
「出たらまた戦闘になるのですか?」とミリアが言う。
まあ、そういうことになるな。
「ねえ、神書に『外のアンデットたちと戦わない方法』がないか、たずねてみない?」
そうマルタが言う。なるほど。そういう使い方があるか! オレはさっそく、神書を再インストールすると、そうたずねてみた。
『解――王家の紋章を身につけることで、アンデットは襲わなくなります』
王家の紋章? すると、頭の中に模様らしきモノが見えた。これが、紋章なのか? 辺りを見回すと、その紋章が刻まれた首飾りがいくつか見つかった。それを全員に配り、身につけてもらう。
「これで、アンデットが襲ってこないの?」
「ああ、そうらしい――」
ここは、神書が言っていることを信じるしかない。
「よし、開けるぞ!」
「ちょっと待って! もう少しだけ金貨を――」
サリアを無視して、オレは扉を開けた。すると、目の前にたくさんのアンデットが――しかし、見ているだけで襲ってこない。どうやら、この紋章は本当に効果があるようだ。
念のために、クサナギをいつでも抜けるように身構えていたのだが、必要なかった。なにごともなく王の間を通過したオレたちは、フィルたちと合流する。
「グエルさん!」
意識が戻ると、マルタ、サリア、ミリアの顔が見える。
「あれ? オレはどうしたんだ?」
「グエル! よかった!」
そう言って、マルタが抱きついてきた。えっ? どういうこと?
「もう、脅かさないでよ。いきなり、倒れたのでビックリしたんだから――」とサリアがなぜか怒っている。
どうして? まあ、それはどうでもイイが――
「オレは、どのくらい気を失っていたんだ?」
「ほんの数十秒だよ」
そうか、ずいぶんと時間が経った気がしたが、その程度か――
「そうだ! 本は? 神書アスタリアズノートは!?」
「それが、突然光ったあと、消えてしまったんだ」
「えっ?」
ウソだろ? せっかく、ここまで来て、消えてしまうなんて――いや、ちょっと待て――
「検索――」
オレは突然、そう声にする。なぜか、その言葉がキーワードになっていると感じていた。
『検索する内容をインプットしてください』
「うわっ!」と、叫んでしまう。
いきなり頭の中でそんな言葉が聞こえてきたからだ。
「ど、どうしたの?」とマルタは心配してたずねた。
「どうしたって、今、聞こえなかったのか? 検索とかインプットとか言っている声が――」
「えっ? なんのこと?」
どうやら、オレにしか聞こえないらしい。いや、まさか――
「検索――オマエはアスタリアズノートなのか?」
『解――アスタリアズノートはインストールが完了しています。いつでも、検索が可能です』
やはり、脳裏に声が聞こえる。信じられないが、神書が自分の頭の中に入ってしまったようだ――って、おい!
「ちょっと待て! 神書はマルタが手にするんじゃなかったのか? オレの頭の中に入ってどうするんだよ!」
「えっ? ボクがなに? 頭の中って?」
「いや、それが――神書アスタリアズノートがオレの頭の中に入ったらしいんだ」
「「「え、ええぇぇぇぇっ!」」」
三人が驚いている。まあ、そうだよなあ――
「それって、どうなっちゃうの?」と質問されるのだが、どうと言われてもなあ……
「いや、特になにも――」としか答えられない。
「特に――って、大丈夫なの? 本に食われたりしないの?」とサリア。
本に食われるってなんなんだよ。
「別に、悪質なモノではないようだけど――そういえば、何か質問すれば、答えてくれるらしい」
「えっ? なんでも教えてくれるの? 楽して痩せられるダイエット方法とか、美肌になる方法とかも教えてくれるの?」
「――この状況で、どうしてそんなくだらない質問が頭に浮かぶのか、オレは質問したいよ」
それはともかく――神書を元に戻す方法はないのか?
「それを質問してみれば?」とマルタ。
そうか! その手があったか!
『解――アンインストールと唱えれば、アンインストールします』
なんだ、そんなことでイイのか?
試しにそう唱えると、神書とカギが手元に現れた。「おおっ!」という声が全員から漏れる。
「それで、これはマルタに預けたいんだけど」
前の人生で、マルタは錬金術士となっていた。おそらく、この神書を手に入れたからだろう。だから、今回もマルタが持っておくべきだ。
「ううん。グエルが持っていて」とマルタが言う。
「ここまで来れたのも、グエルのおかげだし、勇者であるグエルこそ持っているべきだよ」
いや、もうオレは勇者ではないし――
「そんなことより、早く戻ろう。フィルさんが待っているよ」
たしかにそうだ。神書を誰が持つかは保留ということにして、ロゼルのこともある。まずはフィルたちと合流だ。
「ちょっと! その前にお宝を運び出す準備が先でしょ! 何しに来たのよ」とサリア。
いや、オレたちは神書以外、用事はないのだが――まあ、イイか――
「それじゃ、一分間だけな。それで持てるだけにしよう」
「ええっ! それじゃ、全部持ち出せないよ!」
全部持ち出すつもりだったのかよ。マルタが袋を取り出し、ひとり一つずつ渡す。それに入れられるだけ持ち出そうと決める。それに金貨を詰め込んだだけでも数年は遊んで暮らせるくらいの価値があるはずだ。一分が経過し、詰め込むだけ詰めた袋をマルタの無限収納のリュックに預る。相変わらず、サリアがブツブツ不満を言うのだが、ミリアがなんとか宥める。いったい、どっちが姉で妹なのだか――
「それじゃ、出るぞ」
「出たらまた戦闘になるのですか?」とミリアが言う。
まあ、そういうことになるな。
「ねえ、神書に『外のアンデットたちと戦わない方法』がないか、たずねてみない?」
そうマルタが言う。なるほど。そういう使い方があるか! オレはさっそく、神書を再インストールすると、そうたずねてみた。
『解――王家の紋章を身につけることで、アンデットは襲わなくなります』
王家の紋章? すると、頭の中に模様らしきモノが見えた。これが、紋章なのか? 辺りを見回すと、その紋章が刻まれた首飾りがいくつか見つかった。それを全員に配り、身につけてもらう。
「これで、アンデットが襲ってこないの?」
「ああ、そうらしい――」
ここは、神書が言っていることを信じるしかない。
「よし、開けるぞ!」
「ちょっと待って! もう少しだけ金貨を――」
サリアを無視して、オレは扉を開けた。すると、目の前にたくさんのアンデットが――しかし、見ているだけで襲ってこない。どうやら、この紋章は本当に効果があるようだ。
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