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第四話 クズ勇者、捕まる
その十六
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「またぁ? マルタって、ときどき、ヘンなウンチクを言うよね?」
そう言って近づいてきたのはニグレアだった。
「でも、今のだけはちょっとだけ納得したわ。そうね。たしかにグエルは勇者じゃなくて、自意識過剰の乱暴者だったモノね」
オレは苦笑いする。返す言葉もない。
「だけど、ココで戦っているグエルは違った。あの恐ろしい魔人や魔族を前にして立ち向かう姿は、私たちに戦う勇気を与えてくれたもの。ちょっと、カッコイイなあ――なんてね」
なんだ、ニグレアもイイこと言うじゃないか? なんか照れくさくなってしまう。
「まあ、強引でメチャクチャな戦い方は、ちっとも勇者らしくないけどね」
前言撤回。やっぱ、カワイクねえ!
「ロゼルを助けてくれて、ありがとう――」
そう彼女は言う。
そうか、ロゼルの話を聞いたのか。もちろん、ロゼルが魔力を失ったことも知っているのだろう。ま、まさかその文句を言いに来た?
『ロゼルから魔力を奪うなんて、アンタ、何様よ!』というニグレアの罵りが頭の中に聞こえてきた。
うわぁ! もう、カンベンしてくれ!
「ねえ、また一緒にパーティを組まない?」
ニグレアは目を合わせない。なのに、そんなことを言う――えっ?
「勇者パーティ――きっと、今のグエルならウマくやれるよ」
そんなことを言われるとは思わなかったので、ちょっとビックリする。
「いや、だけどオレはもう冒険者じゃない。勇者にはなれないんだ」
「ギルドへ戻れるように、私がマコーミックを説得するから!」
――えっ?
「マルタもさ。また、一緒にやろうよ!」
彼女は本気で、オレたちともう一度パーティを組みたい――そう思って言っているのか?
それならウレシイのだが――その時、オレは「はっ!」とする。勇者の立場を外れ、破滅を回避しようとしているのを知って、そうはさせまいとしている――それがニグレアの本音か?『アナタだけ破滅から逃げようなんて甘いわよ』と、高笑いするニグレアの顔が脳裏に浮かんだ。
なるほど。そういう魂胆か――だが、オレは前の人生で勉強した。そんな言葉に惑わされるものか。
「悪いが、オレはもうギルドに戻るつもりはない。もちろん、勇者にも」
「どうしてよ! 勇者になるために、あんなにガンバってきたんでしょ!? たった一度、マコーミックに言われたくらいであきらめるの!?」
「一度じゃないんだ――」
「――えっ?」
一度じゃない。前の人生で、たくさんの人から心無い言葉を浴びせられ、勇者失格のレッテルを貼られた。
オレは世の中を見くびっていたんだ。国の権力者もいざとなればオレなんか簡単に切り捨てる。市民だって、勝っている間はチヤホヤするくせに、たった一度の失敗で激しく非難する。
そして、直接の敵、魔族は強大だ。あの黒ローブの人物――前の人生で出会ったマルタとどういう関係かはわからないが、レベルが違い過ぎる。戦う気なんてもう失せた。
勇者? そんなの、誰からがやればイイ。
「もうイイだろ? オレは別の生き方で、自分の価値を見いだすよ」
「別の生き方って――」
ニグレアは言いかけたとき、「そうだな。どうやら、マコーミックを説得するのはムリそうだ」と割って入った男がいた。クローゼだ。へっ? どういうこと?
「ヤツが血相を変えてオマエを探し回っていたぞ。グエル、今度はいったい何をした?」
ヤツ? マコーミックか? 何をしたって――心当たりが多すぎで、見当もつかない。
「しばらくはヤツの前に顔を出さない方がイイだろう」
そんな時に、遠くの通りからマコーミックが出てくるのが見えた。
「すまん。オレのことは見なかったことにしてくれ!」
そう言って、反対方向へ駆け出す。
「グエル! ボクを置いていかないで!」とマルタも追ってきた。
「ちょっと、どこへ行く気!?」
ニグレアの声に、「知るか! 追って来なくなるまでだ!」と叫ぶ。
すると、今度は目の前に馬車が停止した。中からフィリシアが下りてくる。
「グエル様! 捜しましたよ。どうして、王宮を抜け出したのですか?」
「うわっ! 今、それどころじゃねえ!」
オレは方向転換して、フィリシアから離れる!
「こら、待つんだ! 話がある!」
女騎士団長、エオリアも馬車から下りると、こちらに向かってくるではないか!
話がある――?「はっ!」、それってまさか、壊した衛兵本部の弁償をしろとかぁ?
「あれはオレじゃねえ! アレンだぁ!」
「何を言っている? イイから、待て!」
「こ、断る!」
待てと言われて、待つヤツはいねえ!
「グエル! 見つけたぞ! 待てぇ!」と、マコーミックも顔を真っ赤にして追いかけてきた。その必死の形相に、オレは魔族以上の恐怖を覚える。
うわぁぁぁぁっ! カンベンしてくれぇ! もう、破滅は懲り懲りだぁ!
<おわり>
ここまで読んでいただいた読者のみなさま、本当にありがとうございました!
そう言って近づいてきたのはニグレアだった。
「でも、今のだけはちょっとだけ納得したわ。そうね。たしかにグエルは勇者じゃなくて、自意識過剰の乱暴者だったモノね」
オレは苦笑いする。返す言葉もない。
「だけど、ココで戦っているグエルは違った。あの恐ろしい魔人や魔族を前にして立ち向かう姿は、私たちに戦う勇気を与えてくれたもの。ちょっと、カッコイイなあ――なんてね」
なんだ、ニグレアもイイこと言うじゃないか? なんか照れくさくなってしまう。
「まあ、強引でメチャクチャな戦い方は、ちっとも勇者らしくないけどね」
前言撤回。やっぱ、カワイクねえ!
「ロゼルを助けてくれて、ありがとう――」
そう彼女は言う。
そうか、ロゼルの話を聞いたのか。もちろん、ロゼルが魔力を失ったことも知っているのだろう。ま、まさかその文句を言いに来た?
『ロゼルから魔力を奪うなんて、アンタ、何様よ!』というニグレアの罵りが頭の中に聞こえてきた。
うわぁ! もう、カンベンしてくれ!
「ねえ、また一緒にパーティを組まない?」
ニグレアは目を合わせない。なのに、そんなことを言う――えっ?
「勇者パーティ――きっと、今のグエルならウマくやれるよ」
そんなことを言われるとは思わなかったので、ちょっとビックリする。
「いや、だけどオレはもう冒険者じゃない。勇者にはなれないんだ」
「ギルドへ戻れるように、私がマコーミックを説得するから!」
――えっ?
「マルタもさ。また、一緒にやろうよ!」
彼女は本気で、オレたちともう一度パーティを組みたい――そう思って言っているのか?
それならウレシイのだが――その時、オレは「はっ!」とする。勇者の立場を外れ、破滅を回避しようとしているのを知って、そうはさせまいとしている――それがニグレアの本音か?『アナタだけ破滅から逃げようなんて甘いわよ』と、高笑いするニグレアの顔が脳裏に浮かんだ。
なるほど。そういう魂胆か――だが、オレは前の人生で勉強した。そんな言葉に惑わされるものか。
「悪いが、オレはもうギルドに戻るつもりはない。もちろん、勇者にも」
「どうしてよ! 勇者になるために、あんなにガンバってきたんでしょ!? たった一度、マコーミックに言われたくらいであきらめるの!?」
「一度じゃないんだ――」
「――えっ?」
一度じゃない。前の人生で、たくさんの人から心無い言葉を浴びせられ、勇者失格のレッテルを貼られた。
オレは世の中を見くびっていたんだ。国の権力者もいざとなればオレなんか簡単に切り捨てる。市民だって、勝っている間はチヤホヤするくせに、たった一度の失敗で激しく非難する。
そして、直接の敵、魔族は強大だ。あの黒ローブの人物――前の人生で出会ったマルタとどういう関係かはわからないが、レベルが違い過ぎる。戦う気なんてもう失せた。
勇者? そんなの、誰からがやればイイ。
「もうイイだろ? オレは別の生き方で、自分の価値を見いだすよ」
「別の生き方って――」
ニグレアは言いかけたとき、「そうだな。どうやら、マコーミックを説得するのはムリそうだ」と割って入った男がいた。クローゼだ。へっ? どういうこと?
「ヤツが血相を変えてオマエを探し回っていたぞ。グエル、今度はいったい何をした?」
ヤツ? マコーミックか? 何をしたって――心当たりが多すぎで、見当もつかない。
「しばらくはヤツの前に顔を出さない方がイイだろう」
そんな時に、遠くの通りからマコーミックが出てくるのが見えた。
「すまん。オレのことは見なかったことにしてくれ!」
そう言って、反対方向へ駆け出す。
「グエル! ボクを置いていかないで!」とマルタも追ってきた。
「ちょっと、どこへ行く気!?」
ニグレアの声に、「知るか! 追って来なくなるまでだ!」と叫ぶ。
すると、今度は目の前に馬車が停止した。中からフィリシアが下りてくる。
「グエル様! 捜しましたよ。どうして、王宮を抜け出したのですか?」
「うわっ! 今、それどころじゃねえ!」
オレは方向転換して、フィリシアから離れる!
「こら、待つんだ! 話がある!」
女騎士団長、エオリアも馬車から下りると、こちらに向かってくるではないか!
話がある――?「はっ!」、それってまさか、壊した衛兵本部の弁償をしろとかぁ?
「あれはオレじゃねえ! アレンだぁ!」
「何を言っている? イイから、待て!」
「こ、断る!」
待てと言われて、待つヤツはいねえ!
「グエル! 見つけたぞ! 待てぇ!」と、マコーミックも顔を真っ赤にして追いかけてきた。その必死の形相に、オレは魔族以上の恐怖を覚える。
うわぁぁぁぁっ! カンベンしてくれぇ! もう、破滅は懲り懲りだぁ!
<おわり>
ここまで読んでいただいた読者のみなさま、本当にありがとうございました!
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